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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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517、三十一階の安全地帯

ふう。どうにか無事に安全地帯へ到着した。いやー疲れたわー。


「飯の前に風呂でいいだろ? まずは功労者のカムイを洗うからさ。」


「ガウガウ」


カムイにしては今回えらく催促されなかったんだよな。アーニャのために我慢してくれてたんだろ? ありがとな。


「えー! ウチも入るし!」


「入るのは構わんが別にクロミは洗ってやらんぞ。自分で洗えよ?」


「えー? ニンちゃん冷たーい。ウチだって活躍したし!」


「それもそうか。なら洗ってやる。ちなみにアレクはアーニャがいるから後にする?」


本当はアレクと一緒に入りたいのだが……


「ええ、悪いわね。そうするわ。」


やっぱりか……くっ、仕方ない。それもこれもアーニャを正気に戻すまでの辛抱だ。でももし、ここの神ができないって言ったら大暴れしてやろう。この迷宮ぶち壊してやる。


「お、俺も……」


「だめに決まってんだろ。」


「そ、そうだな……」


ドロガーは勘違いしているが、だめな理由はクロミが入るからではない。私が野郎の裸なんか見たくないからだ。


『闇雲』


安全地帯の奥の方に湯船を出し、カーテンのように闇雲の魔法で仕切る。まずはカムイを洗おう。手洗いでわしゃわしゃと。


「ニンちゃん次はウチも洗ってくれるんだよね?」


「いや、今からもう洗う。服脱いだらそこに座ってな。」


『水壁』


ただの椅子代わりだけど。


「もーニンちゃんたらせっかちなんだからぁ。」


何を勘違いしてるんだか。


「はーい脱いだよ。洗って洗ってー!」


『水操』


キアラが得意な水人形による三助だ。私はクロミの肌に触れる気はない。


「どうだ。上手いもんだろ?」


「え〜何これぇ? キモいし! あっ、でもこの石鹸て自然ないい香りすんね!」


「高いからな。」


そもそも石鹸そのものが高いんだよ。その中でも高級品使ってるからね。


よし。カムイはきれいになった。一緒に湯船に浸かろうぜ。


水滴(みなしずく)


カムイをざっと流して、クロミもそろそろいいかな。流してやろう。


「ふいー、さっぱりしたよ。ニンちゃん洗うのうまいんだねー。」


「なかなかのもんだろ。」


「でもニンちゃんの手で洗って欲しかったし!」


「悪いな。それは無理だ。」


「ニンちゃんつまんなーい!」


それは契約魔法の範囲じゃないから可能は可能なんだけどね。私が嫌なだけだ。アレク以外の女体に好んで触れたいとは思わないからな。


「いいから入れよ。いい湯だぞ?」


あははん。


「うん。入るぅー!」


あーあ。そんな大股広げて湯船を跨ぐと。ふーん、やっぱ金色なんだな。


「もーニンちゃん見たねー? 責任とってよぉー?」


「さあな。何のことかよく分からん。それよりこの風呂どうよ? 何回入ってもいい湯だろ?」


「むー! でもそうねー。いいお湯だよねー!」


風呂に入る時は余計なことを考えてちゃだめだよな。心静かに湯に身を任せ、何も考えずリラックスしようじゃないか。







「なあ女神よぉ。魔王とクロミが同じ風呂に入って心配じゃねえのか?」


「カースがクロミと浮気するんじゃないかって? 全然心配してないわよ。」


「ほぉー。だがあいつだって若い男だぜ? 目の前にクロミみてぇなすこぶるつきのいい女が、しかも裸でよ? そりゃあ女神もかなりのいい女だがよ?」


「あら、ありがとう。クロミにしか興味がないのかと思ったわ。カースには何人か側室を勧めたことがあるわ。私より身分の高い女の子、私より大金持ちの女の子。でもカースは見向きもしなかったわ。」


「側室を、かよ……お前もたいがいぶっ飛んでんな。なんでわざわざそんなことをしてんだ?」


「カースが最高の男だからよ。最高の男の周りにはそれ相応の女がいてしかるべきよ。私一人でカースに釣り合うなんて自惚れてないつもりだし……」


「ふーん……さっぱり分からねぇ。ようは魔王にベタ惚れってこったな。お互いベタ惚れで結構なこって。それでもその女を治す気なんだよな?」


アレクサンドリーネの隣では、アーニャがコップを両手で抱えて喉を鳴らしながら水を飲んでいた。


「カースは優しいから……」


「あいつがそんな奴かよ。顔色ひとつ変えずに何人殺してんだか。ほんとお前らって分からねぇ奴らだぜ。」


「カースは身内にはとてつもなく優しいわ。だからドロガー、あなたも身内と思われてるわ。よかったわね。」


「へっ、俺ぁ別に、魔王のことなんか、へっ、へへ、身内か。」


妙に照れたドロガーの顔を見て、カース以外の男の照れ顔なんて見たくもないな……などと、アレクサンドリーネは考えていた。




「お先。次はアレクが入る?」


「ええ、そうしようかしら。ドロガーいい?」


「しゃあねーな。譲ってやんぜ。」


「行くわよアーニャ。」


カースに縋り付こうとしたアーニャだったが、どうやらアレクサンドリーネの言うことは逆らわないらしい。迷子の子供のような顔をしつつもアレクサンドリーネに追従していった。


こうしてカースたちは束の間の休息をとった。次に目覚めた時、再びシューホー大魔洞を進む活力を得るために。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドロガーご満悦w
[良い点] カースの一人称から、三人称に移ったのが、台詞の応酬で気付きづらかったため、 >妙に照れたドロガーの顔を見て、カース以外の男の照れ顔なんて見たくもないな……などと、アレクサンドリーネは考え…
[一言] カースとアレクの関係にはドロガーも未だに驚いてますね。
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