11. 戦闘狂令嬢
「あら!エディー、そんなところにいたの?たくさんダンスの申し込みがあったから、てっきり誰かと踊るかと思ったのに誰の手も取らないなんて。」
「義父上、私ついこの間"失恋"したばかりなんですよ。今は新しい恋なんて、とても考えられません。」
「まあそうだけど。若い時なんて一瞬よ。それに、いきなりあんな魔法をぶっ放してくれるから、早くも"戦闘狂令嬢"なんてあだ名がついてるわよ。」
「ええ!ひどい。」
以前は"ユングリングの人形姫"なんて呼ばれていたのに、不本意過ぎる……!
「今日はいいけど。せっかくかわいらしいんだから、次からは殿方にダンスを誘われたらちゃんと踊るのよ。」
「分かりました。」
そのまま、義父に手を取られ、会場に戻る。もうお開きが近いのか、人々は少しずつ会場を後にしていた。右手の小指にはめられたピンキーリングに目を落とした。赤い宝石にシャンデリアの輝きが反射してきらりと光った。
「――義父上、結局リアスは見つからなかったわ。」
「あなたが言っていた殿方?今日のパーティーは、ほぼすべての家が参加していたと思うわよ。その人、どんな容姿なの?」
「黒髪に赤い瞳。あっ、あと神眼持ちだった。」
「え、神眼?それ王家の血が濃く入っている証拠よ。その方、王族か上位貴族なんじゃない!?あと神眼の細かいことは国家機密になっているから、他の誰かに言っちゃだめよ。」
義父は口元に人差し指を当てながらそう言った。神眼ってそんな特別な力なんだ。申告するタイミングがなかったから、私の力について義父には話していない。昔、母が神眼は王家の象徴だって言っていたけど、学院時代、リアスは子爵を名乗っていたから、勝手にリアスは王家と無関係だと思っていた。私もトヴォー王国の王族とは無縁の神眼持ちだし。
「――だから、あの人偉そうだったんですかね。」
「あら、あなたの想い人じゃなかったの?」
いきなり、リアスのことをそんな風に言われると、さすがに恥ずかしい。頬が熱を帯びていくのが自分でも分かった。
「ちょっとやめて下さい。私は久しぶりにお会いしてお礼を申し上げたいだけです。」
「ふふ。お顔真っ赤よ~。分かりやすいんだから。」
何故かご機嫌そうな義父の手を握り、会場を後にした。




