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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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279、入水自殺騒動

海底に沿って海辺へと泳ぐ。アレクの手を引きながら。


そして波打ち際へ浮上。はぁ、楽しかった。


『乾燥』

『換装』


「カース、さっきはありがとう。いきなり上から降ってきたから驚いたの。」


「いやーごめんごめん。あれって僕のせいなんだよ。大きな貝がいたじゃない? あいつを獲ったんだけどさ。その名残り、あいつが悪いんだよ。」


「そうなの? 変な貝もいるのね。でもあんな大きい貝を獲っただなんてさすがカースね。凄いわ。」


ぬふふ。アレクに褒められると嬉しいなぁ。ん? あれ? 海岸に何人もの人が集まっているぞ。何やらざわざわしているが……あっ、こっちを見て騒いでる。まさかここ漁業権が必要だったとかないよな?


「おいお前ら! 大丈夫だったか!」


ん? どういうことだ?


「早まるな! 生きてればきっといいことだってあるんだ!」

「そうだ! 所詮は一夜のことでしかない! お前たちはまだ若い! 明日があるんだ!」

「でもよかったぞ。土壇場で思い直したんだな? さあ、こっちで暖かいものでも食べないか?」


んん? 何かすごく勘違いされてないか?


「ちょっと待ってくれ。俺達はここで泳いでいただけなんだが……」


「ああ、分かってる。分かってるとも。もう何も言うな。さあ、こっちに来い。浜鍋やろう」

「あの領主に妻を弄ばれたのはお前らだけじゃない。みんな同じなんだ。だから元気を出せ。な?」

「ほら、始めるぞ。そういえばお前ら見かけない顔だな。まあいいや。来い来い!」


領主に妻を弄ばれた? ここの領主はそんなことしてんのか……アレクがそんな目に遭わされて、それを悲観して心中しようとしたとでも思われたのかな?


「せっかくだからお呼ばれするよ。で、領主ってそんな酷いことすんの?」


おお、大きい鍋だ。中身はまだ空っぽか……浜鍋って言ったよな。すごく興味深い。


「ああ、あの領主は色と欲に狂ってやがる。ちょっといい女を見たらすぐ引っ張り込みやがるんだ」

「不幸中の幸いなのが、ほとんどの場合一夜で済むんだ。あの色ボケ領主はどうやら初物が好きらしくてな、翌朝にはそれなりを金を持たされて解放される」

「だがそうでない場合だってあるぞ。その子のように美しい場合だ。あの野郎が飽きるまで拘束されちまう。もしかしてお前らは今のところ無事なのか?」


「ああ、ヤチロには一昨日来たばかりだからな。それよりこの鍋の中身はまだか? 何ならこっちで用意してもいいが。」


「あー? 見ねぇ顔だと思ったら他所から来たのか?」

「へー、どこから来たんだ? その感じだともしかして外国か?」

「あー、言われてみりゃあ服装が違うもんなぁ。メリケインか?」


なぜローランドを候補に入れないんだよ。ヒイズルでは外国と言えばメリケイン連合国のことなのか?


「ローランド王国だよ。二ヶ月ぐらい前にオワダに渡ってな。それから歩いて旅をしてるところさ。」


あれ? さすがに二ヶ月は経ってないよな? 一ヶ月半ぐらいかな。


「なんとローランドかよ! よく来たなぁ!」

「それがなんで死のうとしてたんだ?」

「よっぽどの事情があるんだろうぜ……もういいじゃねえか。食おう! ガンガン食おう!」


やっぱりこいつら私の話なんか聞いてないな。別にいいけど。


「お前らこれ捌けるか?」


サザエとアワビだ。刺身で食べたい気分なんだよな。浜鍋も気になるけど。


「こっ、こりゃあ!?」

「サザエじゃねぇか! それにアワビまで! 一体どうやって!?」

「あっ! まさかさっき潜って獲ったんか!?」


「正解。俺たちは別に心中しようとしてたわけじゃないぞ。遊びで潜ってこいつらを獲ってただけだ。それからこれもな?」


魔力庫からパールシャコを出す。改めて見ても大きいよなぁ……


「げえっ! こいつぁ大口(オオグチ)じゃねぇか! マジかよ!」

「嘘だろ! どうやったんだよ!」

「もしかしてお前らってかなり凄腕なのか……?」


へぇー、オオグチって言うのか。まんまだな。


「やっと分かったようね。彼はカース。『魔王』と言えばローランド王国では知らない者はいないほどの強者よ。あ、私はアレクサンドリーネよ。」


おお、やっとアレクが喋ったかと思えば……こいつら信じるかな?


「魔王……? マジで……?」

「どんだけだよ……ヒイズルで言えば誰だ?」

乱魔(らんま)キサダーニとか?」


「でも大口を潜って獲ってこれるかぁ?」

「さ、さあ……普通誰もやんねぇし……」

「そんじゃあ傷裂(きずさき)ドロガーか?」


「分かるかよ……まあいいや! やるぞ! 食うぞ!」

「お、おおそうだな。食おう食おう!」

「酒はどうだ? イケるか?」


何やら話し合いをしていたようだが、結局どうなったんだ?


「おう飲む飲む。いただくよ。」

「悪いわね。いただくわ。」


「ほれほれ、まあ飲めや!」


おっ、また人数が増えた。


「待たせたな! 持ってきたぜ!」


おお、やっと材料の到着か。


「よっしゃあやるぜ! 味付けは任せとけ! ヤチロの味を堪能させてやるぜ!」

「そんじゃあ俺はこいつら捌いてやるよ!」

「大口はどうすんだ? 食うのか?」


「ああ食べようぜ。でも後でいいだろ。まずはある物から食べようぜ。よし、乾杯!」


なんで私が乾杯の音頭をとってんだよ。


「かんぱい!」

「ヤチロにようこそ!」

「いよっ魔王!」

「はぁ? 魔王だあ!?」

「いいから乾杯だぁ!」


しまったな。コーちゃんも呼んであければよかった。伝言(つてごと)届くかな……

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― 新着の感想 ―
[一言] 随分、人がいい人たちですね。 早く呼ばないとコーちゃん怒りそう。
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