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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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370、場末酒場のルクルピとヒョージ

部屋で待っていたカースの元へ知らせが届いたのは、アレクサンドリーネが出かけてからおよそ二時間後だった。

それはヒョージの居場所、ある酒場で飲んでいるとの知らせだ。




「こちらでございます」


「ありがとな。わざわざ悪かったね。」


チップを少々。


「ありがとうございます。では私はこれにて」


やっぱ高級宿ってのはサービスがいいね。こんな場末にまで案内してくれるんだから。つーか、こんな場所って案内なしじゃあ辿り着けないよな。酒場と聞いてコーちゃんは少し来たそうにしてたけど、目の前に残ってる酒とどちらを選ぶか悩んだ結果、来なかった。今夜はちびちびと飲みたいモードらしい。カムイもおねむだしな。そりゃあ牙を二本も抜いたんだからダメージあるよな。いくらもう生えたからって。


さて、 入ろう。ヒョージってどんな顔だったっけな……見たら思い出すよな?


ぼろいドアを開けると、いかにもダメ人間たちの集まりといった雰囲気だった。やだやだ。


「どぉーこの坊ちゃんだぁ?」

「いい身なりしてんなぁ?」

「ひゃはあっ! ここがどんな店か知らねーんじゃね?」

「ぎゃはっ! 教えてやんかぁ? テンモカの夜ぁ危ねぇってよぉ?」


これも酒場あるあるだな。無視無視。さて、ヒョージはどこだ?




「ま、待ってくれぇ! あと三日! いや二日でいい! 金のあてができたんだぁ!」


「てめぇそう言ってもう五日経ってんだぜ? もう待てねぇなぁ。今すぐ払うか、身売りするかだ! おう! どうすんだぁ!」


あ、いた。ぼろくそに殴られてやがる。


「たっ、頼むぅ! いいガキぃ見つけたんだぁ! あれなら三十万ナラーなんてすぐ返せるからぁ!」


ん? ガキだと?


「おい、ヒョージ。」


「へっ? はばぁ!? ま、魔王様!?」


あれ? 私ってこいつに魔王って名乗ったっけ? まあいいか。


「シムをどうした? きっちり話してみな? 正直にな。」


シムと一緒に姉ちゃんを探す契約魔法は解けているが、私に絶対服従する方は解いてないからな。なんせこいつには百万ナラーも払ってんだから。


「は、はひぃぃ! あ、あっしのうちで寝ておりやす……」


「その分だとシムにはお前の家を教えてたんだな。で、姉ちゃんにフラれたシムはお前んとこに駆け込んだってわけか。」


「へ、へぇ、その通りで……」


「そしてシムを売り飛ばす算段をつけてる最中ってわけか? 一番高く売れるように……」


ゲスじゃないか……


「ひいっ! ちがっ、そう、その通り、です……」


嘘がつけないってのは辛いねぇ。どうやらアレクとの勝負は私の勝ちだな。上手く人を使ったところが勝因だな。


「なぁにこっちぃ無視して話してやがんだコラァ? だが売れるガキぃ確保してんのぁマジみてぇだな。三十分以内に換金してこいや! 次にツラぁ見せっ時に野面(のづら)かましやがったら陰間男泥(かげまだんでい)に売り飛ばすぜ!」


「へっ、へいぃぃー!」


このオッさん甘ちゃんか? この手の奴を自由にさせたら逃げるぞ?


「なあオッさ、いや、兄さんよ。少し待ちな。よおヒョージ、正直に答えろよ? お前には百万ナラー持たせたよな? あの姉ちゃんを探すのにいくら使った?」


「ああん!? なんじゃコラァ!」


「ひっ、ひいあぃ! は、八万ナラーほどですぅ!」


だろうね。


「よく分かった。それじゃあシムと有り金全部持ってこい。そしたら契約魔法を解いてやるよ。で、兄さんよ。こいつにいくら貸してんだ?」


「今の時点なら三十万ナラーだぁ! なんだぁ? おめぇが払ってくれるってのかぁ!?」


「シムが払うさ。ほら、走れ! さっさと行け!」


「へいぃぃーー!」


ダッシュで店を出ていった。ふふ、私の契約魔法はよく効くのさ。


「マスター、ここで一番いい酒を二つだ。まあ兄さんよ、ヒョージが戻るまで飲みながら待ってようぜ?」


「あぁん!? てめぇ何モンだ?」


「ひひっ、身なりのいい坊ちゃんが無理してんべ?」

「けけけっ、酒なんぞ飲んだこともねーくせになぁ?」

「しかもルクルピさんにあんな口ぃきいてやがんしよ」

「おれぁあのブーツに唾ぁつけたぜ?」

「そんじゃあおれはズボンもらいだぜ!」


どいつもこいつも好き勝手言ってやがるな。


「お待ちぃ」


おっ、酒が来た。どれどれ……

あ、旨い。ダークラムっぽいな。ストレートで飲むのも悪くないが……『氷球』

私はロックが好きかな。

うん、旨い。


「どうよ兄さん? この飲み方してみるか?」


「ふん、飲んでやらぁ!」


意外と素直なのね。


『氷球』


透明な丸い氷。透明すぎて氷が見えないぐらいだ。


「悪くねぇ……これはこれで楽しめるぜ……」


「だろ? おっと、俺はカース・マーティン。ローランドの魔王って聞いたことないか?」


「はあぁ!? てめぇがかぁ!?」


「ぎゃはははははぁ! 魔王だってよぉ!」

「ひぃひひひひひぃ! こいつバカだぜ!」

「オワダでエチゴヤ潰したって奴だろぉ!? こぉーんなチビなわけねぇーぜぇー!」


チビではない。お前らのうち私より背が高い者が一体何人いると言うのだ。バカな奴らだなぁ。着痩せするから細く見えているだけなのに。節穴どもめ。


「あれ? でも最近魔王がテンモカに来てるって話じゃなかったか?」

「ローランドの女ぁ集めてるってやつかぁ?」

「そういや夢幻海楼の鈴音色ポリーヌもいなくなっちまったんだろ?」


「なーるほどなぁ! だからこいつぁ魔王だなんてフカシこいてんわけかぁ!」

「ぎゃはっははぁ! ダッセー! もうバレてやんの!」

「いよっ! 魔王ちゃん! かっこいいぜ!」

「ぐひゃーーっひゃっひゃっひゃぁーー!」


うーん、清々しいまでにいつも通りだ。これも運命なのだろうか。


「なあ、ピルピル兄さんよ。酒場でのケンカは死に損だよな? 後からガタガタ言うような腰抜けはいないよな?」


「ルクルピだ! てめぇやんのかおお!? やんならいつでもやってやんぞぉ! おおコラァっ、あぐっ!?」


遅いよ。今のはただの風斬。耳の先っぽを少し切っただけ。しかも周囲への被害はなし。さすが私。


「このガキぃ……やりやがったなぁ……その程度の腕でよくもよぉ……お前ら! やったれやぁ!」


全員が全員ともナイフやナックルなどの近距離用の武器を取り出した。少しは場慣れしてんのね。


面白くなってきたなぁ。なぜなら……


「つ! 連れてきやしたぁ! シムを! 魔王様ぁ!」


ヒョージとシムが来たからだ。

さあ、どうなるかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、カースは根っからケンカ好きって訳でもないですからね。
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