128、いつものカース
「待てや! お前らこれは正式な決闘だぞ! それを横槍入れるってのかよ! それでもヒイズルの男かこらぁ!」
おおー、ジンマが間に入ってくれてる。こいつは船の時からいい奴だったなあ。自分だってロクに寝てないだろうにわざわざ来てくれて、ありがたいことだ。
「ざけんなぁ! どこが正式な決闘かいやぁ! あんな女が立会人じゃとぉ? そんなん認められるけぇ!」
「そうじゃそうじゃあ! だいたいあのガキが何が卑怯なことしたんじゃろおが! でなきゃあ坊ちゃんが負けるわけねぇ!」
「ギルドの職員立会じゃねぇんなら正式もクソもあるかあ!」
「そねぇ舐めた真似したガキぃ生かっしょけるかいや! てめぇごとぶち殺すぞぁあ!?」
「何だと? お前いま俺に向かってぶち殺すって言ったな? 俺に言ったんだよな? このパープルヘイズのジンマに向かってよう?」
おっ、なんだか風向きが変わってきたぞ? つーか私はどうしよう。私だって眠いってのに。
「それがどうしたなぁ! ちっと天都で名ぁ売れちょおからって調子ん乗ってんじゃねぇぞこらぁ!?」
「たかが六等星の分際でクウコ商会に楯突くってんかぁ!?」
「二度とオワダに来れねぇようにしてくれんぞぉ!?」
「おらぁ! やんならかかって来いやぁ! 俺らに勝てっと思っちょんかぁ!?」
こいつらもすごいな……どんだけ調子に乗ったらこんな言葉を吐くことができるんだ? 我が世の春すぎるぞ……
おやっ、ジンマが剣を抜こうとしてる。それはよくないな。
「待ちなジンマ。さすがに巻き込むわけにはいかんな。まあ黙って見ててくれたらいいさ。お前の気持ちは嬉しいぜ。」
「おま、魔王……正気かよ……」
「そーそー! 黙って見ときゃあええんだよぉ! オワダで俺らに逆らってもええことねぇでぇ!?」
「ぎゃはは! 日和った日和った! 引っ込んどきなぁ!」
「あんなガキが魔王だあ!? パープルヘイズのジンマも焼きが回ったなぁ!」
「ほーらガキぃ! 有り金全部出せやぁ! そんで素っ裸になって命乞いしろやぁ! そしたら命だけぁ助けてやんぞぉ!? 命ぁ大事にせえよぉ!?」
「一応言っておくぞ? そこの坊ちゃんの命は助けてやる。一億ナラーほど払ってもらわんといけないからな。だがお前らは別だ。一ナラーの価値もない。五秒待ってやるから逃げろ。さもなければ四人とも殺す。」
「ぎゃははははぁ! かっこええこと言ってんぜぇ!」
「ぐへへへぇ! 殺すだってよぉ!? 人ぉ殺したこともねぇくせによぉ!」
「笑わせんなよ! 腹がいて『狙撃』
「誰が殺したことがないって?」
こいつらが呑気に笑っている間に五秒が経過した。だから四人とも額にライフル弾を撃ち込んだ。スパッと貫通してしまったが、見物人に被害は出さない。
おっ、現金をばら撒いてやがる。魔力庫をそっちの設定にしてたのね、いただき。替えの下着とか服、その他の物は無視だ。
「ま、魔王……お前……」
「というわけだ。お前が気にすることは何もないさ。心配ありがとな。さて、そこの坊ちゃんよ? 負けを認めて金払え。あれだけの怪我を二回も回復させたんだ。もうこれ以上薬は飲めないだろ?」
「あ……そ……んな……まさ……か……」
うわっ! こいつ漏らしやがった! マジかよ……げえっ! 地面が茶色い! 臭っ! 勘弁してくれよ……
しかし意外にも見物人から笑いは起こらない。妙だな? クタナツだったら大笑いのはずなんだが……
まあいいや。どっちにしても臭いのは困るから『浄化』
「ほら、今のはサービスだ。さっさと金出しな? 一億ナラーぐらい魔力庫に入ってんだろ?」
「あ……うう……」
「一億ナラーだぁ!? お前どんだけ賭けてんだよぉ!?」
アレクを賭けた勝負なんだから一億じゃあ安すぎるんだけどね。
「うわぁーーーんパパぁーーー! 助けてよぉーーー!」
泣き出しやがった……マジで勘弁してくれよ……『消音』
ふう、静かになった。『水壁』
また漏らされたら堪らないからな。閉じ込めておこう。
「ほら、早くしろ。せっかく命が助かるんだから大事にしろよ? お前のせいで四人死んだけどな。」
「あばば……ごぼぼっ……」
よし、やっと何か出しやがったな。『水壁解除』ただし頭だけ。
これは何だ? 白金色の大判って感じかな?
「おーいジンマ。これって何? 一億ナラーの価値はあんの?」
「お、おお……そいつぁ白金大判だ……小判千枚分、一億ナラーだ……」
「なるほど。ありがとよ。よし坊ちゃん、これに懲りたら他人の女に手ぇ出すんじゃないぞ?」
返事はない。まあもう用なんかないんだけどね。ではギルド内に戻ろうかな。さっきの計算が終わってる頃だろう。
おっと、死体を放置するのは良くないな。すごく嫌だがここは魔力庫に収納しておこう。そのうち海に捨ーてよっと。




