635、カースの責め苦
空き部屋らしき場所はあった。ここは倉庫かな。
では改めて『消音』
『麻痺』を一部だけ解除。
「よう。お前はここの職員だな。院長はどこだ? そもそも今いるのか?」
「だっ、誰ですか! ここは孤児院ですよ! 私にこんな真似して! すぐに騎士さんが来ますからね!」
女に拷問する趣味はないんだけどな。三十過ぎの小太り女にさ。
「お前もエチゴヤ関係者だろ? 悪いが容赦はしない。」
まずは『解呪』っと。
なっ!? こいつ、魔石爆弾を!
ふう。やってみるもんだな。散々タイミングは見たもんだから、とっさに手で触れて魔力庫に収納してみた。だがこれを次に出す時は要注意だ。出したら一秒も立たずに爆発するからな。
「見上げた根性じゃねぇか。自分もろとも俺を殺す気だったのか? 残念だったな。」
「くっ! 死『水壁』ね!?」
遅い遅い。目の前にいるからってナイフの方が早いとでも思ったか?
ではまずは五十度からいってみようか。
「さて、お前の選択肢は二つ。一つはこのまま煮えて死ぬ。もう一つは正直に話してすぱっと楽になる。どっちがいい?」
「ぺっ! このクソガキが! あんたみたいなガキに脅しくらって口ぃ割るような女だとでも思ってんのかい!」
こいつ……もう仮面が剥げやがった。さっきまで真っ当な言葉を使ってたのに。やっぱエチゴヤなんだなぁ。 ちなみに唾を吐かれても当然ながら効かない。自動防御は唾も魔法も防ぐ優秀な魔法なのだ。
『水鋸』
「あがっぎぎっぃいあっいっぐあぁーー!」
人差し指を切断、ではなく縦に割いてやった。おまけに顔以外は熱湯につかってんだ。味わったことのない苦痛だろ?
「じゃ、次は中指な。指ってまだまだあるしお前が吐くまで次々いくぜ?」
『水鋸』
「ひぎぃやぁぁぁぁーーあがっがっあっ!」
そりゃあ痛いよなぁ。一瞬じゃ終わらないんだから。しかも傷口に熱湯がしみるねぇ。
「じゃあ次な。」
「まっでえぇぇ……はなずぅ……」
意外と早かったな。
「じゃあ約束な。正直に話せ。そしたら水温を下げてやるよ。」
「あうぶうぅぅっうっ!」
よし効いた。では水温を下げてやろう。
「院長はいるのか?」
「いないぃぃ……」
ちっ。
「院長室はどこだ? もちろん表向きのじゃなくて本当のだ。」
「あっちのぉ……院長室の奥ぅ……」
「院長の名前は?」
「知らないぃぃ……最近変わったからぁぁ……まだ顔ぐらいしか見てないぃぃ……」
ほう? ここでもそんなことを。てことは待ってれば帰ってくるか?
「いつ頃戻る?」
「た、たぶん二時間もすればぁぁ……」
ふむ……待つのも悪くないか。正直かなり疲れてるし。院長室ならソファーぐらいあるだろう。なければ没収したやつを出してもいいし。
「ここの子供達はこれからどうなる?」
「ある程度使えるようになったらぁぁ……振り分けられるぅぅ……エチゴヤ系列店の下働きとかぁぁ……青紫烈隊の見習いとかぁぁ……」
「全員がか?」
「見た目がいいガキはぁぁ……娼館にぃぃ……何にも使えないガキはぁぁ……見世物にぃぃ……」
予想通りか。つくづく上手いことやってやがる……この分だと普通の孤児以外にも拐ってきた子供とかエチゴヤの下っ端の子供も含まれてるかもな。
「最後だ。魔力庫の中身を全部出せ。」
ふむふむ。魔石爆弾はもうないのか。実は一人一個と決まってたりしてね。
それから現金が四十万ナラーぐらい。後は武器に着替えってとこか。
「もうないな?」
「ないぃぃ……」
ならばよし。
『風斬』
首チョンして収納っと。正直に話してすぱっと楽にしてやった。エチゴヤは皆殺しなんだから苦しみながら死ぬより幸せだろ。
さて、院長室へ行ってみるかねぇ。話によると鍵がかかってるそうだが……
マジかこれ。南京錠じゃん。ここでは何と呼ばれているのかは知らないが。こんなのローランドにもないぞ? 魔力錠がスタンダードだからな。
『金操』
その代わり金操だと簡単に開くんだよな。で、中に入ってから再び金操で鍵を閉める。
見たところ狭い事務室って感じか。質素な生活してますアピールか?
さて、この奥に本当の院長室があるってわけね。あいつは隠し扉の開け方までは知らなかったからな。じっくり探すとしよう。それにしてもコーちゃんが戻ってこないってことは地下通路なんかを見つけたもんだから、しっかり番をしてくれてるんだろうな。
うーん、分からん。壁を片っ端からぶち壊せば分かるんだろうけど、まだそれをする気はない。のこのこと戻ってきた院長をふん捕まえるためにはな。
仕方ない。寝て待ってよう。この部屋ってあんまり広くないしソファーも置いてないし。仕方ないから私の魔力庫から出すとしよう。西の孤児院でゲットしたやつだけど。
あー疲れた。自動防御と範囲警戒をきっちりと張ったら……少しだけ横になろう。ふぁーあ。疲れたし眠いし体中が痛いし。私もなかなかの苦労人だよなぁ……




