表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1421/3108

349、帰れぬ女が帰る場所

叫ぶシム。肝心の姉ちゃんの声は聞こえてこない。さては一方的に喋ってんな?


「どうして! せっかく自由になれたのに!」


うるさいなぁ……

ちょっと中断。話を聞いてみるかね。




この部屋か。


「よう。調子はどうだい?」


「魔王! さま……姉やが帰らないって言うんだ、です! このままテンモカに居るって! 理由も言わないん、です!」


おやおや。どうしたことかな。


「待って。話なら私が聞くわ。理由も半分ほど想像がついてるから。二人とも先に出てて。他の者はみんな外に出したから。」


さすがアレク。仕事が早い。それに女同士の方が話しやすいってこともあるだろうしね。


「分かった。どうせこの店は潰れるか経営者が変わるからね。じゃあ下にいるね。」


「押忍……」


こいつアレクの言うことは素直に聞くんだよなぁ。




「さてシム。金目の物を探せ。お前が見つけた物は全部お前の物だ。ただし女の部屋には入るな。そして持てる量にしておけよ?」


「おー……」


アレクが見てないとこれだよ……


ちなみにこの店は娼婦がそれぞれ自分の部屋を持っているタイプのようだ。客が来てない時はそれなりに自由に過ごせているんだろうな。部屋に湯船まであったことから、それなりに高い店だということも分かる。そんな個室にはそれぞれの女が貯めた金が少なからず置いてあるはずだ。それに手を付ける気はない。自由を夢見て必死に貯めてる金だろうからな。全員が魔力庫を使えるとは限らないもんね。




「カース、お待たせ。この人、バネッサはローランドに帰りたいそうよ。」


「そんな! 姉や! 何でだよ! 俺と結婚するって約束じゃんか!」


「説明はできないわ。あなたも男ならバネッサの幸せを願ってあげなさい。」


「嫌だ! 俺は絶対姉やを連れて帰るんだ!」


うーん。心情的にはシムの味方をしてやりたいが……姉ちゃんが帰りたいって言っている以上どうにもならないな。


「うるせぇガキ! アタイはてめぇみてぇなガキが一番嫌いなんだよ! どうせ親の金で来たんだろ! その上! 人の力でアタシを救ったつもりかい! そんな弱っちいガキは大嫌いなんだよ! さっさと消えろぉぉーー!」


「ね、姉や……嘘だ! 嘘だ嘘だ! 姉やがそんなこと言うわけない! 姉やがそんな喋り方するもんか! 姉やがそんな!」


「う、うう、るせぇ!」


あ、蹴りやがった。腹を蹴られてごろごろ転がるシム。


「がふっ……ね、姉や……な、なんで……」


「だ、大嫌いだからだよ! さ、さっさと消えねぇと蹴り殺すぞ! おらぁ! 行けやぁ!」


「そんな……姉や……うわぁぁぁぁぁーーーーーーー!」


あーあ。飛び出して行っちゃったよ。


「坊ちゃん……ううっ……」


あーあ。とうとう堪え切れず涙が溢れ落ちちゃったよ。そんなに辛いなら残ってやれよな。まあいい。よほどの事情があるのだろう。後でアレクから聞けばいいや。


「ローランドへ帰るってことでいいんだな?」


「はい……お願いします……」


うーん……シムと別れるのは辛いけど、それ以上にローランドに帰りたいって感じかな。まあ私が気にすることでもない。さて、宿に帰ろうか。




「待たせたな。ちょいとお前に提案がある。」


ゴッゾはちゃんと待っていた。機嫌が悪そうだからもう帰ってるかと思ったら。


「何だぁ?」


「さっき不幸にも楼主が死んだよな。てことは経営者がいない。お前がやれば?」


ここでどのような手続きが必要かなんて私は知らない。だが、こいつなら適当にどうにでもできるだろ。


「なっ……なるほどなぁ……そいつはいい提案だぁ。だがいいのかぁ魔王? てめぇに得がねぇぜぇ?」


「そうでもないぜ。まあそれはどうでもいいや。そんじゃあこの店は好きにしろ。ただし、女は大事にしろよ? まあ同じ失敗をするような無能じゃないだろ。な?」


「あ、当たり前だろぉが! 繁盛させてやらぁ!」


まあこの件に関しては契約魔法をかける気はない。こいつが好きなように経営すればいいだけの話だ。


「それから気になったんだが、あの豚野郎は魔石爆弾を持ってやがったけど蔓喰でも取り扱ってんのか?」


「いいや。残念ながらありゃあ下手に触ると簡単に爆発しちまうからよぉ。ムカつく話だがエチゴヤお得意の商品だぜぇ……」


やはりな。これで対外的にはゴッゾが私を使ってエチゴヤと繋がりを持った楼主を処分したと見られるだろう。私は悪くない。


「ふーん。やっぱりか。それもあってあの豚をろくに庇いもしなかったのか?」


「まあな。別に法で禁止されちゃあいねぇが俺らの前で使うたぁよ。舐めた話だぜ。で、どこで飲むんだ?」


あら、こいつちゃっかり飲む気かよ。まあいいけど。


「俺らの宿に行こうぜ。どうせこいつらを連れて行くからな。」


「いいとこに泊まってるらしいじゃねぇか。そんじゃあ行くぜぇ! お前らも来いや!」


「はいっす!」

「ごちっす!」

「もちろんす!」


「それからそこのお前、ここの番頭だったなぁ。聞いてたなぁ? 今日から俺が楼主だぁ。分かったな?」


「は……はぁ……」


次の瞬間、そいつは吹っ飛んでいた。あーあ、顔面がぐちゃぐちゃになってる。痛そー。ピクピクしちゃってる。


「そっちのお前、今日からお前が番頭だぁ。しっかり働けよ? そしたらかわいがってやるからよぉ。分かったな?」


「は! ははい!」


「分かりゃあいいんだよ。おう、そこのゴミは捨ててとけぇ。街はきれいにしとかねぇとな?」


「は! ははははい!」


あーあ。容赦ないね。従業員も大事にしろと言うべきだったか。まあいいや。


それから、ローランドに帰りたい者は同行し、ここに残る者は建物内へと入っていった。皆、自分の金が心配だったことだろう。


さて、これでテンモカのローランド人のうち何割を集めることができたのだろうか。この街の男どもには不評かも知れないが私の知ったことではない。どうにか全員助けてやりたいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 死んじゃってたかと思ったらそっちだったかぁ! ゴッゾ棚ぼたやん!おめw
[気になる点] 姉やん……シム、強く生きて(生きれるのかな?) 理由が気になるところです。 ゴッソもあまり好きじゃなかったんだけど、何故か今回の話で「案外可愛いじゃないの」って思うあたり、私はいせ…
[一言] いろいろ思うことがあったんでしょうね。 後でアレクが教えてくれるかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ