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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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117、夜番明けの交流

『魔物だぁーー!』


『拡声』で知らせが入る。右舷か。ちなみに私の魔力探査にも反応はあった。大した魔力でもないし、私の担当でもないから放っておいたが。発見が私に遅れることだいたい十五秒ぐらいだから特に問題もない。


「ちょっと行ってくるね。アレクとカムイはここをお願い。」


「ええ、任せておいて。」

「ガウガウ」


このような時は各持ち場から一人だけが様子見兼助っ人として集まることになっている。さて、何が現れたのかな?




おっ、ネイレスだ。こいつらの肉って旨いんだよな。牛の赤身のいいとこって感じでさ。十五、六匹か。右舷から船に取り付こうとしてるわけね。


「助けは要るか?」


右舷の担当は二人。倒した獲物の素材は自分達の物となるため、助けを求められない限り、他の担当には手出しをしないのがマナーだ。


「いや、問題ねぇ。こいつら以外に何か来ないか見ててくれや」


船首、船尾から現れた二人を合わせて三人で周囲を見張る。

戦っている二人もさすがの六等星だけある。近くにいる方は槍で突き、遠くにいる方はブーメランでズバッと斬り裂いている。しかもそのブーメランがきっちり手元に戻ってくるとは。上手いものだ。


こうして八分少々でネイレスは全滅。手に入った素材はだいたい六匹分ぐらいだろうか。


「おう、助かったぜ。取っといてくれ。」


素早く解体をした冒険者は私達三人に一つずつネイレスの魔石を渡した。私達は何もしていないが、これもマナー。足代ってとこだな。そもそもここの二人なら助けを呼ぶ必要などないのだが、魔物の接近を知らせるのはルールだしな。至極真っ当な対応である。このように、当たり前の事を当たり前にやる。それだけでとても好感が持てるのは何故だろうね。私も見習わないとな。




朝までにこうしたことがもう二回ほど起こったが、特に問題なく私達はその日の任務を終えた。


「いやぁ疲れたね。寄ってくる魔物が雑魚ばかりだからって油断できないよね。」


「そうね。なんだか気疲れしたわ。少し酔ったようだし。」


アレクは魔力を節約するためにあまり浮いてなかったもんな。


それから夜番明けの食事をとり、就寝だ。船に浴槽はおろかシャワーすらないため、多くの冒険者は濡らした布で体を拭くだけだ。

しかし私は違う。オディ兄直伝の洗浄魔法『浄化』があるからな。そこらの魔法使いが使う『浄化』とは桁違いの洗浄力なのだ。


「あぁ……気持ちいいわ。疲れまで落ちるかのようね。」

「ガウガウ」


カムイはこれで我慢してやるだと。生意気な。ついでにブラッシングもしてやるけどね。


「おーい、お前らも浄化をかけてやろうか? 百ナラーでいいぞ。」


冒険者稼業は助け合いだからな。


「マジかぁ! いいんかよ? 百ナラーなんて安い串焼きが一本買える程度だぜ?」


「あぁ、別に儲けたいわけじゃないからな。同じ船に乗ってんだ。仲良くやろうぜ。ほら、浄化が欲しい奴は並びな。」


夜番をしていた六人全員が並んだ。一人ずつ丁寧にかけてやる。夜勤は疲れるもんなぁ。


「すげえぜ……こんなに気持ちいい浄化は初めてだ……」

「ただの浄化にどんだけ魔力込めてんだぁ? 夜番に差し支えんなよぉ?」

「ありがとよ。こいつぁ気持ちだぁ」


「おっ? 一万ナラー札? 多過ぎだぞ。まあいいや、お前は明日からタダでやってやるよ。」


(さつ)と言っても紙ではない。木札とでも言うべきだろうか、厚さ五ミリ程度の木製の貨幣だ。大きさは一万円札の横幅を半分にした程度だ。なんでも特殊な魔法がかかっているため偽造は不可能だとか。ローランド王国の金貨にも似たような魔法はかかっているが、そもそも原材料が金だから偽造をする奴がいたことはないそうだ。どっかに黄銅鉱とかないのか?


「多すぎるのはアンタの魔力だろ。クタナツの魔王って言やぁ先代ローランド王も唸るほどの強者だそうだな。安全な船旅を期待してんぜ?」


「なんだ知ってたのか。ヒイズルの民に知られてるとは光栄だ。じゃあ改めて、俺はカース・マーティン。こっちはアレクサンドリーネ。ご安全にいこうぜ。」


「俺はパープルヘイズのノエリア・レディラント。アンタのことぁリーダーからよく聞いてるぜ」


あぁ、ヒイズルの首都のパーティーだったか。リーダーはジンマとか言ったな。


「じゃあ寝るわ。また夜にな。」


「おう、ありがとな。いい夢みろよ」


さぁてと、今から日没まで十時間ちょいってとこか。束の間の休憩をアレクと……ぬふふ。

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