傷物令嬢は思い悩む
もちろん熱を出した際にお見舞いの品は届けられたし、ジェイド自身が「やりすぎたかな?ごめんね」などど言いながらお見舞いにわざわざ邸まできてくれた。
「いいえ、不慣れな私が悪いのです。私ではジェイ様のお相手としては力不足かもしれません。あの、もし物足りないということでしたら婚…」
婚約を解消と言いかけた時にジェイドがいい笑顔でにっこり笑った。やばい、これは地雷のようだ。
「今回を機に練習をたくさんしてくれるの?」
「あ。いや、その。キスについては善処します。でも、あのジェイ様お願いがひとつだけ」
「君のお願いって珍しいね。何かな?」
「私の身体には醜い傷跡が額の他に、右手の甲と太腿にございます。殿下と成婚時には治してくださると伺いましたが、お願いです。傷が治るまで私の身体の醜い傷跡を見ないで欲しいのです」
キスが上手いことや、態度からジェイドが女慣れをしていることはよくわかる。そりゃあパーフェクト王子様だから周りが放っておかないだろうけど、いずれ婚約解消になる身である。遊ばれてポイになるなんてごめんだ。それになんとなく彼に傷痕を見られるのは嫌だった。
ジェイドは一瞬驚いた顔をしたが、わかったよ、と頷いてくれた。
なんというか、最近はもしかして私、愛されているんじゃないか?と思うことがないでもないのだが、彼にはサラというヒロインがいる。
何よりこの婚約のきっかけとなったのは彼が私を池に突き落とし、額に傷を作ったからであるーー実際、前髪を下ろすと隠れるものの額の左上に傷跡が残ってしまっていた。何故かジェイドはその傷跡を見ることをとても好むので、やはりどこかおかしいのかもしれないーー。そして池に落ちた私を助けようともせず、げっすい笑みを浮かべながら見ていたことから、やはりそれはないかな、とも思うのだ。
彼は何を狙って何のために私を婚約者にしたのだろうか。考えても何も思いつかない。何しろ今の私はしがない子爵令嬢でしかないのだ。
いくら考えても全く思いつかないので、今のところ考えるのをやめることにする。
どの様な思惑があったとしても、子爵家に迷惑がかからず、私も断罪されず元の生活に戻れれば良いのである。
こんな恐ろしいサイコパス王子をヒロインに押し付けてもいいものか迷ったが、結論、大丈夫だろうと思うことにした。だってヒロインだもの。サラならきっとーー彼を更生させることはできなくてもーー彼の異常性ごと愛せるだろう。だってヒロインだから(大事なことなので2回言いました)。私は私の身が可愛い。
話の都合で途中で切ったら文字数が少なくなってしまいました。すみません




