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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #いせきん  作者: 暮伊豆
第4章

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3、大海蛇襲来

翌朝。日の出と共に船が動き出した。なるほど、帆船だけど魔法使いが風操を使えば容易く行き足もつくし速度も出るんだろうな。


「アレク、気分は悪くない?」


「ええ、不思議な感覚だけど大丈夫よ。カースは平気なの?」


「うん、大丈夫だよ。それにしても冬のノルド海は激しいね。」


私が平気な理由は浮身を使っているから。甲板から数センチだけ浮いている。でないと絶対酔うからな。船なんか嫌いだ。


なるべく沿岸沿いを進んでいるようだが、波は荒い。この辺ってそうなんだよな。地形的には西や東の海の方が荒れそうなのに。


「アレク、先頭に行ってみようよ。きっといい眺めだよ。」


「いいわね。こんな大きな船をあちこち探索するのも面白そうだわ。」


「ピュイピュイ」


私が船首へ行くには理由がある。もちろん景色を楽しむためでもあるが、本命は……




「うわぁーいい眺めだわ。私の前には海しか見えない。全部私のものになった気分よ。」


タイタニックごっこをするためだ。定番だよね。私は後ろからアレクを支えている。ちなみにコーちゃんはアレクの首に巻きついている。二人ともかわいいよなぁ。


あっ、コーちゃんは海面に何やら獲物を見つけたらしく飛び降りてしまった。自由だなぁもう。ちゃんと追いついてきてね。


「カースも泳ぐの?」


「いやいや、今日はそんな気分じゃないから。だいたいここってそんな珍しい場所じゃないしね。」


前回泳いだ理由は滝が珍しかったからだ。滝壺で泳ぐなんてスリリングだもんな。


あ、魔物だ。


『遠見』


大きいな。蛇系か。海龍ではないな。エラなのか翼なのかよく分からない器官が首の両側にあるぞ。たぶん翼かな。


「バクナワね。何でも飲み込む厄介者らしいわ。さすがにこの船は無理でしょうけど。カース、やる?」


アレクにやるって聞かれるとドキっとするな。


「いや、この船には元宮廷魔導士も何人か乗ってるし、僕が手を出す必要はないよ。」


出しゃばるのはよくないよな。ほーら、宮廷魔導士っぽいのが集まってきた。冒険者もだ。


次々と撃ち込まれる魔法や投げ槍。しかし大海蛇(だいかいじゃ)バクナワは意に介さず近付いてくる。


おおっ『轟く雷鳴』だ。空を覆い尽くすかのような雷が見る見る収束しバクナワの頭部に降り注いだ。見事な制御だ。全身をびくりと震わせ動きが止まる。そこにすかさず撃ち込まれる冒険者の投げ槍と『氷槍』『炎槍』などの中級魔法。


弱りつつあると見せかけて、口から大量の水を吐き出すバクナワ。とっさに氷壁を張り防ぐ魔導士。また別の魔導士は特大の『氷槍』をバクナワの頭上から落とす。他の者はバクナワが避けないよう奴の周辺にも氷壁を展開している。


そして、ついに氷槍がバクナワの頭を貫いた。胴体がのたうち回り海がさらに荒れるが、やがて力をなくし静かに海面に浮いた。


「さすがの連携だったわね。絶え間のない攻撃に堅実な防御。海の魔物って大きいから大変よね。」


「そうだね。あんなのが船に巻き付いたら大変だもんね。無事に撃退できてよかったね。」


あっ、さっそくコーちゃんがバクナワの胴体に食らいついてる。獲物の横取りはダメだぜコーちゃん。


「解体されますか? それともどなたかが収納されるんですか?」


宮廷魔導士っぽいおじいさんに聞いてみた。


「うむ、無論だ。輪切りにして数人で分けて収納する」


「分かりました。それは私がやりましょう。うちの蛇ちゃんが少し食べてしまったもので。何メイル間隔で輪切りにすればいいですか?」


「ほう。ならば五メイルで頼む」


「分かりました。」


コーちゃんが食べた分ぐらい働かないとな。


『浮身』

『水鋸』


五メイル間隔で輪切りにされた胴体が六つ。直径も五メイルぐらいか。やっぱ海の魔物は大きいのばっかりだな。これでも別にここらのボスってわけでもないだろうに。


「ほう。さすがはゼマティス卿の孫にして魔王と称されるだけはある。下級魔法しか使っておらぬのに見事な威力、その上なんと精密な制御よ」


「ども、恐縮です。」


正確に言うと水鋸は私のオリジナル。『水滴』の魔法を応用してるだけなんだもんな。


「ぬっふっふ! カースはすごいんじゃあ!」


あ、おじいちゃんが来た。


「ゼマティス卿、手伝ってくれてもいいでしょう。バクナワのような大海蛇は厄介なのですぞ?」


「はっはっは。宮廷魔導士達の連携を邪魔してはいかんと思っての。見事であったぞ。これならば儂も安心して見ておれるわい。」


歳は同じぐらいだけどやはりうちのおじいちゃんは宮廷魔導士からも一目置かれるレベルか。うーん誇らしい。


「おお、カースにアレックスや。陛下がお呼びじゃ。昼食を一緒にどうかとの。」


「はい、行きます。」

「お召しにあずかります。」


コーちゃんは甲板でバクナワの一部を食べている。じゃあ後でね。「ピュイピュイ」


私もそうだが、みんなも元国王のことを陛下って呼ぶよな。すでに譲位は済んでいるってのに。来る即位式は単なるお披露目だからな。ローランド王国で陛下と呼ばれる人物は国王ただ一人。先王も陛下ではなく先王様と呼ぶのが正しい。まあどうでもいいけどね。私も普通に陛下って呼ぶし。

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[気になる点] 「ほう。さすがはマーティン卿の孫にして魔王と称されるだけはある。下級魔法しか使っておらぬのに見事な威力、その上なんと精密な制御よ。」 「マーティン卿、手伝ってくれてもいいでしょう。バ…
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