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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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679、嵐の後の静けさ

ふう……

やっとおさまったか……クロミの奴……無茶しやがって……


鉄壁解除……


うわっ、部屋の隅っこまで流されてる。しかも壁に扉に階段まで、めちゃくちゃに壊れてるし。だから水が引いたのか? これもうホール以外もめちゃくちゃになってるんだろうな。無茶しやがって。


「おーいクロミ、大丈夫か?」


「あ、ニンちゃんごめーん。ちょーっとイラっとしてさー。やっちゃったー。えへっ。」


片目を瞑って首をこてんと傾けてる。そこらの男なら骨抜きになりそうな可愛らしい仕草だが、私には効果ないぞ。


「何かやるならやるって言ってくれよな。びっくりするじゃん。」


「ごめーん。だって痛かったしー。ほら見てここぉー!」


「どこだよ……」


靴を脱いで足の甲を見せてくるが、もう治ってんじゃん。


「ここっ! 下からズボッて来たんだから! めっちゃ痛かったし! ほらこれも見てよー!」


あー、靴には穴が空いてるね。下から足の甲を貫通したのね。そりゃあ相当痛かっただろうな。

アレクも下手すれば同じ目に遭うところだったが、アレクのブーツも私と同じ靴底だからな。いくらムラサキメタリックでもそう簡単には突き通らないよな。


「大変だったな。それで抜いた矢はどうした?」


「えー? そこら辺に捨てたしー。」


「ガウガウ」


おっ、カムイ偉い。拾ってきてくれたのね。さっき素晴らしいアイデアを思いついたからね。


「カース、それどうするの?」


「ふふふ、まあ見ててよ。」


『風操』


よし、成功だ。

真ん中から折れた矢だけど問題なく真っ直ぐ飛ばせた。私の『狙撃』と比べるとかなり遅くはあるが、対親衛騎士団用に有効ではないかな。


「なるほどね。矢尻そのものはムラサキメタリックだから魔法が効かないけど、シャフト部分は木だからどうにでもなるってわけね。さすがカースだわ。」


矢の棒の部分ってシャフトって言うんだ……初めて知った。


「いやーそれほどでも。それよりこれって危険だよね。今回は大勢が一斉に攻撃してきたから気付けたけど。もし凄腕の弓使いが物陰からこっそり狙ってきたらさ。」


「ガウガウ」


おっ、マジかよカムイ。


「はは、カムイが全部見つけてやるって。頼りにしとこうね。」


「それがいいわね。魔法も使えず剣も使えない。でも弓の腕は一流ってことは普通にあるものね。」


そういえば弓と言えば……


「クロミさぁ。エルフって弓使わないの?」


「使わないよー? 魔法の方が強いしー。たまーに物好きなエルフが使うって話は聞いたことあるけどー。ウチらダークエルフ族では誰も使ってなかったしー。」


ふーん。そんなもんか。


「じゃあ魔力が切れた時ってどうしてんだ?」


「そんなの逃げるに決まってるしー。てか魔力が切れる前に逃げるのが普通だしー。命懸けで戦うのって村の存亡がかかった時ぐらいじゃーん?」


「なるほど……」


だからマウントイーターにいいようにやられたんじゃないか……?

ムラサキメタリックを纏った赤兜ならマウントイーターって敵じゃないよな。相性って大事だよなぁ……


「ニンちゃんが言いたいこと分かるしー。マウントイーターっしょ? 実際ウチらは村を失ったわけだし。負けたも同然だし。あーあ……」


「悪いな。嫌なことを思い出させちまったか。」


「別にいいしー。次にあいつに遭った時に勝てるようにしとけばいいんだしー。」


「おっ、やるじゃん。で、どうやって?」


「それは……今から考えるの!」


だめだこりゃ。


「よし。上に行ってみようか。」


ぶっ壊れた階段があることだし。貴人ってのは高いところに住むもんだしな。

貴人? ジュダが? 自分で言ってて違和感ありありだな。あんなのちょっと顔と声がいいだけの名ばかり天王だろ。


「ウチ疲れたしー。ちょっと休もうよー。」


「魔力使い過ぎだろ。ポーションないのか?」


「あー、もうないしー。ニンちゃんもないんだったよねー。金ちゃんはー?」


「残り数本ってとこね。だからあげないわよ。これはカース用、もしくはクロミが怪我を治す時用なんだから。」


「金ちゃんのケチー……」


それをケチとは言わない。アレクは私と違ってちゃんと先を考えてるんだよ。


「じゃ少し休もうか。アーニャだってずっと同じ姿勢じゃキツいよな。兜ぐらい外してもいいよな。」


本当はこんな場所で呑気に休憩なんぞしたくないんだけどな。迷宮の安全地帯とは大違いだし。


「助かるよ……この鎧着て座ってるだけなんだけど……息は苦しいし体は痛いし……あの人達ってよくこんなの来て動けるよね……」


「この鎧って持ち主に限り魔法効果が有効らしくてね。軽量とか温度調節とかがあるっぽい。それ以外の者にとっては頑丈なだけの棺桶だな。」


よし、外れた。結構汗かいてんだな。アーニャの匂いが充満してるし。意外と悪い匂いじゃないな。結構好きだわ。


『浄化』


「はぁーすっきりした。カースありがとね。ついでに何か飲ませてくれると嬉しいかな……」


「今お茶の用意をするわ。少し待ってなさい。でもアーニャは一口だけにしておいた方がいいわね。例の魔法が効いてるから今はいくら飲んでも関係ないけど、問題は効き目が切れた後だから。」


おっ? どういうことだ? そう言えばアレクは後が大変だって言ってたような……


「うっ、そうなんだね……じゃ、じゃあ一口だけ……」


「ええ、待ってなさい。」


ではお茶の用意ができるまで、私は見張りだな。つーかここって敵陣ど真ん中だしな。いつどこから攻められてもおかしくない。またまだ騎士はいるんだろうなぁ……まとめて始末できないのは厄介だよなぁ。さっきの奴らだって流されこそしたものの多分死んでないだろうし。


あ、ドロガー達は大丈夫だろうな?

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[一言] 一息入れたところですが、先は長そう。
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