158、ナマラとクロマ
『不死<しなず>の黙示録』を書かれております『きしかわ せひろ』さんより25件目のレビューをいただきました!
ありがとうございます!
よし、こんな時ほど落ち着いて状況を整理しよう。やるべきことは……
・ナマラと旦那の弔い。旦那スケルトンは普通に黙って立っていて不気味なんだよな。
・船内の再調査。操舵室に再び戻らなければならない。大事な情報が隠されているからな。
・船そのものの収納。内部から生物を一掃できれば収納もできるのだが……
・ムラサキメタリックの収納。殺した四人と生きてる一人からムラサキメタリックの鎧を剥いで収納する。
・エチゴヤへの殴り込み。ここに行かないと次の手がかりがなさそうだもんな。
・腐れ騎士四人と生かしておいた青紫烈隊、そしてシーカンバーの奴の使い道。ノリで一億ナラーもくれてやったが果たして本当に役に立つのだろうか?
・アレクの容体。外傷はないから安心はしているが、目覚める時まで側を離れるつもりはない。あれだけの騎士を食い止めていたんだからな。魔力がほぼ空っぽになっているのも不思議はない。
エチゴヤを取り逃そうが何が起ころうがアレクが最優先だ。
そうなると……今この場でできることは……
「青紫烈隊の死体をここまで運んできてくれ。」
護衛の奴に指示を出す。
「あ、ああ……」
「お前はそれ脱げ。没収だ。」
瀕死ではなくなった青紫烈隊の奴は焦って鎧を脱ごうとしている。それにしても本当に厄介な鎧だよな。今回は五人しかいなくてよかったが、二十人もいられると魔力が足りなくなるところだった。もっともその時は違う方法を考えるだけだが。
「ここでいいか……?」
「よし、ご苦労。」
目の前にムラサキメタリックの鎧を纏った死体が並ぶ。
「そんじゃあお前は仲間の鎧も脱がせな。全部没収だ。」
どうもこの鎧って脱着が難しそうなんだよな。こいつら自身は換装の魔法で一発なんだろうけどさ。
「お前は暇だろうからそこらの死体から金でも抜いてろ。今さらだけどお前の名前は?」
「あ、ああ……バチオだ……」
裏切り護衛の名前はバチオね……
さてと……あいつが鎧を脱がせるにはもう少し時間がかかるだろうな。いくら高級ポーションを飲ませたからと言ってもろくに体を動かせまい。その間に私はアレクを。
カムイ、ご苦労だったな。アレクを守ってくれてありがとよ。
『浄化』
「ガウガウ」
お前にはこの後で大暴れしてもらうからな。期待してるぜ?
「ガウガウ」
さて、アレクに魔力ポーションを飲ませよう。もちろん口移しで。ふふふ。
ふふ、アレクったら。意識がないくせにきっちり反応するではないか。悪い子だ。ならば私も応えよう。魔力ポーションおかわりだ。
「カース……?」
「起きたね。アレクのおかげでここが片付いたよ。ありがとう。」
「名簿は……あったの?」
「なかったよ。まあそれについては後でアレクの協力が必要かな。それより先に……」
ナマラの遺体を取り出す。
「バチオ! クロマ! ナマラを弔うぞ! 集まれ!」
「おぉごぉぉぉ……」
「ナマラ様……」
やっぱこのスケルトンすごいな……ナマラだと分かるのか……
『お前が壁に刻んだメッセージは受け取った。後は任せろ。』
アンデッドに伝言が通じるとは思えないが、ほんの気持ちだ。
「あぉあががぉぉ……」
四肢のないナマラを受け渡す。骨しかないだろう腕で受け取るクロマ。必死にナマラを抱きかかえている、ように見える。
「クロマ様! ナマラ様! 俺、俺のせいで! シーカンバーが! ナマラ様のお命が……!」
ごつごつした浜辺に這いつくばるバチオ。一瞥もしないスケルトン、クロマ。
「長い間海の底でよく耐えた。お前たちにパイローナ神の祝福があらんことを。」
『火柱』
ナマラとクロマ。二人とも来世でまた会えるといいな。私とアレクは合掌をし、そして唱える。
『ナマス・アミターバ』
「ナマス・アミターバ」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
「ぐおぅぅぅ……ナマラ様……クロマ様……」
およそ二分後。二人は灰すら残さず消えた……いや、あれは……クロマのごっついネックレスのトップか。私の火柱でも焼け残るとは……
「いよぉー旦那ぁー! すげえ火だったなー!」
「こんな所で葬式ぃー!? 余裕じゃーん?」
「ついでにこいつらも焼いてくれよぉー? 証拠隠滅いんめつぅ!」
「つーかマジで騎士長死んでたし! マジうける!」
「それはお前らがやれよ。この件を揉み消すこと、俺たちをオワダから無事に出発させる約束で一億ナラーくれてやったんだからな。」
「あーやっぱりー?」
「でもよー、だりーよなー?」
「いーじゃん、全部海に捨てよーぜ? 魔物が食うだろ?」
「さいよー! いーアイデアだぜー!」
ま、いっか……
不死<しなず>の黙示録
https://book1.adouzi.eu.org/n5193ez/




