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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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600、領主と蔓喰

あまり集中できなかった……

何かにつけて「お茶です!」「それとも酒にしやしょうか!」「お茶うけです!」「肩をお揉みしやす!」「女ぁ呼びやしょうか!」ときたもんだ。


私を歓待しようとする気持ちは嬉しいんだが放っておいて欲しかった……好意を感じたもんだから、さすがの私も放っておけって言えなかったんだよ。


おっ、ドタドタと足音が聞こえる。帰ってきたかな。


「魔王さぁーーん!」


「やあヨーコちゃん元気っにっ!」


ぶほっ、いきなり腹に飛び込んできちゃったよ。いつ私にこれほど懐いたんだ?


「魔王さん魔王さん! 今回はありがとうございました! おかげで蔓喰は助かりましたぁーー!」


「それはよかったね。アラキ島を領主に献上したって聞いたから気になって来てみたんだよ。ヨーコちゃんがいいなら問題ないね。」


「はいっ! 全部魔王さんのおかげです!」


「どうも魔王さん。ようこそお越しくだすった。今回の件はあっしからご説明しやしょう。」


若者頭(かしら)だったな。名前は……うーん……


「簡単にでいいよ。ヨーコちゃんが納得してるならそれでいいんだからさ。」


「へい。実ぁあの後、エチゴヤの巻き返しに遭いやして。結構な大軍で攻めてきやがったんでさぁ。しかもアラキ島だけでなくテンモカとトツカワムの間の街、セニシーにまで手勢を送り込みやがったんで。」


「よく分からないが、セニシーってのはアラカワ領なのか?」


「そうなんでぇ。アラカワ領と隣のタニガイト領を分けるブンゴス川の西岸の街だぁ。そこにはウチのモンだっておりやすがね。一夜明けてみりゃあ、見事に制圧されちまったんでぇ。何とか逃げのびたモンの知らせを聞いてねぇ。こいつぁ一大事ってことであっしとゴッゾで人数引き連れて大急ぎで向かったんでさぁ。」


青紫烈隊(バイオレッタ)とかいなかったのか? よく勝てたな。」


「ええ、ちったぁいやしたが、手強いやつぁあっしとゴッゾでどうにか仕留めやしてね。なんとかセニシーを奪回したってわけでぇ。」


青紫烈隊に勝つなんてやるじゃん。


「そうなるとアラキ島は?」


「へい。あっしらがそんな状況だったもんで島にぁ人手がさけなかったんでぇ。そこを助けてくだすったのがなんと領主様ってわけでぇ。」


闇ギルド間の争いに騎士団を投入したのか? 後先考えてないのか? 勝ったみたいだからいいけど負けてたら国辱もんだろ。この場合は領辱って言うのか?


「ちなみにどんな風に?」


「海路を封鎖してくだすったんで。なんつってもアラキ島は名目上はアラカワ領なもんで。そんでカドーデラが獅子奮迅の活躍をしたらしく、すでに上陸したエチゴヤのモンだけぁ仕留めたってわけでさぁ。おっと、ビレイドも誓約魔法で元から島にいたエチゴヤの奴らを上手く使ったみたいでさぁ。」


なるほど。うまく立ち回ったわけね。闇ギルドを相手に騎士団が出動すると、場合によっては勝ち負けにかかわらず物笑いの種になったりもするけど。今回の場合は自領を攻められてるわけだし大義名分に問題ないよな。


「アラカワ騎士団はアラキ島に上陸はしなかったのか?」


「そうなんで。さすがに白昼堂々闇ギルドと共闘するわけにゃあいきやせんわなぁ。あぁ、でも海からの増援分はエチゴヤの船が領主様の御座船に触れたって理由で全滅させたみてぇですぜ?」


「おおー。さすがに容赦ないな。ならしばらくは問題ないな?」


「そう思いやすぜ。ところで魔王さん今夜の予定は?」


「悪いな。夕方までにはイカルガに戻らないといけないんだ。ここにはあれこれ用事が済んだらまた来ると思う。」


「えー! 魔王さんそんなぁー! せっかく来てくれたのにぃー! まだ何にもお礼できてないんですよ!」


「ごめんねヨーコちゃん。また来るからね。」


「はぁい……あっ! それから迷宮の踏破おめでとうございます! ドロガーさんが一緒だったからなんて言う人もいるけど! 僕は分かってますよ! 魔王さんがいたからですよね! さすが魔王さんです! すごいです!」


「はは、ありがとう。あれはみんなの力だよ。ドロガーだけでも、僕だけでも無理だったと思うよ。みんなの力、ヨーコちゃんならよく分かってるはずだよね?」


「は、はい! その通りだと思います! うわぁやっぱり魔王さんの言うことって深いですね! 僕あこがれちゃいます!」


普通のことしか言ってないよ。この子だまされたりしないよな? カシラやゴッゾがいるから大丈夫か。いや、ゴッゾはだめだ。頼れるのはカシラだけだろうな。


「これからも力を合わせてがんばってね。」


「はいっ! 魔王さんもまた来てください!」


こんな小さな子に、闇ギルドの運営がんばってね、とは……私は何てむごいことを言っているんだ……


「カシラもまたな。ゴッゾによろしく。」


「へいっ! この度はとんでもなくでっけぇ借りができやした! 本当にありがとうございやす! あっしら蔓喰(つるばみ)一同! 魔王さんの偉業を語り継いでいくつもりでさぁ! おうおめぇら! 整列だぁ!」


またこのパターンか……


入口の両サイドに人垣が……


「魔王さん! 城門までお送りします!」


そう言ってヨーコちゃんは私の手を握ってきた。キアラみたいでかわいいな。キアラより何歳下だっけ? 三つか四つぐらいかな。


「じゃあ行こうか。」


「はいっ!」


「行ってらっしゃいやし!」

『行ってらっしゃいやし!』


あれ? カシラは来ないの? ヨーコちゃんは帰りどうするんだ? いくら何でも城門からこんな裏通りまで一人で歩かせるわけには……

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― 新着の感想 ―
[一言] ヨーコちゃんは僕っ子であったか・・・良き!
[一言] そうですね。これはちょっと心配かも。
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