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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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585、復活の夜

クロミとドロガー、そしてテンポが部屋にやってきた。


「ねっ! 黒ちゃん起きてるでしょ!」


「おー! よかったじゃねぇか! ローランド人なんだよな? そんなら俺のこたぁ知らねぇよなぁ?」


「知らないだろう……」


「アーニャ、紹介する。今回一緒に迷宮を攻略してくれた仲間たちだ。まずこの蛇ちゃんがコーネリアス、コーちゃんと呼ぶといい。」


いささかタイミングが変ではあるが。


「ピュイピュイ」


「コーちゃん? さっきから気になってたんだよ。すっごくかわいいよね。」


当然だね。


「それからこっちの狼ちゃんはカムイ。」


「ガウガウ」


「カムイちゃん? うっわぁ、すっごいもふもふしてる! あぁもぉーすごぉい!」


カムイめ、褒められて満更でもないって顔してるな。綾子、いやアーニャが毛皮に顔を埋めることを許している。


「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルよ。アレクサンドル公爵家の分家筋ね。」


「うわぁ……やっぱり雲の上のお貴族様だったのね……本当にタメ口でいいの?」


「今さらだわ。いいに決まってるじゃない。」


「ありがと。アレクさん今後ともよろしくお願いします。」


うーんいい関係になったのかな。案ずるより何とやらって感じか。


「それからこっちはダークエルフのクロミこと……えーっと……」


「クロノミーネハドルライツェンだし! ウチのことはクロミでいいしー。ウチも黒ちゃんって呼ぶしー。」


クロミと黒ちゃん……紛らわしいなぁ。


「え? ダークエルフ……って? え、え? あっ、耳がとんがってる!」


そりゃあ普段エルフなんて出会うことないもんなぁ。


「クロミは人間じゃなくてエルフ、正確には魔境の遥か北に住んでるダークエルフ族なんだよ。クロミには迷宮で命を助けられた。頼れる存在さ。」


「へへー。ウチって頼りになるしー。黒ちゃんも困ったら助けてあげるしー。」


「ど、どうも、今後ともよろしくお願いします……」


「それからヒイズルの五等星冒険者ドロガー。五等星って言えば大抵のギルドではエース格だな。」


「人呼んで傷裂(きずさき)ドロガーだぜ。姉ちゃん助かってよかったぜなぁ。それにしてもあんな目に遭ってよくもまぁここまで回復できたもんだぜ。神ってのぁすげぇもんだぜ……」


「あ、ど、どうも、ありがとうございました。おかげで、元気になったみたいです……」


そりゃあ自覚なんかあるわけないもんな。


「ドロガー、アーニャは治ったってより元に戻った感じだな。だからヒイズルに来てからのことは何も知らない。経験すらしてないも同然だな。」


「おお、それは何よりだぜ。いやぁよかったよかった。」


クロミもドロガーも、腫れ物に触るような態度でないのはありがたいな。こんな時はいつも通りの方がアーニャにとっても馴染みやすいだろうからな。


「最後は途中で入ったメンバー、元ヒイズルの騎士、テンポだ。」


何と紹介するのがベストなんだろうか。


「テンポザ・ゾエマだ……俺はただ魔王にくっついて歩いただけだ……運良く命を拾ったにすぎない……」


「えっ、と……魔王って何……ですか? 魔王サタナリアスとか?」


「それは勇者が倒した方の魔王だな。大昔の。今、ローランド王国で魔王と言えば俺のことなんだよ。五、六年前からだからアーニャは知らなくてもおかしくないさ。」


私の名前が王国中に轟いているとは思わないが、ある程度の規模の街に住んでて知らないのならモグリだけどなぁ。もっとも、名前や服装だけ知ってても顔まで知ってる奴なんてごく少数なんだろうなぁ。私の場合はウリエン兄上と違って姿絵が出回ってもないし。


「か、カースってすごいんだね……」


「国王陛下だってカースには一目置いているし、王都やフランティア領都を何度も救った英雄なの。これが、あなたがこれから先の人生を共にする男よ。場合によっては私の代わりに国王陛下に拝謁することだってあるかも知れない。覚悟を決めておきなさい。」


「え!? そ、そんな……」


元日本人の感覚からすると、ローランドの国王に会うよりも天皇陛下に会う方がよほど緊張するな……この話は後でアーニャにも伝えてみよう。たぶん同じことを思ってくれそうだから。それを思えば国王に会うことは、まあそこまで大変でもないかな。


「女神よぉ、そんな難しい話は今度にしろやぁ。それより今夜はアーニャの復活祝いだぜ! これでようやく俺らぁ迷宮を攻略したって言えるんだからよぉ!」


「その通りだろう……」


ドロガーの言う通りだな。迷宮の踏破はただの手段であって目的ではない。アーニャが元気に目覚めた今こそ、目的を達成したと言える。その事実に比べれば側室になるだ故郷に帰るだなんてのは瑣末なことでしかない。


「よし! ドロガーとしては派手に飲みたいかも知れんが今夜はこの面子だけでじっくり飲もうぜ! アーニャ、酒は飲めるか?」


前世ではそこそこ飲む方だったが。


「飲んだことないから分からないよ。貧乏な暮らしをしてたんだから。」


「それなら薄くて飲みやすいやつも頼もう。まずは乾杯しないとね。」


呼び鈴の魔道具ポチっとな。




よし。酒と肴が到着したぞ。さっき夕飯食べたばかりだが気にしない。今夜はとことん飲むんだからな。


「えーそれでは乾杯に先立ちまして、今夜の主役であるアーニャより一言ご挨拶を!」


「えっ!? カースそんな、いきなり言われても……え、えーっと……さっき目が覚めたばかりで、何がどうなってるのか正直さっぱり分かんないんですけど、皆さまが命を懸けて私を救ってくださったこと……本当に感謝してます。実感がないのが悲しいですが、知ってもろくなことないと思いますし。皆さま、ありがとうございました!」


全員が拍手をおくり、場が一気に盛り上がった。


「では乾杯といこう。用意はいいな? では! アーニャの復活を祝って! 乾杯!」


『乾杯!』

「ピュンピュイ」

「ガウワウ」


ふふ、楽しい夜になりそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] かんぱーい!!
[一言] 何だかんだでうまくまとまるのはカースとアレクの人柄でしょうか。
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