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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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52、ギルドあるある

一年ぶりのギルド。ここが一番混むのは早朝と夕方。今の時間はそこまで混んでない。うーん、知らない顔ばっかりだ。港町の建設で景気がいいんだろうな。他所からたくさん来ていると見た。


「かぁー! なんだぁこいつぁ? ギルドを舞踏会かなんかと間違えてやがるぜぇ!」

「ここをどこだぁ思うとるんかぁ! 天下のクタナツギルドだぜぇ!」

「おめぇみてぇな坊ちゃんはお呼びじゃねーっつーの!」

「おおっ? でもいい女連れてやがんぜぇ? 置いてけ? なぁ!」


ギルドあるあるだ! 帰って早々かよ!

なんて新鮮な気分なんだ。たった一年顔を出さなかっただけで、もう誰も私を知らないなんて。せっかくだから会話に付き合いたいところだが、今はそんな悠長なことをしている時ではない。


「お前ら金が欲しくないか? 貸してやろうか?」


「かぁー! よく分かってやがるぜぇ! さすがいいとこの坊ちゃんは違うぜ! なぁ?」

「おおよ! おめぇみてぇな坊ちゃんは長生きするぜぇ!?」

「おらぁ、さっさと出せやぁ? もたもたしてっと鼻ぁぶん殴るぜ!?」

「有り金全部だぜぇ? そしたら無事に帰れるからよぉ?」


いつも思うが、よくギルドはこんなあからさまな犯罪を取り締まらないよな。そりゃ冒険者同士のケンカは死に損とかって言うけどさ。私が本当にか弱いオシャレな貴族だったらどうするんだ? たぶん後のことを考える頭なんかないんだろうけどさ。こいつらきっと脊髄反射で生きてるんだな。


「一人金貨百枚でどうだ? トイチで複利の約束だぜ?」


「ぎゃはぁ! トイチだってよぉ! わぁこわーい!」

「魔王気取りなんだぜ! 無理すんなっての!」

「クタナツにぁ怖ぁーい魔王がいるからなぁ!」

「自分まで強くなった気になってんじゃねぇぞ!?」


おや、魔王がトイチで金貸しをすることを知っているのか。あんまり貸してないから意外だな。


「いらねーんなら貸さねーぞ?」


「かぁー! ハッタリはやめとけや! おめぇみてぇなガキが金貨百枚持ってるわけねぇだろぉが!」


そういえばオディ兄が金貨百枚貯めてマリーを買ったのは今の私の歳ぐらいだったかな。あっという間の一年だったなぁ。


では、ちょっとデモンストレーションといこうかね。

手の平を下に向けて、ギルドの床に……ばらまく。

石で出来た床に落ちる金貨。結構いい音がするもんだな。ギルド中が注目してるじゃないか。


「ほれ、ぴったり百枚あるぜ? 貸してやろうか?」


「へっへっへ……素直な坊ちゃあがっっっう!?」


ちっ、こいつ一人にしか掛かってないのか。


「他にはいないのか? 金に困ってたら貸してやるぜ?」


「俺もいたっっだぐぅ……」

「もっとあんだろ? 全部っだせぇえがあっ……」

「金っがっあおぉう……」


うん。時間差で残りの三人にも掛かった。これで安心。金貨をもう三百枚追加。


「大事に使えよ?」


いやーこの流れって久々だよな。つーか金貨百枚でトイチって一ヶ月も放っておいたらもう地獄だよな。強く生きて欲しいものだね。


「お、おい……今のって……」

「まさか……なぁおい!」

「契約魔法……? それも契約書類なし……魔力一発って……」

「魔王……カース……」


「正かーい。しっかり稼いでしっかり払えよ?」


いつも同じ服装なんだからいい加減に初見で気付けよな。たまにはこんなあるあるに出会うのも悪くないけどさ。


「さてと、待たせたなクロミ。登録に行こうか。」


「ひぇーニンちゃんって恐れられてるんだね! でもマウントイーターを退治するぐらいだから当然だねー!」


「ふふん、カースは凄いのよ! 分かったら魔王と呼ぶといいわ!」


アレクがドヤ顔をしてる。


「マオちゃん? それも悪くないけど、やっぱウチはニンちゃんって呼びたいかな。」


冒険者登録費用は銀貨一枚。それぐらい払っておいてやるよ。


ちなみに、クロミの字はかなり達筆だった……負けた……





「まっ、待ってくれぇ!」

「たすっ、助けてくれよぉ!」

「し、知らなかったんだぁ! あんたが魔王だなんてよぉ!」

「いのののっ、命だけぁ!」


さっきの四人が私の足にしがみついている。正確に言えば密着型自動防御を張ってるから私のトラウザーズに触れてはいないが。


「助けるも何も借りた金を払えばいいだろ? 利子を付けてな。」


「はっ、払う! 返すからぁ!」

「いっ、いくらなんだよぉ!?」


私のトイチは十日以内ならいつ返済しても一割だ。つまり……


「一人金貨百十枚な。別に今じゃなくていいんだぞ?」


「払う! すぐに払うから!」

「千杭刺しだきゃあ勘弁してくれぇ!」

「ほ、ほれ! 金貨百十枚だ!」

「まだ死にたくねぇよぉー!」


結局全員その場で全額払った。ほんの数分で金貨四十枚の儲けか。さっき残高をチェックしたら金貨千枚を超えてたんだよな。勲章の年金や酒の売上かな。不労所得って最高だねー。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかクタナツギルドでカースに絡む愚か者が居るなんて(笑) さぞカース不在の1年間が平和そのものだったのですね。
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