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『忘却の都市』 疑問
夏希との会話を通して、少しずつ意識がはっきりしてきた。
ゆっくりと周囲を見渡す。
無機質で、閉鎖的な空間。
壁には何の装飾もなく、機械的な冷たさだけがある。
静かだ。
しかも、周囲に人の気配すら感じられない——。
「ここは……?」
無意識に呟いた。
その問いに、夏希は軽く肩をすくめて答える。
「私のお気に入りの休憩スペース。」
「休憩……?」
「そう。誰もいない場所でゆっくりしたい時に、ここでちょっとサボるんだよね。」
俺は眉をひそめる。
「この部屋は端末の電波も届きにくいからさ。仕事してるフリしながら、ちょっと息抜きするのにちょうどいいんだよ。」
夏希はそういって軽く笑った。
そしてふと、思い出したように夏希が問いかける。
「ねえ、霧崎凛。この都市、どう思う?」
唐突な質問だった。
その問いに一瞬、言葉を飲み込む。
「どう……って?」
「単純な話。この都市をどう感じてる?」
表情は笑っているが、今までの雰囲気とは違う。
何かを探るかのように夏希は霧崎を見つめる——。




