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『忘却の都市』 追いつめられる時間
瞬時に状況を整理する。
今、一番まずいのは—— 限界以上にデバイスを発動して意識を失うこと。
それだけは避けなければならない。
短期決戦か、防御に徹するか。
どちらにせよ、相手は未知数——いや、初手の動きだけで、理解してしまっていた。
......勝てるわけがない。
ならば、最善の策は『防御に徹すること』
どうなるか分からないが、騒ぎを聞きつけて誰かが通報してくれるかもしれない。
その淡い期待にすがるしかなかった。
その決断を待っていたかのように—— 仮面の人物が動く。
空気が裂ける音。
手刀が風を切って目前を通過し、続けざまに、低く抉るような回し蹴り。
——とてつもなく速い。
反射的に身をひねり、地面を滑るように回避するが、かすめた風圧が頬を切る。
息を整えながら、冷静に動きを見極める。
しかし—— もう時間がない。
3秒、4秒……限界が迫る。
覚悟を決める。
いちかばちか、最後の1秒は攻撃へ転じる。
俺が踏み込んだ瞬間——
仮面の人物の動きが、一瞬だけ止まり、まるで驚いたように見えた。
だが——
拳はギリギリでかわされ、その直後、鋭いカウンターが、こちらへと迫る——




