『忘却の都市』 目覚め
ぼんやりとした視界。
遠くの光が、少しずつ輪郭を持ち始める。
身体が重い。
頭がぼんやりとして、乗り物酔いのような感覚が残る。
——ここは、どこだ?
薄暗いコンクリートに囲まれたような一室。
覚醒しきっていない思考のまま、硬いベッドからゆっくりと身体を起こした。
その瞬間——。
「おー、やっと起きたね。」
軽い声が響く。
視線の先には、腕を組みながらこちらを見下ろす金髪の少女。
「いやー、意外だね。君って最後まで話聞かないタイプ?」
「……え?」
言葉の意味がすぐに理解できず、素っ頓狂な声が思わず出た。
その言葉に彼女はクスッと笑った。
昨日のことを思い出し、無意識に顔がこわばった。
彼女は肩をすくめて、軽く微笑んだ。
「いやいや、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいよ。大丈夫、大丈夫。私も最初に同じことやったから。」
その言葉に驚く。
「同じ……ですか?」
「うん、初めて使った時に派手にぶっ倒れたよ。私も実践しないと信じないタイプだからね。だから気にする必要なし!」
そう言って、軽く笑った。
「それよりさ、敬語はもうやめてよ。」
「え?」
「いや、堅苦しいの嫌いなんだよね。ため口でいいよ。多分そんな歳も変わんないでしょ。」
俺は少し戸惑った。
「いや、でも……」
「んー?この状況でそれ言う?」
彼女が少しだけ悪戯っぽく微笑む。
「ほら。今のこれ、私にめちゃくちゃ迷惑かけたんだからさ。」
つい先程、気にしなくていいって言われたような気がする……が、ここは言葉には出さず、素直に従った方がよいと思い答えた。
「分かりました。……いや、分かった。」
「よし、それでいい!」
彼女は満足げに笑っているが、急な展開についていけず、再び意識が飛びそうになった。




