『忘却の都市』 崩れる輪郭
——まだ夜の気配がわずかに残る時間。
俺は、緊急招集を告げる端末の通知で目を覚ました。
行き先は、JAC本部。
言葉少なに制服を整え、足早に建物の奥へと向かう。
通された部屋に入ると、すでに都市警備隊の面々が揃っていた。
見知った顔の中に、見覚えのない2名。
だが、着ている制服からも、彼らが同じ“隊員”であることは明らかだった。
霧崎は軽く一礼し、無言で空いた席に腰を下ろす。
直後、部屋の正面から低く響く声。
——城戸隊長だった。
「朝早くから、すまない。昨日、負傷した者たちにとっても、回復の時間を奪う形になってしまったことを詫びる。」
穏やかさの中に、空気を切り裂くような緊張が宿っていた。
「……昨日、本部建物にて事件が発生した。各自すでに聞き及んでいるだろう。本部正面の入り口が爆破され、侵入行為が行われた。多数の負傷者が出ている。」
言葉の途中で一度、視線を巡らせる。
全員の目が、隊長に集まっていた。
彼が今から“良くない何か”を口にすることを——全員が直感していた。
「……事件の首謀者は、昨日のうちに拘束された。」
重く、静かに。
「事情聴取のため、本日未明、職員が彼の様子を確認しに行ったところ——」
一呼吸、間が空く。
「……自害していた。」
その瞬間、空気が凍りつく音が聞こえた気がした。
……誰も、すぐには言葉を出せなかった。




