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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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153、海の魔物

吸盤だらけの足を何本も伸ばしてくるが無駄だ。私の風球は破れまい。お前は中、私は外だ。このまま海上まで道連れといこうじゃないか。




ついに頭まで出てきたぞ? 明らかに船より大きいじゃないか……どこに入ってたんだよ……


ん? 墨を吐きやがった。風球内部がことごとく真っ黒く染まる。

げっ!? 風球に穴が!? 溶かしやがったのか!? くそ、沈む!


『浮身』


ふう……危なかった……

仕方ない。しばらく浮身のみで行こう。



くそ、タコめ……どこに行きやがった……


『魔力探査』


あっちか……


タコどころか周囲一帯まで真っ黒になってしまった。暗視が効かず何も見えない……タコのくせに舐めた真似しやがって……

視界を潰したぐらいで私に勝てると思ってんじゃないぞ?


『落雷』


私を中心に雷を放つ。いや放つまでもなく、勝手に広がっていく。威力は落ちるがそこら辺にいる以上絶対に当たるだろう。ん? タコの魔力が消えた……?


あの程度の魔法で死んだとは思えないが……ぐがっ!? か、顔に、吸盤が! くそっ! 苦しい! 息ができない! くそっ、ヤバい! このままでは……


いかん、こんな時こそ落ち着かなくては……このケースはクラーケンで経験済みだ。魔力庫からクリムゾンドラゴンの短剣を取り出して……奴の足に突き立てる!

そして『落雷』


よし! 離れた! あー苦しかった。いくら水中で呼吸ができても、あのように顔ごと塞がれたらどうしようもないもんな。口の周りには自動防御を張ってないんだから。


『水操』


まずは海水を流して視界をクリアにする。船は、少し沈む程度で済み、再び浮上を開始している。むっ、タコはあっちか、再び魔力を感じるようになったぞ。さては、あの墨に魔力のジャミング的な効果まであるってことか? 小賢しいな。


だが、かなりの電撃を流し込んでやったからな。まだ抵抗する元気はあるか?


『ピュイピュイ』


え? 他にも魔物が来てる?

強めの落雷を使ったからかな。


『魔力探査』


なんだこれ? めっちゃ来てるじゃん! 百や二百じゃきかないぞ!? 嘘だろ!? クソが! タコに構っている場合じゃない! 少しでも浮上しないと!


ええーい! タコの触手が鬱陶しい! ここぞとばかりにまとわりついてきやがる! 何本あるってんだ!

先に片付けるしかないか……キモいから嫌なのだが、足裏ジェットで頭に体当たりしてからの……『徹甲弾』

頭をブチ抜いてやった。いや、実際は腹なんだっけ? まあいいや、そんなことより零距離射撃は効くだろ? 素材は無視だ! しかし……もう来やがった! およそ半数は大タコの死体に食らいついているが、残りが私に突進して来やがる! これは……ウツボか!? 体長は四から六メイル程度だが数が多過ぎる! こんな集団でいたら周囲からたちまち餌が無くなるだろうに!

くっ、ギザギザの歯が自動防御に食い込みやがる……さすがにそのぐらいではビクともしないが、数が多いからな……噛み付く度に電撃を流してやってるがキリがない! 海面はまだかよ!




えーい! ちくちくちくちくと! 鬱陶しい!

こっちは『浮身』『水中気』『自動防御』『暗視』『落雷』と同時にいくつも魔法を使ってんだよ! 短剣を使おうにも、手足に噛み付いたウツボが邪魔で満足に振り回せない。魔力にはまだまだ余裕はあるが、制御にいっぱいいっぱいで頭が煮えそうなんだよ!


だが、だいぶ明るくなってきた!

海面は近いぞ!


そうと分かれば!

後のことなんか知るか!

ぶっ放してやるよ!


『轟く雷鳴』


何のことはない。私を中心に視界全てを覆い尽くすほどの雷撃を放ってやった。もちろん魔力は特盛だ。あーくそ、頭が痛い!

だが、ウツボどもは沈黙した。これだけもの魔力を使ってしまったんだ。本当の大物が来ないうちに海面に上がらなければ……











「オワダの闇ギルドって人質が通用するのね。」


「うちは……闇ギルドと言っても、積極的に法を犯すような真似はしていない……だから結婚もできたし、子宝も授かった……」


「ふぅん。別にいいけど。あなたの気持ちも分からないでもないし。私だってもしカースが人質に取られるようなことがあったら、どんなことをしてでも助けたいって思うでしょうよ。」


「当然だな……」


「でも、それじゃあダメなのよ。私達が育った土地ではね……人質を取られるようなことがあれば、人質ごと敵を殺せって教わってるの。そして私達はそれを実行できる……でも、その人質がもしカースだったら……あり得ないことだとは思うけれど。」


「恐ろしい所だな……それがローランド王国では当たり前なのか……」


「違うわよ。辺境フランティア領の中で最も魔境に近い街、クタナツでのルールよ。私達は敵対者と取引なんかしないってことね。それこそが私達の身を守ってくれる盾なのよ。」


「そうだな……エチゴヤが、人質をまともに扱うはずがない……俺が、俺が愚かだったんだ! 妻と! 娘かわいさに! シーカンバーを裏切っちまったんだからな!」


「そうね。あんな優しそうなおば様を裏切って、のうのうと生きていけるわけないわね。」


「ナマラ様は……あれで恐ろしい方だ……だった。だが、夫であるクロマ様を亡くされ、同じ年に一人息子のイオ様を病気で失い……すっかり丸くなってしまわれた……」


「闇ギルドについては詳しくないけど、舐められたらお終いなんでしょう? あなた達の世界は。」


「あ、あぁ……敵対組織に対しては当然だが、友好組織にだってヌルい対応をしていれば……付け込まれるだけだ……」


「ふーん。あっ、カースがだいぶ近付いてきたわ。少し高度を上げるわよ。」


そう言ってアレクサンドリーネは鉄ボードを上昇させるのだった。

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