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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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716、天道宮の宝物庫

天道宮は静かなものだった。赤兜の姿がちっとも見えない。全滅したか、それとも生き残ってはいるが逃亡したってとこか。ここまでやられたんじゃあどんな責任とらされるか分かったもんじゃないからな。それよりドロガーはどこにいるんだろ。


「ガウガウ」


まだ奥の方? あっちかな。ここも広いもんなぁ。




おっ、いたいた。えらい奥まで来てしまったな。うはぁ、えらく物々しい扉じゃん。もしかしてここって宝物庫的な? 冒険者らしい狙いをするじゃん。


「おーいドロガー。赤兜はもういないのか?」


「おう魔王来たんかよ! そっちぁどうよ? こっちはウハウハだぜぇ!」


「いや、だから赤兜はもういないのか? お前らが全滅させたのか?」


もう金目のものなんか残ってないじゃん。どんだけ略奪に精を出してたんだよ。


「あ? 知らねー。全然見てねーからおめぇが全滅させたんじゃねぇ? それよりすげぇーぜここはよぉ! 魔王の分はもうねぇけどなぁ!」


ここを制圧しに来たんじゃないのかよ……


「なら丞相の居場所って知ってるか?」


「はぁ? 知らねーよ。とっくに逃げてんじゃねぇんか? つーか赤兜どころか女中も全然いねーんだよなぁ。どうなってんだかよー?」


「ドロガーさーん! あとはこの中だけっすよー!」


「おー今行く! そんじゃ魔王、ちぃーと待ってな。あん中のモンいただいたら終わりだからよぉー。」


「おう。」


ほほう。奥の方に飾り気のない扉があるじゃん。あの中こそが本当のお宝って感じ? 開けられるのか?


冒険者達は扉の前に殺到している。開けられるか?




「うぉーい魔王! 全然だめだぁ! 開けてくれよぉー!」


「あんま魔力が残ってないから無茶はできんぞ。」


よく見りゃ扉っぽいのは分かるが取手がないじゃん。めっちゃフラットで凹凸もない。どうやって開けるんだこれ? 金庫なら金操で結構開けられるんだけどな。これって鍵穴すらないじゃん。よほどのお宝が入ってるんだろうか。つーか私からすれば無理に今手に入れる必要ないんだけどな。

どう見てもムラサキメタリック製だし、ぶっ壊したらどんだけ魔力を食うか分かったもんじゃない。


うん。やっぱ無理。この扉は開かない。だから……


『徹甲弾』


扉の両サイド、壁を壊そうとしてみたが……だめか。ムラサキメタリックではないようだがやけに分厚い。


「こりゃだめだな。ジュダか王妃でもとっ捕まえて開けさせた方が早いんじゃないか?」


「魔王でも無理かよ。んじゃしゃーねーな。おうお前ら! さっさと帰るぜぇ! 帰って戦利品眺めながら飲むとするぜぇ!」


「ひゃっほーーお! 酒だ酒だぁ!」

「ドロガーさんの奢りっすか! あざぁーす!」

「まさか俺らが天道宮を荒らす日が来るなんてさぁー! ドロガーさんのおかげっすよぉ!」


マジでこいつら何しに来たんだよ……今のうちにここを制圧しておけば今後の迷宮利権も思いのままだろうに。


「カース、私達は私達で行動した方が良さそうね?」


「そうだね。予定通りジュダの自室とかを狙おうね。」


「なんだよ魔王ぉ! 飲みに行かねぇんかよぉ!」


ドロガーはいい気なもんだなぁ……


「それどころじゃないからな。まあ帰るんなら仕方ないな。ああそうだ。飲むんならキサダーニも誘ってやれよ。」


あいつらはずっと警備しっぱなしだろうからな。クロミはもう寝てるだろうけど。それにしてもやっぱジュダの野郎は違う所に行ってしまったんだろうなぁ。くそぉ……どこに逃げやがった?


「おう。それもいいなぁ、そんじゃ先に帰るぜぇ? 魔王も早く来いよなぁ?」


「ああ。後でな。」


まったく。いい気なもんだな。


「ギャワワッギャワワッ!」


コーちゃん!?


「アレク! 来て! お前ら伏せろ!」


『水壁』


冒険者がこの部屋から出た瞬間、入り口で爆発が起こった……

いや、それどころか天井まで崩落し……『鉄壁』




ふぅ。危なかったなぁ……

私とアレク、そしてコーちゃんとカムイはもちろん無事だが。他の奴らはどうなったんだ?


『鉄壁解除』

『浮身』


瓦礫をどかして……と。


「おーいドロガー。大丈夫かー?」


「おう……どうにかよぉ……つーか俺ん上のやつをどうにかしてくれよ……」


姿は見えないが、ドロガーはあの辺かな?


『浮身』


「ふぅぅ……助かったぜ……悪ぃな魔王……」


「お前ら冒険者は罠には慣れてるんだろ? こりゃどうなってんだ?」


「おお……俺らの大半は迷宮童貞じゃねぇしよぉ。慣れてんつもりだったけどなぁ。ついお宝をどっさり手に入れて油断しちまったぜ。ここに罠がねぇわけねぇってのによぉ……」


つーかヒイズルの奴らって帰ろうとした時に罠をかけるのが好きなのか? エチゴヤとかハンダビラの詰所でも似たような罠があったような。ワンパターンな奴らだぜ。


『浮身』


とりあえず全ての瓦礫を浮かせる。うわぁ……結構ボロボロじゃん。お前らそれでも冒険者かよ。


『かかれぇ!』


むっ!? 今の号令は!

赤兜か! しかも全員ムラサキメタリック装備かよ!


「ドロガー! あいつらを逃せ! 後は俺がやる!」


「ちっ、こいつら魔王が来るのを待ってやがったかぁ! おうてめぇら起きやがれ! このまま死にてぇんかよ!」


私が来るのを待ち構えてたって可能性もあるが、実際は態勢を整えるのに時間がかかったんだろうな。ドロガー以外は知らんがドロガーだけでも厄介な凄腕冒険者だからさ。そこを罠と人数で一気に潰す気だったんだろうな。なかなかやるじゃん。宝物庫を犠牲にしてまでさ。その決断ってかなり難しいんだよな。

おっと『徹甲弾』


倒れてる冒険者にトドメを刺そうとしやがったから、とりあえずぶっ飛ばしておいた。たいしたダメージはなくとも時間と距離は稼げる。


さぁて……今度こそ最後だろ。こいつらを全滅させれば、天道宮の兵力はゼロになるはずだ。ジュダめ……見てやがれよ?

お前がさっさと現れないから下っ端が命を散らすんだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが最後の赤兜かな。それにしても開かない扉は気になりますね。
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