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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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675、天道宮総取締ツボネ・カスガ

「失礼いたします。マツ・ロカタでございます。陛下がお招きされたお客様をお連れいたしました」


「入りなさい」


そこそこ上等な扉越しに、室内から聴こえたのはおばさんの声だが……


「失礼いたします」


中にいたのは、やはりおばさん。ジュダのところじゃないのかよ……

さては天王の所に案内するにはまずこのおばさんにお伺いを立てるのが普通なのか?


「陛下へのお客様とはどういうことだい? 私は聞いてないよ?」


「は、え? い、いやでもこの方々は……」


ちっ、さすがにこれ以上は無理か。部屋の周囲にちょいと『消音』をかけてと。


「いきなり悪いな。二十五日に呼ばれてたんだけどな。ちょいと都合が悪くて今になった。ローランドの魔王ことカース・マーティンだ。」


「ほぉん? いきのいい若者だねぇ。迷宮を踏破するだけあるのかねぇ。私は天道宮総取締のツボネ・カスガ。陛下はもう本日の公務を終えてお休みになられてる。出直してもらおうかい」


なかなか迫力のあるおばさんだな。天道宮全体の家宰みたいなポジションか?


「一応忠告しておくが、天王を呼ばないとどうなっても知らんぞ? こっちは約束を守って一週間待ったのに、宿を襲われたりしてるんだからな?」


あの赤兜は偽物だったが、そんなことは全く関係ない。それに天道魔道士だって洞窟を襲ってきたんだからな。


「何のことやら分からないね。分かっているのは二十五日に迎えを寄越したのに宿には誰もいなかったってことさね。ずいぶんとうちの陛下を舐めてくれるじゃないか。待つこともできないってのかい?」


ほおぅ……そう来るかよ。


『風斬』


最近この魔法だけは母上レベルに近づいたんだよな。あまり魔力を込めなくてもスパスパ切れるぜ?


「ひっ! ひいいいぃっ!」


女中ちゃんしかビビってないな……

高そうな机を細切れにしてやったんだけどな。


「へーニンちゃんすっごーい。まるでウチの葉斬みたいだしー。」


クロミは感心するし……


「何の真似だい? まさかそんなことでこの私が退くとでも思ってんのかい? 天道宮に奉公して四十年! 総取締になって早十年! 他国の若造に道ぃ譲るほど耄碌しちゃいないってんだよ!」


元気なおばさんだなぁ。


「これは外交問題になるってことを分かってるのか? 俺はローランド王国国王陛下直属の身分だし、この子は四大貴族アレクサンドル家だぞ? 国家間の力関係を考えた方がいいな。」


「はんっ! そんなら証明してみなぃ! ローランドの国王陛下直属だぁ? あんたみたいな礼儀知らずがそんな身分たぁとても信じられないねっ!」


「これでいいわね?」


おっ、アレクが取り出したのはアレクサンドル家の紋章入り懐剣だ。上級貴族ならみんな持ってる身分証代わりにも使えるやつだ。


「これは失礼いたしました。確かに確認いたしました。間違いなくアレクサンドル家の紋章のようですね。ですがそれとこれとは別の話です。陛下から改めてお召しがあるまでは宿にてお待ちくださいませ」


このおばさん……態度をコロッと変えたように見せて何も変えてやがらねぇ……


しかも……


『風斬』


「手は見えるところに出しておけ。次はその腕を斬り落とすからな。」


右手をズボンのポケットに入れようとしやがったからブレスレットだけを切ってやった。怪しいな。何か魔道具でも使おうとでもしたんだろ。このおばさんはそこまで魔力が高くないからな。それなのに総取締とやらにまで上り詰めたってことは、何かある。一筋縄ではいかない何かが。

まあ、殺せばそれまでなんだけどさ。


「レディに対していきなり魔法かい。ローランドの男はろくでもないねぇ。ちょっと一服しようと思っただけさね。余裕がない男はつまんないねぇ」


「カースを目の前にして一服? 島国の女はとんだ無礼者ね。格上の前で何を考えているのかしら? その程度の者が宮廷を取り仕切っているなんてお笑いね。あなたに用はないんだからさっさと天王を呼びなさい。」


おおー、さすがアレク。ズバッと言い返してくれるね。惚れ直しちゃうね。


「他国で身分の高さをひけらかすもんじゃないよお嬢様? 世の中ってもんはねぇ、上には上がいるもんだからねぇ? それから……天王じゃねぇだろがぁ! 天王陛下とお呼びしないかい! 無礼者はあんただよこのクソメスガキがぁ!」


『狙撃』


いきなり殺しはしなかったが、両肩を撃ち抜いた。大声に紛れて何か魔法まで使おうとしてたし。


「おばさんよぉ……俺のかわいいアレクに向かって舐めた口きいてくれたなぁ? 助けてやるからさっさと天王を呼べ。別にこっちの女に案内させてもいいんだけどな。」


「ふん……正体を表しやがったねぇ……何が魔王だい……ヒイズルを舐めんじゃないよ!?」


話が通じないな。舐めてんのはどっちだって話だよ。


「か、カスガ様! わ、私人を呼んできます!」


『麻痺』


ビビってから黙ってた女中さんだけど、やっと勇気を振り絞ったと思ったら無駄だったね。アレクに麻痺させられちゃったよ。


「他国の者が……この天道宮での狼藉三昧……生きて帰れると思うなよ! 者ども! 出合え出合え!」


「無駄だ。消音を使ってるからな。だが、お前さっき何か魔法を使ったな? どうやら天王か誰かに何やら伝達でもしたってところか。それならここで待ってれば来るんだな?」


「ガウガウ」


ん、カムイどうし……ほぉう?


「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。呼べって言うから来たよ。はるばるローランドから天道宮へようこそ。僕が天王ジュダ・フルカワさ」


こいつか。

やっと会えたな……

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― 新着の感想 ―
[一言] ようやく登場かと思ったら軽いw じゃじゃじゃじゃーんじゃないのはわざとです?
[一言] 天王、ノリ軽。
[良い点] やっと来た! ツボネ・カスガは大笑いですね。いつも絶妙なネーミング、大奥の取締役でもやってるんでしょうか。 そして天王はフルカワさん。親しみがわく……w
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