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『忘却の都市』 託された時間
城戸は、しばし沈黙の中で考えていた。
俺は、その様子をじっと見つめる。
やがて沈黙に耐えきれず、思わず声を発していた。
「——城戸隊長は、中に向かわれないのですか?」
その言葉に、城戸は微かに苦笑する。
「ああ……歳をとると慎重になってしまって、すまない。」
城戸は微かに苦笑し、柔らかな口調で答えた。
だが、その言葉の真意がすぐには掴めなかった。
城戸はゆっくりと息をつき答える。
「無論、私は向かうつもりだ。」
「……では、慎重とは——」
城戸は静かに、しかし確かに言葉を続ける。
「君を、どう動かすべきかを考えていた。」
俺は一瞬、息を止める。
「恐らくこれほどの時間、彼らから連絡が無い事から、先に向かった2人は—— すでにやられている可能性が高い。」
その言葉に、背筋を冷たいものが這い上がる。
「そして、今対峙している進藤君も—— 恐らく侵入者には勝てないだろう。」
短い沈黙。
その言葉の重さを受け止める。
「……では、私に何を?」
城戸は霧崎をまっすぐに見つめ、静かに作戦を語り始めた。




