100、楽園の反逆者
「何が楽園だぁ! 何が代官だぁ! 調子んのってっとやっちまぁぞぉ!?」
あらら? 酔ってわけ分からなくなってるのか? 周囲の冒険者は口々に「やめとけよー」とか「俺らを巻き込むなよー」とか言っている。酔ってくだを巻くぐらいなら見逃しもするが、リリスに手を出したら殺してくれるぞ?
「ここの法は単純にして厳格です。それを犯すと言うのですか?」
「うるせぇ! 売女の元締が調子んのんなぁ! 俺が犯してぇのぁおめぇだぁ!」
ここの法って何だ? きれいに使うこと以外に何があるんだ。リリス代官には逆らわないとか?
「魔王カースに逆らわない。ここでの法はそれだけです。すなわち、代官たる私の言葉は旦那様のお言葉。それに逆らうということは大罪人ですね。今なら間に合いますが……どうします?」
「やかましぃやぁ! 金貨三枚でやらせろやぁ!」
「そうですか。楽園の秩序を乱すのですね。ではあなたは有罪です。即刻出て行ってください。今なら命まで奪おうとは思いません。」
おお、リリスは意外と優しいんだな。
「舐めんじゃねぇ! ここぁ天下の大魔境だぁ! 何が出て行けだぁ! 追い出せるもんなら追い出し『風球』ぃーー……」
とりあえず城壁外まで吹っ飛ばしておいた。せっかく楽しい宴会なのに惨殺劇なんぞ見たくはないからな。
「旦那様……相変わらず甘いお方ですね……」
「カースはそれでいいのよ。次にあいつを見かけたらあなたがトドメを刺しておきなさい。」
「お嬢様……それもそうですね。さて、ご来席の皆様、本日魔王の館には新人が六名入りました。明日から客を取る予定ですので、ご希望の方はこの場でご予約承ります。」
『うおおおおおおーーーーー!!!』
一気に盛り上がったな。リリスやるなあ。つーか私が連れてきたのは八人。なのに新人は六人なのか。残り二人はどうした?
まあいいや。私も本格的に食べよう。ここからは海の幸を焼くぜ。栄螺、鮑、雲丹。あー旨い。
「なんだぁこれぁ!?」
「珍しいぜ!?」
「貝ってやつか!?」
「このトゲトゲは!?」
ぬふふふ。まあまあ珍しいよな。海辺の領地でもそうそう食えるもんじゃないからな。あー旨い。
「ガウガウ」
ん? 肉を焼けって? カムイはまだ食うのかよ。
「ピュイピュイ」
コーちゃんは酒と薬だね。悪い子め。つーかこいつらもよく薬持ってるよな。私もババア校長から貰ったやつが少し残ってるけどさ。
あーいい夜だな。旅から帰ってきたらまたここで宴会やろう。こいつらが生きてればいいけどな。
結局この夜は最終的に百人近くが参加した。冒険者達は魔境からも帰ってきたし、娼婦達も交じってきた。意外と楽しく仕事できているらしい。いいことだ。ぜひ頑張って欲しい。
時刻は真夜中。付近には酔い潰れた冒険者達が死屍累々と横たわっている。女達はリリスが館に帰した。
私とアレクは二人でイチャイチャしながらチビチビと飲みつつ楽しんでいた。明日はバンダルゴウか。それからついに国外へ旅立つのか。少しドキドキするな。
「カース。」
「何だい?」
「明日からが楽しみね。」
「楽しみだね。あ、バンダルゴウに行く前にヘルデザ砂漠に寄ろうね。たくさん鉄塊の魔法を使っておかないとね。」
「私も使ってみるわ。そこまで量が得られないとは思うけど。」
「あの魔法って結構魔力を食うからね。まあできるだけでいいよね。魔力庫の容量の問題もあるしね。」
「そうね。ああ……楽しみね。旅、物見遊山でローランド王国からヒイズルに渡る人間なんて私達が初めてじゃないかしら。」
「そうかもね。楽しみだね。」
そもそも旅を楽しむって文化もないしね。よーし旅に枕し流れに嗽ぐぜ。何か違うな。
第四章も百話まで来てしまいました。
百話まで来ておいて全然話が進んでおりませんが……
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