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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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523、ブラッディオーガロード

今のカムイではいくら首に食いつこうが致命傷は無理なんだよな。嫌がらせ程度の攻撃しかできない。仰向けに倒すことができればどうにかなりそうだが……


「ガウッ」


カムイは果敢に攻め続けている。次の狙いは肘の内側か。あそこの筋をぶち切れば腕が動かなくなる……が……

そこはオーガが地面に手をついている時でなければ狙いにくい。いくらカムイでも。

ならば……


「ドロガー! お前はロープの先に何か重いもんでも括りつけて離れて攻撃しろ! いや、オーガの気を引ければ何でもいい!」


「おうよ!」


さて、私は……


「アレク、それ貸して。」


「え、ええ……カース……」


アレクが悲壮な顔をする。私だって嫌だ。ムラサキメタリックの刀。確か『山裂(やまざき)』って言ったっけな。オワダで深紫(ディパープル)の奴から奪った刀だ。私が持つ長い刃物で最強なのはこれだからな。こいつを扱うには腕前が足りないだろうが、あのオーガに接近するには赤兜以外では私しかいない。今のところメンバーの中で二番目に防御力が高いのは私だからな。あーやだやだ。金属鎧じゃないから握られたりなんかしたらアウトなんだからさ……服は無傷で私だけ潰れてしまう。


ドロガーはオーガの棍棒が届くギリギリから……何だあれ? ロープの先に斧を括りつけてるのか? そんな奇妙な武器を振り回してはぶん投げている。結構エゲツない威力が出そうだな。オーガも無視はできないようだ。

その上カムイまで周囲を飛び回っていては。


で、私はその間に背後へとまわり込み……腰の上まで登りたいのだが……


くっそ! めっちゃ揺れる! 幸いなのか毛むくじゃらだから掴めるのはいくらでも掴める! だが、毛の間にはダニかシラミが多い上に臭い! なんで迷宮の魔物なのにこんな時だけリアルなんだよ! クソっ! 私の頭より大きいダニまで居やがるじゃねーか! こっち来んな! キモいんだよ!


ぶはっ! 大腿部を過ぎたら少し毛の量が減ったか。ここから尻の方へまわって、もう少し上へ……

行けるかぁ! 掴める所がほぼないじゃん! もうここでいいや! おらぁ!


「グギャオボッ!?」


さすがに気付いたか。腰の左側、大腿部との境目あたりに山裂を深々と突き刺してやったからな。骨には当たらなかったらしく、鍔元まで食い込んだ。すかさずオーガの手のひらが襲ってくるが……


遅えよ!


両手で刀の柄を握り、全体重を預ける!

すると!

ほぉーら! 腰から下が縦にスパッと斬れていくぜ! まさに破竹の勢いってやつか。問題は……


くっ、痛っ……

五メイル程度の高さから落ちたようなもんだからな。足の裏から着地して後ろにごろりと転んだ。ちっ、足首を少し痛めたか?


「グギャアァァァァ!」


どうよ? かなり痛ぇだろ。あ、やべっ!


ぐおおお……マジかよ……上から大量の血が降ってきやがった……

うがあぁ……めっちゃ臭ぇえええ! しかも前が見えん! ヤバっ、がはぁ!?




くっそ……痛ぇな……指先か何かに吹っ飛ばされたのか……上から潰されなくてよかったけど……

前が見えん……かぶっていたはずの帽子がなくなってるからか……


「カース!」


おおアレク! すかさずポーションを! しかも口移しで!? 今の私はかなり汚いのに! 防汚が効いてるのは顔以外だから……


「待ってて!」


おまけに私の顔をぬぐってくれた。ああ、アレクの顔が見えた。


「よし、ありがとね。元気が出たよ。今度はそっちを貸してね。」


「ええ……しっかり、ね……」


悲愴な顔をしつつも、行かないでと言わないアレクはいい子だ。


おっ、クロミも赤兜にポーションを届けてるじゃないか。やっぱ役割を分けて正解だったな。いくぜ……!


あっ! カムイ! マジかそれ! お前は天才か!?


カムイはなんと……山裂の柄を口に咥えて、擬似的に魔力刃を創り出している。


おおー! すごい! マジかよ! すれ違うたびにオーガから血がほとばしる! 縦横無尽に斬りまくりじゃん! さっきまでの爪攻撃と違ってこれは深いからな。とても嫌がらせなんてレベルではない。

急所を斬り裂かない限り致命傷とは言えないが、このままでもいずれは出血多量だ。いくらボスオーガの再生力だろうが追いつくまい。

ほぉら、カムイばっか気にしてると……ドロガーの強烈な斧が胸板に突き刺さってるじゃないか。さすがに心臓にまで到達する威力ではないにしても、それなりに出血を強いる一撃だな。


おっ! チャンス! 猛攻のせいかオーガの野郎、右手を床につきやがった! そこにカムイが……!

やった! 右腕の筋をスパッと切断しやがった! するとますます奴の頭が下がる! するとドロガーの斧が……いったぁぁーー! 左目直撃! もう少し! もう少しで喉まで手が……


おおーー! 赤兜! てめぇいいところ持っていきやがったな!? 横から走り込んで喉をザックリいきやがった! 私が不動でトドメを刺そうと思ってたのに! まあ、方法までは考えてなかったけどさ……


よし。オーガの血はもうほとんど流れない。終わりだな。だが、まだだ。迷宮の魔物との戦いは何か素材を落とすまでは終わりではない。全員そんなことぐらい言わなくても分かっている。あいつを半円状に囲み距離をとる。もちろん構えは解かない。


「ガウガウ」


あの時のあいつと同じだって?


「ちっ! 離れろや! 来んぞぉ!」


何ごともなかったかのように立ち上がったブラッディオーガロード。いや、少し縮んでるか?

あっ! あの時ってカゲキョー迷宮にいたあいつ! あいつも確かブラッディオーガって言ったか!? 大きさは全然違うけどな……こっちはボスだからか……


ちっ、二回戦やってやるよ……

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― 新着の感想 ―
[一言] 味方はみんな心強いけど、敵も手強い。 はてさて。
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