297、ある秋の陽気な一日
日没までに余裕でヤチロまで戻った。
せっかくだから看板娘と妹もこっちの夕食に招待してやった。たまには良いものを食べたっていいよな。オヤジには悪いがね。でも二人とも大喜びだった。
部屋に戻って入浴。アレクと二人がかりでカムイを洗ってやった。カムイも大満足していた。明日は起きたらギルドに行って……それからイグサ田かな。結構忙しいな……
アレクとの素晴らしきイチャイチャタイム。何度交わっても飽きることのない最高の時間。私は幸せ者だね。
そして翌朝。起こされたのはたぶん九時過ぎだろうか。昨夜は、いや昨夜も燃えたもんな。もう少し寝ていたかったがコーちゃんに起こされてしまったんだよな。「ピュイピュイ」
お腹空いたんだね。
さてと、遅めの朝食も済んだのでギルドに顔を出すとしようかな。
やはりこのぐらいの時間帯だと混んでないのはどこでも同じか。並ばなくて済むのはいいな。ちなみに今日はコーちゃんは一緒だがカムイはいない。あいつは宿でのんびり風呂に浸かりたいそうだ。どんだけ風呂好きなんだよ。
「おやぁ? 昨日の今日でどうしたんだぁい?」
おばさん会長だ。やっぱ受付やってんのか。働き者だなぁ。
「盗賊の首をとってきた。どこに出せばいい?」
「はぁ? 何をバカなこと……マジなのかい? でも、生け捕りにするんじゃなかったのかい?」
「あー、気が変わった。ムカついたから殺したわ。」
実際には違うけど、まあ似たようなもんだろう。
「そ、そうかい……じゃあこっちだ……」
ギルドには解体倉庫が付き物。やはりどこでも同じか。
「そこら辺に並べといてくんなぁ」
「はいよ。」
魔力庫から一つずつ取り出す。面倒いな……
「ほぉう? 知った顔が一つ二つあるねぇ。こいつらが夢の雫にいたとはねぇ……」
「知ってんの?」
「一応手配されてる盗賊さぁ。もっとも賞金なんぞかかるレベルじゃあないがねぇ」
ふーん。元々は別の盗賊だったってことか?
「で、いくら?」
「見たまんまだよぉ。首が二十六個。だから二百六十万ナラーだねぇ」
一週間の宿代にもならないな。
「それで、こいつら全員じゃないだろぉ? 残りはどうしたんだよぉ?」
「ん? いなかったぞ。こいつらの中にボスはいないってことか?」
我ながら白々しいな。
「いないねぇ。それに大事な女もいないじゃないかぁい。もう一回行くんだねぇ。まっ、たった一日で往復したんだ。簡単なんだろぉ?」
「ああ、そのつもりだ。二、三日後ってとこだな。」
「そうかぁい。魔王の二つ名は伊達じゃないってことだねぇ?」
あれ? 魔王って言ったっけ?
「それ、どこから聞いた?」
「オワダじゃ噂んなってるよぉ? ローランドから白袖黒服の魔王が来たってさぁ。
「あら、そうなの。意外と交流あるんだな。」
「そりゃあね。お貴族様と違ってあたしら冒険者にゃあ街と街の繋がりも大事だからねぇ?」
ふーん。やっぱローランドと違う面も結構あるんだな。ローランドでは貴族領が違うとギルドも別物だもんな。
「ほれ、現金がいいんだろぉ?」
「ああ。ヒイズルのギルドカードなんか持ってないからな。」
いつもニコニコ現金クレクレ。
報酬を受け取って、絡まれることなくギルドを後にした。街をぶらつきながらフォルノの様子でも見に行ってやるかな。ここからだと少し遠いけど。露店で食い物でも買ってってやろう。
「フォルノー、いるかー。」
まあいなくても入るけどね。
「ぬう? おおー! やっと来てくれたんかぁ! 待ってたんだでー!」
「元気そうだな。食欲はあるか?」
「ぬー! 元気いっぱいだでー!すごい薬を使ってくれたんてな! ありがとうな!」
「それはよかった。道具を作るのはまた今度な。それまでにこの前作った分をきっちり研ぎに出しておけよ?」
「ぬ! もちろんだで! 昨日チラノが持ってってくれたからな!」
「分かった。じゃあこれお土産な。また来るわ。」
「ぬー! ありがとなー! うまそうだで! また来いよ!」
元気そうで何よりだ。やっぱ万能薬って効くんだなぁ。神ってすごい。
「アレク、海に行かない?」
「いいわよ。泳ぐの?」
「いや、海沿いを散歩するだけ。のんびりとさ。」
「楽しそうね。そんなのもいいわよね。」
「ピュイピュイ」
浜辺で酒が飲みたいって? もーコーちゃんたら。もしあいつらがいたらね。
うん。いないね。いくら漁師だからって毎日浜辺にいるなんてことはないよね。
でももうすぐ昼だし、少し散歩したらどこかで肉でも焼いて食べようか。ね? コーちゃん。
「ピュイピュイ」
お酒は少しだけだよ。コーちゃんどうも飲み過ぎだからね。でも飲めば飲むほど健康になりそうなのは気のせいか?
うーん、浜辺で海を見ながらバーベキュー。たまらんね。肉だけじゃなくて、この前獲った貝だってまだまだ残ってるしね。あー美味しい。腹が膨れてくると眠くなってくるなぁ……今日の陽気のせいもあるな。
「カース、寝る?」
アレクはそう言うと水壁の魔法を唱え、座り込んだ。ウォーターベッドにアレクの膝枕。最高だな。
「うん寝る。ありがとね。」
「ピュイピュイ」
コーちゃんは泳ぎに行くそうだ。
アレクの太ももはすべすべ。タイトなミニスカートで膝枕をしてくれるとは嬉しいね。あー眠い……




