表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の都市  作者: HANA
亡き者の声
80/152

『忘却の都市』 亡き者の決意

「——この都市の中枢システムの所在を暴くための協力者が欲しい。 それが、あの男の提案だった。」

まず、一度都市を離れ、二年後に再び戻るよう指示された。

その際に必要なものはこちらで用意する——そう、男は言った。


「……林にも、同じ提案をしているのか?」

私は林の事が気になり質問すると、男は、少し間を置いて答えた。

「彼は、あなたとは別の車に乗っている。 恐らく——通常通りの“対処”が下されるでしょう。」

その言葉に、わずかだが動揺した。

だが......


「……今は、この男の言葉を信じるしかない。そう思って、私は受け入れた。」

映像の中の小林副隊長が、息をつく。

「そして、今——私はこの都市に戻ってきた。」

沈黙が落ちる。

「本部の上層部が今月、会合を開くという情報を得た。 本部に潜入し、そのうちの一人でも拉致できれば——システムの中枢の場所を聞き出せるはずだ。」


「——もし失敗した場合、私は自害する。」


その声は、静かに空間を震わせた。

「あの男との約束だ。情報を抜き出されるくらいなら、それしかない。」

「……この映像が再生されているということは——私はすでに、この世にいないのだろう。 そうなるよう、あらかじめ設定しておいた。」

その言葉に、霧崎と夏希は僅かに震えた。

「この映像を見ている者が——本部の人間でないことを、心から祈る。」

静かに、画面が薄く揺れる。


「——以上。」


映像が淡く滲む。

次の瞬間——

記録映像は、完全に途切れた。

霧崎と夏希は、その場にただ——深い沈黙を残したまま、立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ