表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1440/3108

368、アレクサンドリーネとキヨバル・アラカワ

迷わず扉に手をかけて、押し開くアレクサンドリーネ。


「あぁん? 誰……は?」


恐らくは事務所番の若い衆なのだろう。夜はこれからという時間に来客があったために、どうせいつもの揉め事だろうと思いきや……目の前にいたのは信じられないほどの美しさを湛えた女だった。テンモカの最高級娼館でもお目にかかれないほど、アラカワ劇場の看板女優をも上回るような……美貌と鮮やかさを併せ持っている……ように見えた。


「え、えっと、何か用、です、か?」


混乱しているらしい。


「ゴッゾはいるかしら?」


「は? え? ゴッゾさんですか!? え、えっと今夜は確か……あっ! あなた様はどちら様で?」


「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルよ。魔王の連れと言えば分かるかしら?」


アレクサンドリーネは容易くカースの名前を出す。『氷の女神』の異名がヒイズルにはさほど知られてないこともあるが、使えるものは何でも利用するのが、彼女にとって当たり前のことだからだ。


「ま、魔王!? 少々お待ちを! おいサブラぁ! ゴッゾさんに知らせろ! 魔王様がいらしてるってよ! 早く行けぇぇーー!」

「何すか兄貴? ゴッゾさんすか? 今夜はダメっすよ? 明日ぁ幹部会やからさっさと寝るって」


「ダメならいいわよ? とある男の子を蔓喰で保護してないか確認に来ただけだから。聞いてない? シムって子よ。」


「いや……すんません、分からんですね。それにゴッゾさんそっち方面弱いし。ビレイドさんなら分かるかも知んない、です」

「ビレイドさんなら今頃『酒池肉家(しゅちにくや)』で飲んでるんすよね?」


「そう、ビレイド……邪魔したわね。」


アレクサンドリーネはビレイドのことを知らない。カースから蔓喰に契約魔法を使う者がいることは聞いているが、そもそもカースがビレイドの名前を覚えていないため知り得なかったのだ。


「姫。いささかの躊躇もなく扉を開けた時には驚きましたぞ。そして最近ヒイズル西側を騒がしているローランドの魔王とお知り合いだったとは。驚きを隠しきれませんな。」


背後に黙って立っていたキヨバルが口を開いた。


「知り合いなんかじゃありませんわ。」


「え? それはまたどうしたこ「伴侶です。将来を誓い合った最愛の男です。私の身体、心も何もかも全ては彼のもの。決してただの知り合いなどではありませんわ。」なるほど……噂の魔王はずいぶんと罪な男のようですな。そして甘い男でもある。このような時間に姫を一人で歩かせるとは。」


アレクサンドリーネは返事をすることなく歩き出した。


「お待ちを姫。酒池肉家に行かれるおつもりですか?」


「ええ。」


「こう言っては失礼だが、シムなる者は姫が命をかけてまで救う価値はあるのですかな?」


「ないですわよ?」


少しの逡巡もなしにアレクサンドリーネは答えた。


「姫ほどのお方と釣り合う命など……え? ないのですか?」


「あるわけないですわ。私が命を懸けるとすればカース以外にあり得ないですもの。それよりも、付いてくるのはご自由ですが私の行く道を遮らないようご注意くださいね?」


「え、ええ……」








よし。ようやくカムイを洗い終えたぞ。これでアレクを追える。カムイも来るか?


「ガウガウ」


せっかくきれいになったからもう出たくないって? お前はどこかのお嬢様か! 野生の誇りはないのかよ……

コーちゃんは……ああ、まだ飲んでる。ご機嫌な様子で尻尾が揺れてる。まったく、可愛いんだから。

やれやれ、気まぐれな二人だなぁ。




まずは客室係に相談だ。使えるものは使わないとな。


「シムを探してるんだが、この街で行方の知れない子供を探すにはどうするのがいい?」


「献金次第ではございますが、やはり騎士団に依頼するのが一番かと。どこの店に拐われていようとも取り返しやすい方法でございます。ただ、魔王様の場合ですと取り返す手腕に問題はないかと存じますので、業腹ではございますが八耳のヒョージなどを頼ってみるのも手かと存じます」


そんな奴もいたなぁ。この場合の業腹ってどういうことだ? 私は別に気にしないぞ?


「それでいこう。あいつを呼べる? それとも住処(ヤサ)は分かる?」


「今の時間ですと居場所が掴めませんので呼ぶには時間がかかるかと。住処にしましても朝まで戻らない可能性が高うございます。したがいまして、私どもにお任せください。ヒョージかシム様、どちらかの情報は掴んでみせましょう」


「なるほど。それなら任せたよ。部屋で待ってるから何か分かったら知らせてね。」


思えば客室係とは部屋専属のコンシェルジュみたいなものか。初めからシムを探してくれと頼んでおけば私達がオワダにいる間に見つかったのかも知れないな。

ただ私としてはそこまで思い入れもないんだよな。死んだら可哀想とは思うが全力を尽くして救ってやりたいとも思ってない。アレクが珍しく慈悲深いから協力するのにやぶさかではないけどね。アレクのためなら何でもやるとも。

それよりアレクったら大丈夫かな。私と一緒じゃないのにあんなミニスカートはいてたら……野郎どもがホイホイ寄ってきてシムを探すどころじゃなくなるような気もするが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カムイもコーちゃんもアレクは心配要らないと知ってるんですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ