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【12月1日 2巻発売】婚約破棄した傷物令嬢は治癒術師に弟子入りします!  作者: 三角 あきせ
一部

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令嬢は決心する

 あまりのことに呆然としながらも、私は帰途に就いた。もちろん帰りもセオが送ってくれた。正直言って彼がモテる理由がよくわかる。なんというか、とてもスマートにこちらを尊重してくれるのだ。今日だって押しかけた私を休みの日にも関わらず、対応してくれて家まで送ってくれる。顔、金、力、地位、高身長と、ジェイドに負けず劣らず好物件で、しかも優しい。これでもてないはずがない。

 しかし、サラがジェイドルートにいる今、彼とサラのストーリーは進まないと思う。ゲームでは逆ハールートはあったが、現実ではそんなことができるはずはないからである。


 今日のセオの話を聞いたところ、神殿と王家は現在は友好な関係を保っているが、根っこのところでは確執が残っているようである。

 そんな状況で神殿の所属者が王族の婚約者に手を出そうものなら何が起こるか火を見るより明らかである。そして、プレイボーイと囁かれているセオだが、きちんと線引きして問題が起こらない程度に遊んでいるように見える。

 それならば、サラとセオがどうにかなる可能性はとても低いと思うのだ。


 もちろんグラムハルトに関しても王家を敵に回すつもりはないだろう。今回はサラをエスコートしていたが、あくまでジェイドからの依頼だと思われる。なぜなら、サラをエスコートしていたにも関わらず、彼とサラは1曲しか踊らなかったそうだからだ。例え今どれだけの勢いがあろうとも、彼は結局は王家の臣下なのだから、サラに手を出すはずがない。


 ルアードに関しては12歳の頃に縁を切ったままなので、あとは知らない。まぁ浅はかな人だったので、サラにちょっかいをかける可能性も否定はできない。しかし、あの単細胞生物に暗黒腹黒王子のジェイドがおくれを取るはずはない。


 やはりジェイドルートに入った後は他の攻略対象者がサラにちょっかいをかけることはまずないだろう。


 つまり、サラとジェイドの仲を合法的に引き裂けるのは現在私だけである、と言うことだ。ジェイドのことは、好きだと思う。正直言って彼に抱きしめられるのも、キスをされるのも、嫌じゃないーーいや、嬉しいと思っている。

 けれど、ジェイドは私ではなく、サラを愛している。もし、彼と結婚しても彼の身体と王妃の地位は手にできるだろうが、きっと彼の心は一生私の手には入らないだろう。


 そして悪役令嬢として断罪されることも、おそらくない。なぜなら私は王家が喉から手が出るほど欲しがっている光属性持ちなのだから。ジェイドにそれを告げたら、彼は間違いなく為政者として私をそばに置くために婚約解消をすることはなくなるだろう。


 そして、ジェイドが私と結婚した場合、うまくいけばサラはセオドアルートに入る可能性がある。セオも私も喜ぶなら、それでも良いかもしれない…と思った瞬間ぞっとした。


 私の恋心を正当化させるためにセオを引き合いに出すのはとても卑怯なことだ。彼や他の人間の感情は関係なく、私がどうしたいかを考えるべきなのだ。

 私が持っているのはとてつもなく強い切り札だ。これを使うか使わないか、それは誰かのせいではなく、自分のためで、決めないといけない。

 ジェイドと婚約を続けたいなら、そんなに時間は残されていない。この手札は早めに開示しないといけない。そうでないとサラが今後の嫁入り先に困ることになるだろう。

 もちろん婚約解消を望む場合は静観していれば良いだけなのだが。


 ジェイドのことは、おそらく高校生くらいの甘酸っぱい感覚で、想っていると思う。

 けれど、これは突き進んで良い道なのだろうか?私の前世の死因になったあの女の行動も愛ゆえ、というなら私のジェイドに対する思いはとても愛ではない。おままごとのようなささやかなものだ。


 あの女の行動が、誰かを愛したため、仕方がないというなら私はそんなものはいらない。自分を律せなくなる様な感情は私には不要なものだ。例え、どれだけ心が痛んでも、それは淡い初恋の残滓だ。

 どこぞのヒロインの様に『彼のためを想って』ではなく、私が私の判断で彼から身を引くのだ。だから、きっと後悔なんてない。

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