『忘却の都市』 都市警備隊の仕事について
翌朝、再びJACの受付へ向かった。
昨日、二人で話し合った結果、悠人は先日行ったカフェの接客業をすることになり、俺は都市警備隊という職に就くことになった。
今日から正式に業務を開始することになる。
都市の住民たちは変わらず静かで、合理的に流れる人々の動きがこの都市の秩序を感じさせる。
しかし昨日、悠人から聞いた話によると、この秩序を維持するとされるのが「都市警備隊」であることを考えると、不思議な感覚があった。
俺は、受付の女性に身分証をかざし、業務説明を受けるための部屋へと案内される。
「霧崎凛さんですね。こちらへどうぞ。」
施設の奥へ進むと、広めの部屋が用意されていた。
中には、淡いホログラムが浮かび上がる端末が設置されている。
そして、その端末の前に立っていたのは、体格の良い大柄な男性だった。
黒い制服を身にまとい、腕を組んでいる。
目は鋭く、静かに俺を観察していた。
「お前が霧崎凛か。座れ。」
低く響く声。俺は少し戸惑いながら、椅子へ腰を下ろした。
「お前は本日から都市警備隊員としてこの都市の秩序維持に関わることになる。まずは業務の概要を理解してもらう。」
ホログラムに都市の地図が映し出される。
「都市警備隊の役割は、都市を巡回し、異常がないかを確認することだ。異常を検知した場合、迅速に対応し、必要であれば対象の確保・連行を行う。」
俺は静かにその言葉を聞いていた。
「異常とは?」
男性は端末を軽く操作すると、ホログラムが切り替わった。
「都市の秩序を乱す行為すべてだ。例えば、登録された行動パターンから逸脱する動き、規則外の集会、不審な通信……それらを検知し、処理するのが都市警備隊の仕事だ。」
男は続ける。
「本日から、お前は都市警備端末を携帯し、定期巡回を行う。異常を検知した場合は即座に報告し、指示を仰げ。尚、この仕事に“休息”はない。それだけは覚えておけ」
彼は端末を手に取り、俺の前に静かに置いた。
「都市警備隊は単なる監視者ではない。この都市の秩序を維持する存在だ。その意味を忘れるな。」
(悠人から聞いてた話と違う...激務じゃないか...。)
俺はその端末を見つめながら、静かに息を吐いた——。




