170、番頭ラウミ・アガノ
ぞろぞろと群れてる青紫烈隊に全弾ぶち当てた。即死はしなくても内臓や脳みそをシェイクしてやるよ。
「あっ、ごめんごめん。流れ弾が飛んでしまったか。悪い悪い。大丈夫か番頭さん?」
「なかなか……大胆なことをしますね。闇ギルドも顔負けですよ。せっかく全員で袋叩きにはせず公正な勝負をしてやっていたのに。お前達! やってしまいなさい!」
「何言ってんだお前? 一人でよ。」
番頭の奴、生意気にも私の狙撃を防ぎやがったか。しかし、周りの状況は見てないな? お前以外全員が倒れてるんだぜ? 観客も巻き込んだ気もするが知ったことではない。
「なっ!?」
キョロキョロと辺りを見渡す番頭。
「バカなっ!」
死んではいないだろうが立っている奴はいない。私の徹甲弾をまともに食らったんだ。貫通はしてなくても衝撃はかなりのものだろう。あー頭が痛い……くそ……
「来いよ。最後は一対一で決着をつけようか。」
「くっ!」『闇雲』
『風操』
そんな目眩し魔法なんか効くかよ。吹き散らしてやった。ん? 番頭の足元に広がっているのは……魔法陣?
「では魔王さんさようなら。今日のところは負けておいてあげますよ。」
『落穴』
アレクお見事!
深さはない落とし穴が地面に描かれた魔法陣を消し去ったではないか。
「ちっ!」『飛翔』
『氷壁』
「飛んで逃げる気か? 無駄だ。知らなかったか? 魔王からは逃げられないぞ。」
常識だよな。
「わ、私にこんなことをして、故郷の家族がどうなっても!」
「なんだ? そこはまだ調べてないのか。まだまだだな。うちの両親を狙ってみろよ。酷い目にあうぜ? 死ねたら幸運ぐらいのな。それにクタナツ者には脅しも人質も効かないっての。さて、大人しくあれこれ歌ってもらおうか?」
「ふ、ふふ、ふふふ……これで勝ったつもりですか……このエチゴヤ第三番頭ラウミ・アガノを舐めるなぁぁぁぁぁーーーーーー!」
『金操』
「いいもん持ってるじゃないか。没収だ。」
魔力庫から何かを取り出して飲もうとしやがったから奪ってやった。そんな隙は与えないぜ?
「くっ、味な真似を……コソ泥が……」
「心配するな。お前は殺さないさ。たぶん長生きできるぜ? 安心して観念しろ。」
「ぐっ、くっ、く……くっそおおおおおおおーーーーー!」
また何か出しやがった。黒くて大きな石……魔石爆弾か!
『氷壁』
バカが! 一人で死ね!
立てた土管のように上だけを空けた氷の壁だ。爆風を上に逃がす!
「アレク、僕の背後に!」
「ええ、カムイもいらっしゃい!」
「くっくっく……魔王……エチゴヤを舐めるんじゃないぞ……せいぜい首を洗って待っていろ……魔王は勇者には……か」
轟音をあげ、爆炎が空に向かって立ち登った。くそ……また情報が得られなかったか……
地面に大穴を穿ち、番頭は消えた。最後は自爆かよ。そこら辺に転がっている紫の奴らはまだ生きてるだろうが、どうせ大した情報持ってないんだろうな……せっかく幹部っぽい奴と出会えたってのに。上手くいかないもんだ。まあいい……後日あの船を改めてチェックすればいい。
とりあえずかなり疲れたから休みたいが……そうはいかない。
「さてと……会長よぉ。これで終わったと思うが、賭けた金についてはどうなるんだ?」
「それはこちらの関知することではない。お前達同士で決めたことであろう。」
「だろうな。まったく、ギルドはいい商売してんな。これで目障りなエチゴヤの影響力をかなり削ぐことができただろう?」
私達が負けてたとしてもエチゴヤに協力したとして恩を売ることができたんだろうしな。
「まあいいや。エチゴヤの残党は俺がもらうからな。」
「好きにすればよかろう。あまりオワダで暴れてくれるなよ。」
倒れている紫の鎧の奴らから一人ずつ鎧を剥ごう。腐れ騎士四人組と命だけは助けてやった紫の奴にも手伝わせる。こればかりはこいつの知識が必要だよな。
「とりあえず全員の兜だけ外しておけ。」
古い型とは言え同じムラサキメタリックの鎧を着用してるんだから外すことぐらいできるだろう。
それにしても疲れた……魔力は半分も残ってない。二割以下か……これだけの魔力を費やしても奴らの大半は生き残ってるんだよな。まったく、割に合わない奴らだぜ……




