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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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401、アレクサンドリーネ VS シューマール・アラカワ

『それでは賭けの時間も終わりましたので! 決勝トーナメント一回戦を始めます! 第一試合は…………』


アレクが決勝トーナメントで引いた番号は十一。つまり第六試合で領主の息子と対戦するわけか。そして、私とあたるなら……準決勝か……

くっ、どうせなら決勝がよかったのに。さすがにそればっかりは運だからどうしようもないけどさ。


「やあ魔王くんに女神ちゃん。ご機嫌いかがかな?」


領主の息子か。私より二、三歳上ってとこかな。それにしても、なんというか……こいつに限らずここの奴らって勝負の前なのに気軽に話しかけてくるよな。緊張感ないのか?


「機嫌は悪くないぞ。それよりもさっきは見事な口車だったな。」


「てっとり早く終わらせたかったものでね。それより僕のことはシューマと呼んで構わないよ。君たちの身分的にも妥当だろう?」


身分的には妥当でも心の距離的には妥当じゃねえよ。


「まあ、必要とあらばな。それより何か用か?」


私にではなくアレクに用があるんだろうけどさ。


「この後の話さ。僕はローランドにすごく興味がある。できれば行ってみたい。せめて話だけでも聞かせて欲しくてね。どうだいこの後。どちらが勝っても恨みっこなしでさ?」


あら、なるほどね。それなら無下にするのもなんだな。


「今夜はすでに先約があるからそちらに付き合うことはできんな。だが、こちらに参加すると言うのなら構わないぞ?」


「僕が行くと場が白けてしまわないかい?」


おお、気を使えるタイプか。それが四男の生き方なんだろうか。


「構わんだろ。どうせ酒が入ったらみんな同じだろうからさ。」


「いいのかい? 女神ちゃんもいいかな?」


さっきから私しか口を開いてなかったのにわざわざアレクに確認しやがって。


「勝負の後でそれだけの元気があるのでしたら構いませんわ。」


「よし決まった。ならば一回戦は全力でお相手させていただくよ。僕だってこれだけの領民の前で恥をかくわけにはいかないからね。」


「楽しみにしておきます。」


こいつの魔力は今のアレクの半分ってとこか。ヒイズルの者にしては高いほうだな。アレクはアレクで私との対戦を見越して魔力を温存したいだろうし。どうなることやら。




第五試合まで終わった。いよいよアレクの出番だ。


『それでは! 決勝トーナメント一回戦! 第五試合を行います!

一人目は! すでに多数のファンがついてしまったローランドの女神こと! アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドル選手! ローランド王国三百五十年! 建国以来の名門と謳われたアレクサンドル家の(すえ)! 凍るような魔力を迸らせて入場だぁぁーー!』


おお、さすが決勝トーナメント。司会も一段と熱が入っているではないか。


『二人目は! こちらもヒイズル建国二百年! 建国王アモロ・フルカワ公に敗れはしたものの! その実力を買われお家の存続を許された西の英雄の裔! シューマール・アラカワ選手! 天下分け目の大戦(おおいくさ)を前にして! 現在の丞相閣下、天都アラカワ家と袂を分かった逸話は! 今でも演劇の人気作だぁぁーー!』


家が分かれただけで演劇になっただと? 一体どんなストーリーなんだ……少し気になるな。


『それでは始めます! 見合って見合って!』




『始め!』




『始め!』




『ですから! 始めですって!』




『始めてください!』









『始めろって言ってんだろぉがああーー! 客はてめえらのお見合いを見に来てんじゃねぇんだよぉぉーー! それともこの私が相手してやんか!? おおコラァ!』


あ、司会がキレた。まだ開始から二分と経ってないのに。心が狭いなぁ。

あ、そうだ。いいこと思いついた。


『隠形』

『浮身』


放送席へゴー。剥き出しだから容易く入り込める。

ちっ、椅子が一つしかない。わざと足音を立てて着地、と同時に隠形解除。


『きゃっ! だれ、し、失礼しました。何でもありません。さあお二人とも! さっさと始めてください!』


この魔道具はオンオフがしにくいのか?


「邪魔するぜ? 俺の声は会場に聴こえるか?」


「い、いえ、ここに向けて喋らない限りは……」


ふーん。あの漏斗みたいな奴が拡声の魔道具か。


「観客が退屈だろうと思ってな。解説しに来てやったぜ。」


フェルナンド先生のような適切で確実な解説ができるとは思えないが、この姉ちゃんよりはマシだろう。


「喋るのは私です。解説するのは構いませんが、これは渡しません!」


「分かった。それなら自前で拡声を使ってもいいが……こうしよう。」


姉ちゃんの肩を抱き、耳元に口を寄せる。そして低音を響かせるように、囁く。


「これでどうだ? 俺の解説をそのまま言えばいい。分かったな?」


「は、はいっ……」


「よぉし。しっかり喋れよ?」


「はん、はいっ……んん……」


アレクには大好評の言葉責め。アレクに効くレベルならこの姉ちゃんにも効くだろうと思ったら、大正解。では私もしっかり解説するとしよう。


『遠見』




まずは……


『おおーっと! じっくりと魔力を練りつつ機会を窺うシューマ選手に対して! まるで何もしていないかのような女神選手! 全く魔力を練っていなぁーい! これはどうしたことだぁーー!?』


それが不気味なせいでシューマの奴は攻撃できないのさ。アレクがあまりにも無防備だから何を隠しているのか読み切れなくてな。ちなみに私にも分からない。アレクは何を考えているんだろう?


『シューマ選手の額を汗が伝います! さほど暑くもない、いやそれどころか肌寒い季節だというのに!』


『火矢』


『ついにシューマ選手が仕掛けたぁぁーー! 数百本もの火の矢が山なりに女神選手を襲うぅぅーー! いや、そう見せかけて前方からもだぁ! 着弾が同じになるようタイミングを合わせて放ったぁぁーー!』


おお、一人時間差か。やるなぁ。だがその程度の小雨ではアレクの防御は破れな……なにぃ!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔力干渉(表現違ったかな?)の練習かな
[一言] 何なんだよぉぉぉぉ!?
[一言] カースがこんなことやってると知れた日には、アレクも試合に集中できないんじゃあ。
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