『忘却の都市』 巡回と変化
それから数日間、俺は夏希と共に都市を巡回しながら、道に迷った人の案内、迷子のペットの捜索、ちょっとした喧嘩トラブルの仲裁など、簡単な仕事をこなしていた。
都市のルール、警備隊の任務、そして——強化デバイスの制御。
最初は戸惑うことばかりだったが、少しずつ慣れてきた。
そんなある日。
「そろそろ巡回エリアを広げようか。」
夏希が軽く言った。
「今まで決まった区域ばかりだったけど、もっと色々な場所を見て回るのも大事だからね。他の管轄エリアの警備隊員と顔ぐらいは合わせといてもいいし。」
俺は頷いた。
そして、その新たなエリアでの巡回の最中——。
「よし、じゃあちょっと休憩しよう。」
「え?」
唐突に夏希が言い出した。
「カフェ。」
夏希は半ば強引に店内へ入っていった。
俺は少し戸惑いながら、その背を追う。
(……あれ?ここ、どこかで——いや、誰かと来たような……?)
店内へ入ったその時——。
「いらっしゃいま——」
店内から1人の店員の声が言いかけたその瞬間。
目の前の客を視認して、声が途切れた。
一瞬の間。店内のざわめきが遠のくような感覚。
「……あ。」
霧崎と視線が交わる。
早川悠人。
霧崎は、久々に彼と再会した——。




