『忘却の都市』 闇への入り口
ここから、いよいよ本格的に作戦が始まる。
その前に、一度、情報を整理しておく。
先日、通信先の男から伝えられたのは——
“小林副隊長の最後の侵入”に関する記録だった。
まず、建物の入り口には強力なセキュリティシステムがかけられていた。
2年前の侵入時よりも格段にセキュリティレベルが引き上げられており、 結果的に"爆破"という手段を取らざるを得なかったという。
施設内部には長い通路が続き、奥には一枚の扉。
それを開けると——大きなホールのような空間が広がっている。
ここまでは、霧崎と夏希も先日訪れた場所と同じだった。
だが、小林副隊長はこの場所で決定的な違和感を覚える。
入り口以外、どこにも道が続いていない。
——それが、異様だった。
そこで、デバイスの力を使い、感覚を強化して周囲を探る。
すると——
壁の一部に、僅かな隙間があることを発見。
そこを押すと——地下へと続く階段が現れ、その先には……新たな扉があった。
その扉に手をかけ、開けようとすると——
「認証エラー。開錠不可。条件を満たしておりません。」
無機質なアナウンスが響く。
小林副隊長は、力づくで扉を開けようと試みた。
だが——微動だにしなかった。
そのとき——彼は感覚を研ぎ澄ませ、"内部の音"に集中する。
扉の奥から、複数名の慌ただしい声が聞こえた。
……何かがある。
確信した瞬間だった。
しかし、時間をかければ状況はさらに悪化する。
彼は、すべての感覚を"周囲の探知"へと回す。
その結果——
この施設は、地下に3層の部屋が連なっていることが判明した。
そして——その時点で、彼は決断する。
……ここには、確実に“都市の真実”を裏付ける決定的な証拠がある。
覚悟を決めた小林副隊長は、通信先の男に施設内部の情報を共有した後、元の広場へ戻り
——この事実を託すべき者が現れることを願い、待ち続けた。
それが、小林副隊長に課された——最後の“使命”だった。




