表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の都市  作者: HANA
支配者たちの影
69/152

『忘却の都市』 円卓の声

ここは、最深部。

窓も時計もない密閉空間。

そこには、時間の流れすら凍りついたような静けさが漂っていた。

中央に据えられた重厚な円卓。

その周囲を、6人の人物が等間隔に囲んでいる。


進行役と思しき最年少の男が、手元の資料を確認すると、静かに告げた。

「……本日の議題は、ここまでとします。皆様、お疲れさまでした。」

その瞬間、場の緊張が一気に解けたわけではない。

だが、確かに、誰かが小さく息を吐く音があった。

「やっとか」とでも思ったような、わずかな気配の緩み。


しかし——

「なお、念のためご報告を。」

進行役の声が、再び空気を張り詰めさせる。

「昨日、都市内で小規模ながら暴動が発生いたしました。死者は出ておりませんが、複数の負傷者が確認されています。」

円卓の空気が、再び静かに引き締まる。

「負傷者の中には、都市警備隊員が3名含まれております。 なお、暴動はすでに鎮圧済み。首謀者と目される人物は現在、拘束中です。」

「……負傷した隊員は誰だ?そして、鎮圧したのは——やつか?」

一人の男が低く問いを投げた。

進行役は頷き、画面を一度確認してから告げた。

「6番、7番、8番の三名です。いずれも命に別状はありません。 復帰には数日の経過観察のみで済む見込み。……また、鎮圧を実行したのは、1番です。」


それが告げられた瞬間、全員の口からわずかな吐息が漏れた。

それは諦念か、安堵か、それとも——

「また1番か……」

「そろそろ次世代を育てる時期だ。彼ももう若くはないだろう。」

「とはいえ、あの男は……異常だ。再現は……難しい。」

「だが、現場への依存が常態化していることは、もはや危険でもある。 このまま放置すれば、いずれ綻びが生じる。」

重く低い声が、順に円を巡るように漏れていく。

静かな議論の終わり際、もう一人の人物がぽつりと投げかけた。

「……そういえば、今回の首謀者は誰だったのだ? 1番を投入しなければならなかったというなら、それなりの相手だったはずだが。」

進行役は、しばし躊躇うように視線を伏せると、言葉を落とした。

「……現在も調査中です。しかし恐らく、いえ——ほぼ間違いなく、元2番です。」

静寂が、反響のように空間の隅々まで染み渡る。


そして——どよめき。

「……2番だと?」

「彼は……たしか以前1番が……」

「ここにはいなかったはずだ……」

「……何があった……?」

憶測と不安が、目に見えぬ煙のように空間に広がっていく。

「——皆さま、落ち着いてください。」

進行役の声が、その揺れを切り裂くように響いた。

「詳細は現在も精査中です。 結果がまとまり次第、新たな会合にて再度報告いたします。」

静けさが戻る。

だが、それは決して穏やかなものではなかった。


そして、翌朝——事件が起きる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ