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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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653、クロノミーネの尽力とコーネリアスの貢献

「おい! クロミ! 大丈夫なんかよ! しっかりしろぉ!」


「起きてるし……別にウチ元気だし……あ、狼殿いたの、ね!? ちょっ! ヤバすぎじゃん! もおおおおーー! 次から次に! どうなってんのぉ!」


「落ち着け。どうせお前にしか治せねぇんだ。魔力がねぇんなら俺のぉ吸っとくか?」


「吸うし! 手ぇ出して!」


「お、おお……ほれ。」


『魔力吸引』


「おい、遠慮すんな。ギリギリまで吸え。俺の魔力なんざお前からすりゃ微々たるもんだろぉがよ。こいつらぁ治すのぉ優先しろや。」


「分かってるし……」


「おぐっ……ふぅ……一気に抜きやがったなぁ……悪いな。後ぁ任せるぜ……俺ぁ寝る……」


そう言ってドロガーは洞窟の方へふらふらと歩いていこうとして……途中で倒れた。


「任せろし……」


『水球』


クロノミーネはまずカムイを水球に包み、しっかりと洗っている。特に鼻の周辺を。

それから……


臓腑修癒(ぞうふしゅうゆ)


次に、カムイの腹に空いた二ヶ所の傷に指を入れて治癒魔法を使った。


「はぁ……きっつ……も、もう少し……」


「あ、あの、クロミさん?」


そんな時に現れたのはアーニャだった。激しい戦いがあったのだ。目が覚めたのだとしてもおかしくないだろう。


「黒ちゃん? どうしたの?」


「こ、コーちゃんが……ぐったりしてて……」


「はあぁ!? 精霊様まで!? どーなってんのよ! ちょっと待ってて!」


さすがにダークエルフであるクロノミーネもとっくに限界を超えている。余裕など少しもないだろう。しかも今はカムイの治癒の真っ最中なのだから。


「あ、そうだ黒ちゃん! 中にいる人間! 全員起こして連れてきて! 早く!」


「う、うん、分かった!」


慌てて洞窟内に走って戻るアーニャ。


「んもぉーー! みんなして何やってんのよぉぉーー!」


文句を言いながらもカムイを治す手は止めない。いくらカムイの体調が悪くとも、傷さえ塞げば後は放っておいても大丈夫なはずだから。カムイならば、おそらく。


『走査』


並行してコーネリアスの状態もチェックするクロノミーネ。コーネリアスがぐったりして動かないなんて只事ではないのだから。


「よし……狼殿はこれでよし……血も魔力も足りないけど……自力でどうにかして……で、精霊様を……」


「あれ? 牙がない……根本から折れてるのぉ!?」


コーネリアスには一センチ程度の短い牙が二本ほど生えている、はずなのだが。今はそれが見えない。


「うーん……魔力が空っぽってことしか分かんないし……でも参ったし……精霊様にウチの魔力を入れるなんて真似はできないし……ほっとくしかないし……」


魔力は魔力でしかないはずなのに、なぜクロノミーネはそうしないのか。


「あ! もしかして!?」


慌てて立ち上がり、カースの首を覗き込んだクロノミーネ。


「やっぱり。ニンちゃんの首の傷……嫌な感じがしないから放っておいたけど……これって精霊様の牙だし……」


「どうしよ……」


クロノミーネは困っている。抜くのが正しいのか、このままにしておくのが正しいのか、判断がつかないようだ。


クロノミーネの見立てによると、カースの首に突き刺さり、埋没している二本の牙はカースに何らかの活力を与えているようだ。それこそが魔力も体力も枯渇したカースを揺り動かした原因かも知れない。

それだけに、今その牙を抜いてしまうと……むしろカースにとって悪影響を及ぼす危険すらあるのだ。


しかし、その牙を取り戻さないとコーネリアスがさらに弱ってしまうような気もしている。いくらクロノミーネがダークエルフとは言え、精霊の生態など知るはずもなく、途方に暮れていた。




「あ、あの、クロミさん。連れてきたよ……」


「ああ、黒ちゃんありがと。じゃあ一列に並べてくれるー?」


クロノミーネからすれば有象無象の人間などそこらの木石と変わりない。


「う、うん。ほら、皆さんこっち。並んでください。」


眠そうで怠そうな態度を隠すこともなく、女達はダラダラと歩いている。


「早くしろし! ダラダラすんなし! まずお前! 手ぇ出せし!」


ビクッと手を出す女。その手を無造作に掴むクロノミーネ。そのまま有無も言わせず魔力を全て吸い取ってしまった。当然ながら女はその場に倒れ込んだ。


「次ぃー!」


「ちょ、ちょっと何を……」


「いいから手!」


やはり一瞬にして容赦なく全魔力を吸い散らかすクロノミーネ。


「次ぃ!」


それからもクロノミーネは女達から容赦なく魔力を抜き続けた。相手の体調に考慮することなく、限界も何も気にすることなく全てを。


「クロミさん、私にも魔力あるよ? 少ないけど……抜かないの?」


「黒ちゃんはこいつらを洞窟に運んでやってよー。大変だろうけどさ。ウチはまだやることがあるしー。」


「う、うん。クロミさんもがんばって。あ、そ、その、カースの具合って……どうなのかな……?」


「うーん……分かんない。分かんないけど問題ないと思うよー。あーしんどぉ……」


「そうなんだ……ごめんね。私なにも役に立たなくて……」


「別にいいしー。ニンちゃん達のことはウチがやるしー。」


クロノミーネはそれからもぶつくさ言いながらも献身的にカース達の面倒を見続けたが……ついに倒れた。




やがて朝は来る。辺りがゆっくりと明るくなっていく。

奇しくもこの日は一月二十五日。

天王ジュダがカース達を天道宮へと招く日である。果たしてその予定はどうなるのか。

アーニャを除き、全員が起き上がることもできないこの状態で。


もしも今、こんなところを攻め込まれたら……

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― 新着の感想 ―
[一言] クロミまで。 ほんと全員が、すっからかんですね。 こーちゃん〜!!!
[一言] コーちゃぁぁぁん!!! ほぼ全員、満身創痍とはこの事か・・・
[一言] 本当にどうなっちゃうんでしょうね。 どうにかしちゃうんだろうけど。
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