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忘却の都市  作者: HANA
崩れゆく中枢
100/152

『忘却の都市』 陽動の瞬間

ついに、エピソード100になりました。

それぞれのエピソードが「500~1500文字」程度ですので、もし興味がございましたら他のエピソードもサラッと読んで頂けると幸いです(^^♪

「……じゃあ、いくぞ。」

悠人は小さく息を吐き、静かに扉に手をかけた。

恐る恐る扉を押し開ける。


扉の先は——誰もいない。

「……ふぅ。」

悠人は、わずかに肩の力を抜いた。


だが——次の瞬間。

「……どなたですか?」

少し先の廊下に、先ほどの少女がまだ残っていた。

悠人はとっさに表情を取り繕う。

「えーっと……ちょっと興味本位で中に入ったら、なんか変なとこに迷い込んじゃって……!」

明らかに怪しい言動——だが、その背後で霧崎たちへ"早く行け"の合図を送っている。


霧崎と夏希は即座に意識を切り替えた。

悠人の無事を祈りつつ、デバイスを起動する。

次の瞬間、2人は無音のまま扉をすり抜け、左手奥のエレベーターへと向かう。

霧崎が言った通り——エレベーターはそこにあった。

すぐに起動させ、乗り込む。


静寂——

今のところ、気づかれた気配はない。

だが——エレベーターの扉が閉まりかけた、そのわずかな隙間で、霧崎は息を詰めた。

研究員らしき数名に囲まれ、悠人が必死に話している姿が見える。

言葉は聞こえない。

だが、その表情だけで、緊張が手に取るように伝わってきた。


悠人のためにも——すぐに目的を果たさなくてはならない。

エレベーターの静かな下降とは裏腹に、霧崎の鼓動は確実に速まっていく。


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