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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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280、建国王アモロ・フルカワ

大きい鍋。たくさんの肉と少しの魚。そして野菜。浜っぽくないなぁ……

酒は普通のエールだ。これは悪くない。


問題は……大勢の男が直箸を突っ込む鍋をアレクに食べさせたくないことだ。だから……『水操』

私が給仕をする。こいつらの手持ちのお椀に片っ端からよそってやるぜ。そうすれば誰も箸を突っ込む必要があるまい。


「おお……なんだそれ……」

「肉が勝手に椀に入っていくじゃねぇか……」

「これが魔王の魔法なんか……」

「こいつぁ便利だな……」


もちろん私の手が塞がるわけではないので私が食べるのを止めることもない。うん、旨い。やっぱ大鍋でたくさん煮ると旨いよなぁ。


「ほれ、切ったぞ。醤油につけて食ってみいな」


おお、サザエにアワビだ! やっぱ刺身には醤油だよなぁ。コリコリして旨いなあ。あ、ワサビが欲しいな。私の手持ちはもうなくなってしまったんだよな。


「ワサビある?」


「ねーよ! 知らねーのか? ワサビぁ高ぇんだよ!」


知ってるよ。でもヒイズルですら高いとは知らなかったな。


「ワサビはどこに行けば手に入る?」


「そりゃーアマギン村に決まってんだろ。なあ?」

「当たり前だよなあ! でもよお、こうやってサザエを刺身で食えるのも贅沢だけどよお? こいつにワサビなんざ入れてみ? 恐ろしく贅沢だよなぁ!」

「まったくだで! どこのお大尽だって話だでえ!」


「そのアマギン村ってのはヒイズルのどの辺り?」


「あー天都から北西ぐれえか? 確かあの辺って迷宮(ダンジョン)があったよなあ?」

「おーあるある。タイショー獄寒洞だろ? そこから近いんじゃなかったっけ?」

「あの辺って夏でも寒いらしいよなぁ? ワサビってのぁそんな所で育つもんなんかのお?」

「知らねーよ! 育つんだろうで? すげえでなぁ!」


ここからだとヒイズルの真反対ぐらいか。また一つ旅の楽しみができたな。アマギン村か……覚えておこう。


それにしても、肉はたくさんあるがせっかく海の目の前だってのに魚が少ないなぁ……魔力庫にあるやつはもう出したくないしなぁ……あ、オオグチを食えばいいか。


「普段魚ってどうやって獲ってんの?」


「そりゃあ釣るしかねぇわ。誰が海なんぞ入るかよ! なぁ?」

「おおよ! そりゃあたまにはサザエやアワビも食いてぇけどよ? 自力で獲ってまで食いたくぁねえぞ?」

「だけぇさっき二人して海に入りよったからなぁ、心中っち思うわなぁ?」

「まあ、なんだ。領主に目ぇ付けられんうちにさっさと出た方がええで?」


それもそうだが……しかし、そうもいかないんだよな。


「いや、それがな。今イグサを育ててもらってるとこなんだ。畳が欲しくてな。あ、腕のいい職人知らない?」


「はぁ? イグサだぁ? お前今何月だぁ思うとんだ?」

「わしらイグサ農家じゃのぉても知ってんぞ? 泣く子と天気にぁ勝てんけえなぁ」

「それに職人っつーてもよぉ? 大抵の奴ぁ連れてかれてんしよ? 残ってんのは……あ!」

「ん? 残ってる凄腕の畳職人って言やぁ……フォルノか?」


おお、やっぱ一人ぐらいいるよな? それがお約束ってもんだ。


「そういやいたなぁ。でもあいつって飲み過ぎて頭がイカれたせいで連れてかれんかったんだよな?」

「そーそー。まだ生きてんのか? 誰か知ってっか?」

「一ヶ月は見てねぇでぇ?」

「じゃあ死んどんじゃねえけ?」


「家は分かるか?」


生きていればどうにでもなるはずだが……


「俺が分かるわ。どうせなら性根を叩き直してやってくれよ。そのつもりなんだろ?」


「あー、まあそんな感じかな。じゃあ後で頼むよ。それならお礼ってことでもないけど、このオオグチ食べてみようぜ?」


「マジかあ! やったぜ!」

「ひょおー! お前気前いい男前だなぁ!」

「手前の分け前探す前ってか?」

「ぎゃーはっはっはぁーー!」


ん? 何が面白かったんだ? ヒイズルネタか?


「くすっ、あなた面白いわね。」


なんと!? アレクが笑ってる! つまりネタを理解したってことだ! ぐぬぬ……悔しいけど分からないからニコニコしてごまかそう……


「あ、それよりこいつって毒はどうなんだ? 食べて大丈夫なのか?」


「ああ、言い伝えによると大丈夫らしいぜ? 何でもよ……」


ヒイズルの建国王アモロ・フルカワの逸話だそうだ。西のアラカワ家との争いを制しヒイズル唯一の王として君臨した初代だが、長く続いた争いのために国中は至る所が荒廃していた。特にヤチロのような穀物をあまり育てていない土地はそれが顕著だったと。

そんな折り、この地を視察に訪れた初代国王は手ずから田を耕し、水を撒いたそうだ。それだけでなく、その日の食べ物にも苦労している村民のため自ら海に潜り、苦闘の末にたくさんの魚だけでなくオオグチまで獲ってきたと。


傷の心配をする家臣や村人をよそに国王は言ったそうだ。

『こやつが生意気に大口を開けて余を笑いおった。だから睨み返してやったら口を閉じおっての。溺れるかと思うたわ。だからやむを得ず丸ごと引っこ抜いてやったわい』と。


それ以来このやたらデカい貝のことを大口と呼ぶようになったとか。そのまんまじゃないか……大口ねぇ。ノヅチよりよっぽど小さいっての。

でもよくこいつに噛まれて生きてたな……やっぱ国を統一するような男は普通じゃないんだろうなぁ。すごいもんだ。


「まあ、毒がないんならいいや。じゃあ開くから捌くのは任せたぞ?」


「お、おお。任せとけ!」


『氷壁解除』

『金操』


「殻は返せよ。あと、魔石があったらくれ。それ以外は全部食べようぜ。」


案外魔石じゃなくて真珠があったりしないかな。しないよなぁ……




「ピュイピュイ」


おっ、いいタイミングでやって来たね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次は神聖モテモテヒジカワ王国のマサーキ一世でしょうか。
[一言] 名前がまんまwwww
[一言] 名前がまんまwwww
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