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忘却の都市  作者: HANA
日常という仮面
16/152

『忘却の都市』 ???

「本日1名、都市警備隊に配属されました。」

物々しい機械が並ぶ部屋で、黒髪の少女は淡々と報告を続ける。

「特に異常なし。不審な動きも見られません。」

「了解。その他に報告はあるか?」

手元の資料を確認しながら答える。

「他にも1名、住民登録された方がいます。こちらは対象外の方です。」


短い沈黙の後、通信の向こうから落ち着いた声が返ってきた。

「了解した。引き続き確認を続けるように。」

そう言って、通信が切られた。

少女は静かに息をつき、モニターから目を離した途端——。


「玲奈っち、疲れたよ~休みたいよ~!」

背後から何かがふいに飛びついてきた。

「急に飛びつかないでください。通信中だったら、どうするんですか。」


——工藤クドウ 沙織サオリ。私の先輩だ。


背が高くて見た目はすごくしっかりしているのに、なぜか私の前だとこうなる。

「大丈夫、大丈夫。ちゃんとそのあたりは確認してるから。」

親指を立てて自慢げに話すが、言動が一致していないのはいつものことだ。

その時、少し離れた場所から低い声が飛んできた。

「工藤、神崎が嫌がっているぞ。そろそろ離れてやれ。」


長身のメガネをかけた男性——こちらは田中タナカ イツキ先輩。


同じ監視業務を担当しているが、田中先輩は工藤先輩とは対照的にいつも冷静だ。

「先程の通信は新しい住民の報告か?」

「そうです。数日前にこの都市に来た男性が、本日付けで都市警備隊に配属されました。」

無言でモニターを見つめた後、ゆっくりと呟いた。


「……都市警備隊か。」


田中先輩のその言葉に、なぜか3人とも一瞬沈黙する。

ふいに思い出したように工藤先輩が口を開く。

「都市警備隊ってことは、指導員がつくはずよね?」

玲奈は手元の資料を再確認する。

「はい。指導員は進藤夏希さんという方だそうです。」

「あー、あの金髪ショートの可愛らしい子ね。彼女なら大丈夫そうね。」

工藤先輩は安心したように笑った。


「ちなみに新しく入ってきた住民ってどんなの?」

玲奈は目の前のモニターを少し操作し、画面に表示する。

「え、思ったより若いわね。二人とも玲奈っちよりちょっと上ぐらい?」

「そうですね、私の2つ上の年齢です。」

それを聞いて、先輩はなぜか落ち込んだ様子を見せた。

「私と玲奈っちってそんなに離れてたんだ……ちょっとショック。で、ちなみに玲奈っち的にこの子たちはどう?」

「......どうとは?」

質問の意図が分からず、聞き返してしまう。


「そら恋愛対象かどうかって意味よ。」

工藤先輩はこういう話が好きだ。何かと恋愛話に持っていきたがる。

「ないですね。」

即答すると、先輩は満足げに笑った。

「お、分かってるね!やっぱ男はもっとダンディさがないと…...」

「それはお前の趣味だろ。」

今まで黙っていた田中先輩が突っ込みを入れる。

玲奈はこのやり取りを見ながら、ほほえましく感じた。

私はこの何気ない日常が好きだ。


そう、私がこの都市に来たあの日から——。

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