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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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132、食事中のひと時

身なりのよい紳士が何やら叫んでいるな。


「貴様この儂を誰だと思っておるか! ヨシノ家の当主カシオなるぞ! この儂の羽織に汁なんぞ垂らしおって! どう責任をとるつもりだぁ!」


「大変申し訳ございません! ですが……お預かりしてからお返しするまでに汁気のある場所は通っておりませんし、保管場所も安全です。これは何かの間違いではないかと……」


「えぇーい黙れ黙れ! この後に及んで言い訳なぞ聞きたくもない! どうやって責任を取るのかと聞いておるのだ! 自慢の羽二重にまでシミを作りおって! 切り餅の一つや二つでは済まんぞ!」


切り餅って何だ? そして今の話を聞いて分かったことがある。餅だ。ヒイズルには米がある。だから餅もあるし、きっと日本酒のような酒もあるのだろう。東の島国って最高じゃないか。そうなると、ちょっと助け舟を出してやるかな。助け舟……ここはヒイズルだしな。



「ようオッさん。ご機嫌どうだい? 自慢の羽二重だって? すっごい興味があるんだけど見せてくれないか? かなりの上物だよな? すごいな。」


「何奴か!? 貴様のような子供に羽二重の価値が分かると言うのか!? 生意気な口をききおって!」


ほほぉ。絹の裏地なのか。これはいい手触りだ。だが、私のシルキーブラックモスのシャツだって負けてないぜ? それよりも……汚れはこれか……



このオッさん……無茶言いやがるぜ……

明らかにここ数時間の間についたシミじゃないじゃん……言いがかりすぎる……


まあいい。私の洗濯魔法にかかれば……


(浄化)


ゴブリンの腰布でさえきれいになるんだぜ?


「どこも汚れてないな。さすが羽二重、いい光沢と手触りだ。いい品なんだから大事にしろよ?」


「何だと!? どこがっ……なっ!?」


「きれいな裏地だな。どこの名人の仕事だい? やっぱりアンタほど偉大な男にはこれぐらいの服でないと釣り合わないんだろうな。いや、感服したよ。」


「私もそう思うわ。おじ様ほどの方でないとこの羽織は似合わないのね。生き様が現れてるかのような佇まいだわ。」


アレクまで参戦しちゃったよ。でも、ナイスアシスト。しかも羽織って知ってるのね。さすがアレク。


「ほほう? お嬢さんにも分かるか? これは名人フグイ・クロモンの作なのだ。あえて粗野に作った外側に対して、内側は天女の肌触りもかくやというほどの羽二重だ。儂もこれには大枚を注ぎ込んだものだな。」


ふふっ。アレクに褒められてすっかり気をよくしてやがる。ちょろいもんだぜ。ん? このオッさんが連れてる女……どこかで見た顔だな……


「ぬっ!? 貴様ぁ! ここで会ったが百年目! 神妙にお縄を頂戴しろぉ!」


あっ、昼間の赤い鎧の女騎士か。愛人かな?

艶やかな着物なんか着てやがるから分からなかったぞ。


「お前なぁ……部下から話を聞いてないのか? 俺は無実だぞ? それから俺のこの身分証を偽物呼ばわりした落とし前はどうする気だ? お前の言い草はローランド王国国王陛下を偽物呼ばわりしたことと変わらんぞ?」


少し暴論だが、あながち的外れでもない。


「ん? ササラ、どうした? その者を知っておるのか?」


「はっ、父上。この者昼間にかのクウコ商会のナルタ殿に無礼を働いた狼藉者でございます! 何のかんのと言い逃れをしておりますがここは私にお任せを!」


私の言ったことが全然届いてない……人の話を聴かないタイプか……つーか父上って言ってたな。この親にしてこの子あり、か。


「何と!? 先ほどそなたが申しておった不届き者か! ふぅむ、よもやこのような子供がなぁ……人は見かけに寄らぬものよ……今なら間に合うぞ? 大人しく縛についてはどうだ?」


「だーかーらー、人の話を聞けって。これが見えないのか? それともアンタまでこれを偽物と言うのか? じっくり見てみなよ。」


「ローランド王国……のっ!? こ、これは……ほ、本物だ……」


「父上っ!? そんなバカな! よく見てください! このような狼藉者がそんなはずは!」


ならばここで仕掛けを初公開といこうか。


「目の前でじっくり見てみるか? ほれ、受け取れ。」


女騎士に手渡してやる。


「ササラ受け取るなっ!」


「えっ? はうぅっ!?」


止めるのがちょっと遅かったね。女騎士ちゃんは痺れてしまったようだ。


「さすがアンタほどの男なら知っていたか。本物だと分かったな? そういうことだ。俺は先代国王陛下の頃よりこの身分証を預かっているし、今代のクレナウッド陛下の戴冠式にも参列した。こっちのアレクサンドリーネも同じだ。アンタに免じて今回の愚行は許してやるよ。しっかり娘の教育をしておくんだな? 部下にも舐められまくりだったぞ?」


「ぐっ、ぐうぅ……」


「一応言っておくが俺らがヒイズルに来たのはただの物見遊山だ。余計な気をまわすなよ? だが、文句があるってんならいつでも相手になるぞ? 性根を据えてかかってこいよ?」


「あ、ああ……」


分かってくれたようで何よりだ。やはり人間は対話が大事だよな。さて、そろそろメインディッシュが運ばれてくる頃か。楽しみは尽きないな。

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― 新着の感想 ―
[一言] あ~どうりで覚えがなかったわけだw
[一言] やっと最新話まで追いついた!面白かった! 坊っちゃんといい女騎士といい笑かしてくれるね しかし千話超えって凄い! こちらもミッドナイトの~~削除しました~~の削除してない版も楽しみにしており…
[一言] 身分証って他人が触ると痺れるんでしたっけ?
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