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『忘却の都市』 砕かれた静寂
端末が振動する。
——ターゲットが入店した。
予定通りの報告。
俺と夏希はカフェから少し離れた場所で待機する。
静かに、淡々と、しかし張り詰めた時間が過ぎていく——。
そして—— 視認。
5人のターゲットが店を出て、道を歩いていく。
俺は深呼吸をし、作戦通りターゲットに声をかける。
「少し、聞きたいことがある。同行してもらえるか。」
静かに、しかし明確に声をかける。
このまま何事もなく、同行してくれることを願って。
しかし、次の瞬間……その祈りは無残にも散る。
集団が、反射的に弾けるように動き出した。
——明らかに逃げようとしている。
即座にデバイスを起動。
全身の感覚が瞬間的に広がる。
1人、2人—そして、5人。
すべての動きを把握し、瞬時に5人の動きを封じる。
——制圧、完了。
何が起きたのか理解できず、捕まったことを悟った彼らは静かになる。
俺と夏希は視線を交わし、この中に昨日の人物はいないことを悟った。
しかし——。
突然、遠くの方から爆発音が響く。
空気が震え、静寂が——砕け散った。




