46/152
『忘却の都市』 分岐点
「予想外の事態だ……すまない。」
城戸の静かな声が響く。
その静かな声の奥に、わずかな焦りと責任の重さを感じ取った。
「ここは私に任せて、君は爆発のあった現場に向かってほしい。進藤君をサポートしてやってくれ。」
指示は明確だった。
俺は、捕らえられた5人と、それを見下ろす隊長の姿を見つめる。
隊長はそれを察したように、ふっと笑った。
「いくら歳とはいえ、一般人に逃げられるようなヘマはしないよ。」
それは、場を和ませるような軽い冗談だった。
俺は反射的に言葉を返した。
「そんなつもりでは……。」
しかし、内心では、先ほどの男の話が頭から離れなかった。
(……お前らは騙されてるんだよ。)
あの言葉は、いったい何を示していたのか——。
しかし、今は考えている暇はない。
隊長の指示に従い、爆発現場へ向かうことを決断する。
霧崎の背中を見送りながら、城戸はゆっくりと5人へと視線を向けた。
静かに、しかし確実な口調で言った。
「君たちに——少し、話を聞かせてもらおうか。」




