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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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323、ヤチロとテンモカの狭間で

ヤチロからテンモカまでは街道を二日も歩けば着くらしい。道中には二、三ほど村もあるそうだし。またこの辺りは魔物も盗賊もまず出ることはないそうだが、代わりにスリや盗っ人に注意する必要があるらしい。盗賊と盗っ人、別扱いなのか……


アレクはいつも通り私の左腕に右手を絡めている。カムイは私達のやや前方を歩き、コーちゃんはそんなカムイの首に巻きついている。うん、いつも通りだな。


一本道かと思えばあちこちで分かれている。ありがたいことに看板が設置されているので迷うことはない。どうせ看板がなくても南西方面に進めばいいだけだし。


道に沿って小高い丘を登ると、頂上辺りは少し広くなっていた。これなら休憩にちょうど良さそうだな。さっそく先程もらったお土産を開けてみる。おお、旨そうだな。でも全部おつまみセットじゃないのか? 昼から道中で酒飲んでもいいけどさぁ……まあ、やめとくか。


「これは夜にとっておこうね。こっちの弁当にしようか。」


「それもそうね。お昼からお酒も悪くないけれど、ここじゃあね?」


ふふ、アレクめ。酒の勢いで私を襲いたいと顔に書いてあるぞ。いつでもウェルカムなのに。




「だいぶ涼しくなったね。もうすっかり秋か……」


「そうね。夏まっさかりにヒイズルに来て……もうすぐ三ヶ月。クタナツより季節の境い目が分かりやすいかしら?」


「そうだね。そんな気がするよ。」


クタナツってそれなりに内陸部だけど、あんまり冬が寒いってこともないんだよね。夏は暑いけど。


「よし、それじゃあもう少し歩こうか。」


「ええ。ところで今夜はどこかの村にでも泊まるの?」


「いや、野宿にしようよ。進路上にちょうど村があれば別だけど。」


「それもそうね。シェルターさえあればどこでも野宿できるものね。」


アレクにはピラミッドシェルターのことは単にシェルターと呼ぶように伝えてある。ピラミッドシェルターとか四角錐簡易ハウスとか言いにくいもんな。


ちなみに道中は意外と旅人や商隊っぽいのとすれ違うものだが、私達に絡んでくるものはいなかった。別段私達を脅威に感じたとかではなく、普通に良識ある者が多かっただけのことだろう。


そして街道は海沿いの道へと差しかかった。右手に海、オースター海を見ながら南下する。こっち側は夕陽が見えていいんだよな。クタナツで見る地平線に沈む夕陽も悪くはないけど。


「そろそろ日が沈むわね。ここら辺にする?」


アレクの言い方は『ここら辺でヤる?』ってニュアンスなんだよな。悪い子め。


「そうだね。それなりに広いし海からの風も気持ちいいもんね。よし、ではさっそく肉を焼こうかな。それはそうと……おい! そこのお前、腹がへってんなら出てこい! 食わせてやるぞ!」


数分前から茂みの中にいるみたいなんだよな。魔力はめっちゃ小さいしカムイも無視するレベルだから放っておこうかとも思ったが、もしかしてってこともあるから対処することにした。


ガサゴソと茂みをかき分けて現れたのは子供だった。だろうね。十歳ぐらいかな?


「や、やい! 俺にもその肉を食わせろ! さもないとこの棒でなぐる! そしたらとっても痛いし! たんこぶだってできるんだからな!」


うーん、薄汚れて痩せた少年。どこかの農村から家出でもしてきたのかな? やはり声をかけて正解だったな。


「こっちに来い。そしてそっちに座れ。焼けたやつから好きに食え。」


ミスリルボードは大きいからな。十人いても問題なく焼肉パーティーができるほどだ。


「え? い、いいのか?」


「ああ。こっちに来て好きに食え。ただし、この狼ちゃんが狙ってる肉には手を出すなよ? ガブリと噛みつかれるぜ?」


「あ、ああ……あちぃ!」


「バカ、手で食うやつがあるか。これを使え。」


「なんだよこの箸……重い……」


ふふふ。イグドラシルで不動や修羅を作った時についでだから作ったのさ。イグドラシル材を使った箸をな。神木で焼肉を食うなんて贅沢なガキだ。しかしこいつ、握り方がおかしいな。別にいいけど。


「はふっ! ふぁふむ! はむむ! うめ! うめぇ!」


今焼いているのはシーオーク、つまりは海の幸。これはこれで旨いんだよな。


「あちっ、はぶっ、ぐあっ! うめぇうめぇや!」





「ふぅー。うまかった。お前みかけによらずいい腕してんだな! この板もなんだかいい感じだし!」


「おいガキ、食い終わったら何か言うことはないのか?」


「は? うまかったぞ? あ! 誰がガキだ!」


風球(かざたま)


「あぎゃっ!」


やれやれ。礼儀知らずのガキは困るな。よっぽど腹が減っていたようだから食べる前は見逃してやったが。腹が膨れた今はそうはいかないんだよな。


「おいガキ。飯を食わせてもらったら『ごちそうさまでした』だろうが。ほれ、言ってみろ。」


「う、うが、なんだ今の……」


『風球』


「あごっう!」


威力は抑えてあるから怪我すらしてないだろう。ちょっと頭がぐらぐらする程度か。


「ほら、何て言うんだ?」


「ご……ごちそ、さま、した……」


「んー、まあいいだろう。で、クソガキ、お前の名前は?」


「うるせ……お前こそ……だれだ……」


『風球』


うーん、ガキの教育ってのは面倒なもんだね。でもまあ最悪このガキが死んだとしても、私には何の影響もないんだけどね。せっかく助けてやろうとしてるってのに。


あらら、気を失ってるよ。弱っちいなぁ。仕方ないから私のローブでもかけておいてやるよ。地面に直接寝るとぐんぐん体温を奪われるけどさ。


「よーしアレク。お風呂に入ろうか。今日は久々に星空空中露天風呂といこうよ。」


「うわぁ素敵ね。最高だわ!」


「ガウガウ」


カムイも来るのね……いや、別にいいよ。邪魔だなんて思ってないから……

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― 新着の感想 ―
[一言] その昔小学校の教師をしていた男が居たような……
[良い点] えーと、ドラクエならいきなり夜がくるイベントで、肉をくれ、イイエを選ぶとヒロインが意地悪しないでの永久パターン?んで、なぜか大事なアイテム持ってて、(苦笑)
[気になる点] あれ?この展開は今までありそうで無かったですねー まぁローランド王国にはそもそもこんな子供いないか・・・
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