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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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124、悪い誘惑

そんなこんなで出港から十日ほどが過ぎた。あれから昼に私が起こされるほどの魔物は来ていない。そして、船長によるともう二日ほどでオワダ港に着くそうだ。およそ二週間と聞いていたのでいいペースではないだろうか。風や海流も関係するんだろうしね。

陸が近いとなると、そこまで大物も襲ってこないだろう。もうすぐヒイズルか。ドキドキしてきたな。初の海外上陸か。

もう二つ寝ると、ヒイズルだ。


そんな夜番が始まった。


「ねぇカース。ヒイズルって楽しみね。」


「だよね。着いたらまず何か美味しい物が食べたいね。」


「ピュイピュイ」


「ガウガウ」


コーちゃんは酒だって? 分かってるって。カムイは肉だろ? 分かってるさ。


今夜は風も波も穏やか。それでも船はちゃんと進んでいる。やるもんだね。




「いよぉ、ちょいと話があんだけどよ?」

「へっへっへぇ、まあ聞けよ?」


こいつらはあまり見ない顔だな。昼番の奴らかな。


「何だ? あんまり持ち場を離れるんじゃないぞ?」


だらしなさ満点の喋り方と装備だな。


「おめぇこの船の積荷が何か知ってっか?」

「へっへっへぇ、一儲けしようぜ?」


「知らんな。」


知るわけないだろ。そもそも積荷が何であろうと依頼は依頼だ。


「噂じゃ違法奴隷らしいぜ?」

「それにヒイズルじゃあご禁制のお薬もたんまりだとよ?」


「それがどうした?」


「おおーっと、勘違いすんなよ? 違法奴隷ってのぁローランドの法での話だからよ? 一度ヒイズルに入っちまやぁ違法でも何でもねぇんだからよ?」

「逆にお薬ぁこっちじゃ違法ときたもんだ。意味分かんねぇぜ?」


まさかエチゴヤ絡みの違法奴隷なのか? ローランドの民を積んでやがったらこの船沈めてやるが……


「で? 何が言いたいんだ?」


「へへっ、おめぇローランドじゃあちったぁ知れてん冒険者なんだろぉ? 俺らぁと組もうぜ? 俺らぁお薬が欲しい。おめぇはローランドの奴を助けるなり売り飛ばすなり好きにしろや。どうよ?」

「いい分け前だと思うぜぇ? 軽く一億ナラーにぁなるからよぉ」


「なぜ俺らなんだ? パープルヘイズに声かけた方がよっぽど確実だろ?」


どうせ私達なら後腐れがないからだろうけどね。


「けっ、あいつらぁダメだ! クソまじめなだけでよぉ? こんな話なんかできるかよ!」

「そーそー。冒険者のくせにまじめぶりやがってよぉ。せーぜー小銭でも稼いでろってんだ!」


パープルヘイズの仕事ぶりが堅実なのは私も納得だ。そんなあいつらが真面目に仕事をしてるってことは……この船が違法なことをしてるって話は嘘くさいな。


「よく分かった。正確な情報をくれるって約束するなら協力するぜ。俺は悪い奴が許せない性質(タチ)なんでな。


「おおっおうっぼぉっ!?」

「へっ、へっへへっぐぉがっ!」


よーしかかった。そんじゃあ『麻痺』


「てっ、てめっ……なにをっ!?」

「うごっ、けねぇ……てっめぇ……」


おまけに『水壁』

頭だけは出しておいてやるよ。


「じゃあアレク、ここをお願い。ちょっとこいつら連れて船長の所に行ってくるから。」


「カースも甘いわね。こんな奴らを無傷にしておくなんて。」


「ははっ。今のところはね。」


よしカムイ、アレクを頼むぜ? コーちゃんは一緒に行こうねー。


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」




船長室は……ここか。まだ深夜ではないが休んでるだろうな。悪いが起きてもらおう。強めにノックしてもしもし。



「なんじゃあ……緊急かぁ……」


眠そうにのそりとドアを開けた船長。


「お休みのところをすまんな。実はこいつらがな……」


事情を説明する。この二人はぎゃーぎゃーうるさかったので消音をかけてやった。




「と言うわけだ。まさかローランドの者を積んだりしてないよな?」


「当たり前だぁ。そんな割に合わねぇ事すっかよ。ウチぁエチゴヤたぁ違うんだからよ!」


「約束できるな? 俺に嘘をつかないと。」


「当たり前じゃあっうっど……ちっ、契約魔法ってやつかぁ……洒落た真似しやがって。うちの積荷ぁ魔物素材と鉄鉱石ぐらいじゃあ。」


「よーく分かった。つまりこいつらが出鱈目コイてたってわけだな。せっかくだから一緒に尋問しようぜ。」


「お、おお……」


『消音解除』


「ほれ、もうお前らの企みはバレたぞ? 本当の狙いを言ってみな?」


「う、うぐ……」

「ぐぬ、ぬぅ……」


ふむふむ。


狙いが積荷なのは本当だが、中身までは知らなかったと。自分らの魔力庫に詰めるだけ詰めたら私に罪を擦りつけるってわけね。尋問魔法を使われたらバレるだろうから、そのまま私達を海に沈めるつもりだったと。なんと恐るべき浅知恵……

穴だらけすぎる……でも、今まではこの手で通用してたんだろうな。都合のいいスケープゴートがいた時だけ実行していたそうだし。


「さて、船長からは何か聞いておくことはあるかい?」


「そうさのぉ。とりあえずギルドカード出せや。入金の記録から含めてきっちり調べてやんぞ?」


なるほど。丁寧な仕事をするんだな。


「てことは……こいつら生かしておくのか?」


「おお。こんな場合は別に殺してしまってもいいんだがよぉ、仲間が被害にあったかも知んねーんだ。ちぃとでも損害を回収しねぇとな。」


「ふーん。よかったなお前ら。そんなら魔力庫の中身全部出せ。いや、間違えた。魔力庫内の現金を全部出せ。」


こいつらの汚い下着なんか出てきたら最悪だからな。


「ふざけんなぁ! 何えらそーに仕切ってやがる!」

「ローランドの若造がぁ! ちょーしコイてんじゃねーぞ!」


すごいなこいつら……よくこんな状況でそんな口を……




結局いつも通り顔面タコ殴りにして全部出させた。二人合わせてヒイズルの貨幣で十五万ナラーちょい。しかもローランド王国の金貨を五枚、銀貨を八枚持ってやがった。ヒイズルに帰ったら売るつもりだったんだと。舐めやがって……没収。


「じゃあ、後は任せたぜ。海運も楽じゃないな。がんばれよ。」


「おお……おめぇにゃ世話んなりっぱなしだな……ありがとよぉ。」


船長はこいつらに縄をかけ、船員を呼んでどこかに連行させた。営倉ってやつか?


一応この話はパープルヘイズにも伝えておこう。いやー私って本当に働き者だな。あー眠い。

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