表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1761/3108

659、コーネリアスの牙

「あ、おはようございます……えーっと、冒険者の方ですか?」


「ああ、五等星キサダーニ・ロブ。ドロガーの昔の仲間だ。」


キサダーニはあれからずっと起きていたようだ。


「へー。ドロガーさんの。あ、私はアーニャ・カームラと言います。じゃあキサダーニさんが見張りをしててくれたんですね。ありがとうございます。」


ぺこりと頭を下げたアーニャ。


「別にいいけどよ。いつまでここにいるつもりだ? さっさと逃げねーと赤兜が来るぞ?」


むしろ昼になっても増援が来ないことがおかしい。


「で、でも、カースが起きないと……」


「そりゃそうだ。どっちにしてもいつまでもここにはいられねーぞ? 俺だって命を懸けてまで魔王を助ける気なんざねーからな?」


「で、ですよね。むしろ今こうして見張りをしてくれてありがとうございます。私は……何もできませんから……」


「まあいいさ。魔王にゃ借りがなくはねぇ。貸しもあるけどよぉ。ここらでどーんと恩を売っておくのも悪くねえさ。」


「そ、そうなんですね。ありがとうございます。」




次に起きたのはクロノミーネだった。


「あー黒ちゃんおはよ。元気ー?」


「クロミさんおはよう。私は元気だけど……」


「呑気にあいさつしてる場合じゃねーぞ。どうする気だ?」


「えーっと、ドロガの友達だよねー。ドロダチって呼んであげる。どうもしないし。ニンちゃんが起きるまでねー。」


「別にいいけどよ……どうなっても知んねーぜ?」


「ここって意外と守りやすいしー。だいたいウチらどこに逃げればいいかなんて知んないしー。ニンちゃんが起きたらどうにでもなるしー。」


クロノミーネにしては意外と考えているようだ。ほんの少しだが。


それからアレクサンドリーネも目を覚ました。クロノミーネが無理矢理起こしたとも言うが。


「金ちゃんおっはよ。調子どーお?」


「動けないわ……体中が痛くて……少し待って……」


そう言うとアレクサンドリーネは魔力庫から何やら薬を取り出して、ポーションで流し込んだ。


「はあぁ……少しだけ良くなったわ……痛みを少し消しただけだけど……」


「アレクさん大丈夫? 今の薬って……」


アーニャは心配している。アレクサンドリーネが無理をして危険な薬を飲んだのではないかと。


「問題ないわ……ただの波符亜燐(ばふありん)だから……でも、痛みは消してくれるけど……治してくれるわけじゃないわ……」


「ばふありん……半分はカースの優しさで出来てたり……」


アーニャには聞き覚えがあったのだろう。


「カースの優しさ? カースは錬金術師じゃないから無理ね。むしろこんな時はカースの魔力入り特濃ポーションが欲しいわ……」


「そんなポーションがあるの!?」


「もうないわよ。死ぬほど不味いポーションだったけど。さあ何か食べるとしましょ。だから私を起こしたのよね、クロミ?」


「もっちろーん。今の金ちゃんはとにかく何か食べないとヤバいしー。それを言ったらニンちゃんもだけどぉー。でもニンちゃんと精霊様はまだ起こさない方がいいっぽいしー。」


「それもそうね……じゃあアーニャ、料理を頼めるかしら?」


「う、うん! 任せて! スータドマ村っぽい料理でよければ……」


魔力庫から食材を取り出すアレクサンドリーネ。それから鍋や食器、調理器具まで。


「ふわぁ……こ、このナイフ……一体何で……」


「ミスリルよ。鍋にフライパンもね。カースの口に合う料理を作るにはこれぐらい用意しておかないとね……」


「火加減はウチが見るしー。」


クロミはそう言って鍋を空中に浮かべた。釜戸などないのだから当然だ。


「う、うん……」




「あっ! これミソ!」

「漬け物!?」

「ワサビあるの!?」

「うっわー干物おいしそー!」

「お米!? マジやばいし!」


アーニャは大きな声で独り言を吐きながら料理を進めていった。

それらの食材はアレクサンドリーネの料理や天都の宿で何度も食べたはずなのだが、いざ食材として目の前にすると感動の度合いが違うらしい。




そろそろ出来上がる頃だ。

すると匂いに釣られたのか、ようやくコーネリアスも起きてきた。


「ピュイピュイ」


声のトーンはいつも通りだが、どこか弱々しさを感じる。そんなコーネリアスだが、頭をキョロキョロと振り回している。カースを探しているのだろうか。


「コーちゃん、大丈夫?」


アレクサンドリーネも心配そうだ。


「ピュイピュイ」


首を縦に降りながら返事をするとカースの方へと這い寄っていった。

全員がじっと見つめている。アーニャも料理の手を止めて。


「ピュイ」


そのままカースの首に噛み付いた。例の二筋の傷がある場所へと。


「こ、コーちゃん……?」

「精霊様……」


ますます心配になるアレクサンドリーネ。クロノミーネはどちらかと言うとコーネリアスを心配しているようにも見える。


「ピュイピュイ」


振り返ったコーネリアス。口をいっぱいに開き何かを見せようとしている。


「あっ、牙が戻ってるし!」


それは一センチ程度の短い牙だった。カースの首に打ち込んでいたそれを今、取り戻したということなのだろうか。そのせいなのか、先程より元気になったようにも見える。


「ピュイピュイ」


そしてコーネリアスはくるりと回りウインク。それからアレクサンドリーネの首へと巻きついて一言「ピュイピュイ」そう言った。


「とりあえず問題なさそーだし。食べよっか?」


クロノミーネが言うならおそらくそうなのだろう。アレクサンドリーネもそう考え食事を始めた。未だ目を開けないカースが気になって仕方ないものの、今の自分はカースを心配できる状況でないことぐらい自覚している。

カースが目を覚ました時に、無様な姿を見せたくないことも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 祝コーちゃん復活! にしてもコーちゃんの牙はなんの役割があったんでしょうねぇ??
[一言] 今が一番キツイ時でしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ