671、正門破壊! 正面突破!
天都イカルガ上空。街にはぽつぽつと明かりが見える。あれは松明か、それとも魔法の光だろうか。色街は特に明るいな。結構潰したと思ったけど、まだまだ開いてる店なんていくらでもあるようだ。
それに引き換え、天道宮はそこまで明るくない。省エネか? 昼間に見ると古き威厳と確かな伝統を感じるが薄明かりの中で見ると、どこか怪しげだな。気のせいか……
さて、どうしようかな。いきなりメテオいってしまうか……
「ドロガー、赤兜騎士団の詰所とか本部とかって分かるか?」
「あー、だいたいあの辺だったか。でも連行された奴らがどこにいるかは知らねーぞ?」
そりゃあそうだろうけどさ……
それなら……よし、決めた。
『氷塊弾』
天道宮の正門をぶっ潰してやる。遥か天空から直径十メイルほどの氷塊を落とす。跡形も残るまい。
ん? 今、少しばかり威力が削がれた……
だが、さしたる影響はない。正門は木っ端微塵だ。昔、フランティア領都の正門をぶち壊したことを思い出すな。あの時は水球を使ったんだったか。
「しょぼい邪魔が入ったねー。魔法防御的な? 意味なーいけど。それよりニンちゃんさー。あそこからじっくり攻める気ぃー?」
「その通り。真正面から行く。そこでドロガー。コーちゃんと一緒に連行された人間を探してくれ。解放まではしなくていい。見つけるだけでいいから。」
「いいぜ。どうせキサダーニの野郎も同じことするんだろうしよぉ。蛇ちゃんと一緒なら百人力だぜ。」
「ピュイピュイ」
頼むねコーちゃん。頼りにしてるよ。カムイにも頼みたいところだが調子が悪いからね。アーニャの隣で休んでおくのがベストだろうな。
「見つけたら適当に合図をくれ。合流するかどうかはその時次第だけどな。あぁ、それから『避雷』を使っとけよ。」
「避雷? おうよ。そんじゃ行くぜぇ。せいぜい死ぬんじゃねぇぞ? それからクロミ……後でな。」
「ニンちゃんの役に立ったらご褒美あげてもいいしー。あんま怪我すんなしー。」
おっ、クロミにしてはデレてる方じゃない? ドロガーの苦労が実ってきたね。それともクロミがチョロいだけ?
さて、壊れた正門の内側に着陸しコーちゃんとドロガーを降ろした。ここから別行動だ。
おっ、赤兜がわらわら集まってきやがったな。
『轟く雷鳴』
まずはド派手に。見える範囲全てに雷を落とした。建物内にいる人間は運が良ければ無事だろうが外にいる人間、ざっと四十人は……黒焦げだ。
もちろん赤兜だって例外ではない。それなりに高性能な鎧のようだがムラサキメタリックと比べると紙も同然。直撃した者は即死だな。
「ひゅー、さっすがニンちゃん。ウチでもくらったらヤバいレベルだしー!」
「カースなら当然よ。」
「かず、カース、すごい……」
なんせ今は魔力が満タンだからね。それにいくら上級魔法でも今の程度なら少ししか減らない。ムラサキメタリックをいじくるような無茶さえしなければ私の魔力は無尽蔵なぐらいあるんだからさ。
だが、あいつらも次からはムラサキメタリックを纏ってくるだろう。どうも前々から気になってたのは、どの赤兜も普段からムラサキメタリックを装備してないってことだ。普段から装備してりゃあ無敵なのにさ。換装を使えばいつでもムラサキメタリックを装備できるという油断があるのか。または圧迫感を嫌っているとか? 赤い鎧はフルプレートじゃないし解放感が違うんだろうな、
さて、ガンガン行こうか。
おっ、きたきた。やはり今度はどいつもこいつも全身にムラサキメタリックを装備してやがる。
それならば……
「アレク、どうする?」
「任せて。あいつらの突撃に合わせて下がってくれる?」
「分かった。」
突撃してくる赤兜どもはおよそ百。揃いも揃ってムラサキメタリックだ。だが、普段から街の中で戦ってたら気付かないだろ? ムラサキメタリックの弱点にさ?
『落穴』
アレクの得意な魔法だ。ここのように地面が土なら特に威力を発揮する。今の一発で三割は落ちた。
『高波』
そこに私が水の魔法で畳みかける。見事なコンビネーション。さすがアレクと私だね。落とし穴に落ちた奴らは浮かんでこれない。ムラサキメタリックはクソ重いもんな。可哀想にね。しかも水中って魔法が使いにくいんだよ。知らなかったか? 換装が使えないと鎧は脱げない。鎧が脱げないと浮上できない。よって溺死するしかないわけだ。
『降り注ぐ氷塊』
正門から天道宮へ向かう間にある中庭。難を逃れた七割の赤兜を狙って氷のメテオだ。普段なら人間にはそうそう当たらない魔法だが、高波で足をとられた今なら当たるだろ。ムラサキメタリックを装備してたら飛んで逃げることもできないからな。
全員とはいかなくても大多数の赤兜を押し潰すことができた。正確には土中にめり込ませた形だが。あれだけものメテオをくらっても奴らの鎧はへこまない。ただ鎧ごと生き埋めになっただけだ。さあ、自力で脱出できるかな?
しかし、そんなの待ってやらん。
『高波』
さほど高くなくとも、中庭が濡れる程度の水でも奴らは溺れる。土の中にいるんだからな。
ほう、難を逃れた赤兜は一割ってとこか。
『氷塊弾』
だが、そんな鈍った動きではただの的でしかない。足場の悪い場所でムラサキメタリックなど纏っていても何の役にも立たないんだよ。やはり魔法が使えない状態ってのはかなり不利だよな。氷塊に押し潰されて地面に埋もれる。すると、二度と這い上がれず溺死するってわけだ。下が土ってのはこっちに有利だな。
さあ、ざっと百四十人ほど仕留めだぞ。いくらでもかかってこいや!
本日で異世界金融の投稿を始めて丸4年になりました。
始めての作品にもかかわらず、ここまで書き続けてこれたのはお読みくださる皆様のおかげです。
ありがとうございます。
この先どのような展開になるか全く分かりませんが、今後ともご愛読いただけると幸いです。
2022/4/28 暮伊豆




