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忘却の都市  作者: HANA
交錯する運命
82/152

『忘却の都市』 託された遺志

「……誰だ?」

霧崎は問いかけた。

だが、聞かずとも答えはすでに察していた。

ほぼ間違いなく——先程の話に出ていた車中の男だ。


通信の向こうの人物は、静かに言葉を紡いだ。

「……彼の協力者だ。そして今は——君たちの協力者でもある。」

夏希が僅かに目を細める。

霧崎は冷静に思考を巡らせる。

その口ぶりからして、こちらの素性はすでに把握されていると見ていい。

謎の通信といい、あまりに不自然なタイミング。

(……かなり警戒すべき相手だ。)

そう判断した。


夏希は端末を握りしめ、静かに言葉を投げた。

「それで……私たちに、何をさせたいの?」

通信の向こうから、ノイズ混じりの声が返る。


「……さっきも伝えましたが——君たちには、彼の任務を引き継いでもらいます。」

「つまり——都市のシステム中枢の所在を暴く。」


短く、決定的な言葉だった。

その瞬間、空間が張り詰める。

「……でも、実際どうすればいい?」

霧崎の声には、わずかな躊躇が滲んでいた。

(小林副隊長ですら失敗したのなら——俺たちに何ができる?)

それを察したように、通信の向こうの男は静かに答える。

「心配はいらない。」

「彼は、きちんと手掛かりを残してくれている。」

夏希が息を呑む。

「これから君たちには——」

男は一拍置き、ゆっくりと言葉を続けた。


「“作戦”を伝える。」

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