11話 不敗の男
昨日2000PVで喜んでいたのに、もうすぐ3000PVにいきそうです。
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今までのあらすじ
ついに家庭内ヒエラルキー最底辺を脱出しました
さて、盗賊団の首領二人は今や我が家の居候だ。
では部下たちはどうなったか?
答えは簡単だ。俺の部下になった。
意味がわからないが、事実なのである。
最初の話では違っていたのだ。
ミサゴとジェンガは盗賊団、実際は偽王討伐のためにと野に下っていた先王の忠臣たちの集まり、と話し合い、各地に散って力をためることになった。
都の名門貴族はもちろん地方のエリートなども大勢いるため、コネがたくさんある。
それらをフル活用して来るべき日に備えるというわけだ。
当然ミサゴにハイロ、そしてジェンガがいるこの村がそのネットワークの中心となる。
ここまではいい。
しかしここから話がおかしくなってくる。
まずジェンガが俺を自らの上司のように指示を仰いでくるのだ。
「先生、報告に参りました」
「いや、俺関係ないから」
「わかっておりますとも!
先生は我々の活動に何の関係もございません
ましてや指導者などであるはずもない!
我々は指導者不明の謎の集団です
毎回確認されるこの念の入れよう、流石としか言えませんな
このジェンガ、身が引き締まる思いです」
「いや、そうじゃなくてね」
「ああ、そうでした!
これは報告などではございません
私が独り言を話し、たまたま先生がお聞きになるだけです
ではしばしの間、お耳汚し失礼いたします」
話は噛み合ってるようだが、実態は完全なすれ違いである。
毎回そのまま報告どころか今後の方針まで聞かされる。
そして俺が何か意見を言うまでジェンガは立ち去らないのだ。
「…まあ、いい感じじゃない?その調子で頑張って」
「では失礼いたします!」
最後は返事をしない。返事をしたら俺が関係したことになるという配慮なのだろう。
もっと別な配慮をして欲しい。
さあ、これでジェンガとの話はこれで終わりだ。
俺は何もしてないのに俺が指示したことになってる命令が各地にまかれ、メンバーは動き出す。
俺の命令とやらはどれも効果的で、すごくうまくいっているらしい。
そして俺の名声は高まり、また意見を求められ、俺が承認したとされる案はうまくいき、俺はさらに偉大な指導者として扱われる。
なんという意味不明なスパイラル。
確かに手助けしたいとは思ったが、実際にするのは話が違う。
そして、最近は手紙をよく書くようになった。
俺の部下とされてるメンバーの激励のためだ。
直接仕事内容に触れることはできないため、本人のことや周辺環境のこと、日常のこと、そんなことを話題にしなければならない。
一回だけと書いてみたところ、手紙をもらったメンバーはすごく喜んでくれたらしい。
それを聞くとめんどくさいと断るのも悪い気がして、二回三回と書いてたらいつの間にか俺の仕事になっていた。
当然適当なことは書けず、まじめにジェンガの話を聞いて各メンバー一人一人のことを覚えて、それぞれに合った内容の手紙を書いている。
「えーっと、この人は三人目の子供が生まれたのか。でもこんな危険な任務に…。
"お子さんの誕生、おめでとうございます。
あなたには大事な使命があるのかもしれませんが、家族を悲しませないよう自分を大事にしてください"
っと」
「げ。この人は家族を王に処刑されたのか…。
安全な地域にいることが耐えられないって文句言うとは、かなり追い込まれてるな…。
"私の想像もつかないほどつらく悲しいことを経験されたのでしょう。
でももしあなたが愛する人より先に逝ってしまったら、愛する人に早く死んで欲しいと願うでしょうか?
どうか今一番大事なことをよく考えてください"
っと」
俺の手紙は口語だし筆記体でもないからすごく読みやすいらしい。
想いが伝わって来ると評判だ。
難しい言葉が使えず、筆記体も書けないだけなのに。
「どうしてこうなった…」
以前は無能力で悩んでいたが、今は無能力なのに祭り上げられることで悩む羽目になった。
前の悩みは解決してないのに、さらに悩みが追加されたわけだ。
ひどすぎる。
「なにウジウジしてんの、あんた」
家の裏で隠れてたのに、カルサに見つかった。
「村の尊敬される先生から、いまや王様に対抗する一大組織の長にまで上り詰めた男が、いったい何頭抱え込んでんのよ
虫扱いされてたとは思えないほどの出世っぷりじゃない
もっと嬉しそうにしなさいよ」
虫扱いしてたのはあなただけです。
それに…
「…別に俺はなんもしてねえよ」
「色々したから今の立場になったんじゃない
百戦百勝の知将、なんて呼ばれてるわよ」
「三戦一勝二敗の無能の間違いだよ」
「三戦って、何よ?」
「一戦目は、あー、アルカに初めて助けられた時、ジァイアントピーンに襲われたときだな
アルカがいなければ死んでた。
まず一敗目」
この世界に転移してすぐ、とは言いそうになった。
一応秘密だからな。危ない危ない。
「二戦目と三戦目は魔物退治
まあ、策通りに勝ったんだから一応一勝だ
しかしそのあと、生き残りに殺されかけて二敗目
あのときもアルカがいなければ死んでたよ
な?負けてばっかだろ?」
アルカに命を助けられてばかり。
普段の生活でもカルサを始めとして村のみんなに助けてもらってばかり。
しょせん俺はその程度の人間なのだ。
そんなことを考えていると、カルサが心底呆れた口調で言ってきた。
「負けたって、あんたにとっての勝利条件って何よ?」
「勝利条件?」
SLGか?敵の城を制圧とか?
「そう、勝利条件。
まずひとつ目。あんたがジャイアントピーンに襲われてた時、あのときの勝利条件は?」
敵の城は関係ないな。
じゃあボスを倒すとか?
「えっと、勝利条件って、ジャイアントピーンを倒すことだろ?」
「あんなのに勝てるのはお姉ちゃんぐらいよ
じゃあ逆に考えましょ。敗北条件は?」
「死ぬこと」
これはすぐわかる。
「じゃあその反対は何よ?」
「死なないこと」
これもすぐわかる。
「そう。敗北しなければ勝ってんのよ
いい?引き分けなんてあまっちょろい回答はなしだからね
ここは生きるか死ぬかの世界なの
だから、勝利条件は死なないこと!
あんたはそれを達成した
つまり、あんたはあのとき勝ってたの」
「…アルカに助けられただけだぞ?」
「言ったでしょ。死ななきゃ勝ちなの
第一、偶然の勝ちだろうと、勝ちは勝ちなのよ
あんたじゃんけんは全部戦略で勝負するものとでも思ってんの?」
「…思わない」
「そゆこと。だからあんたはあんとき勝ったの。
じゃあ次にいきましょ。魔物退治で、生き残りに襲われたとき
まずあのときの敗北条件は何か?
まあ、これは簡単ね。二人とも死ぬことでしょ
「いや、違うな」
「へ?」
「敗北条件はお前が死ぬことだよ
俺が死んでもお前が生きてれば、たぶん俺に悔いはなかった
でもお前が死んでたら、俺は生き残っても自分を許さなかっただろうさ」
もちろん死ぬのは怖い。
でも、身近な人が死んで、その家族が泣く姿を見るのはもっとつらい。
そんな姿を見るくらいなら、自分も死んでた方がマシかもしれない。
だって、その悲しい姿を見なくてすむのだから。
「だから、あのときの勝利条件はお前が生き残ること
これも達成してるってお前は言いたいわけだな」
返事がない。
カルサの方に顔を向けると、百面相をしていた。
すげえ表情がコロコロ変わってておもしろい。
「とにかく!あんたは勝ったわけ!
三戦一勝二敗じゃなくて、三戦全勝!
そりゃ百戦百勝の智将ってわけじゃないけど、勝率十割!不敗の男よ!」
顔を真赤にしながらカルサが言う。
「あんたは確かに周りが言うほどたいした人間じゃないかもしれない
でもね、あんた自身が思ってるほどだめなやつでもないの
少しは自信を持ちなさい!」
そう言って家へと帰っていった。
おそらく家の裏に行く俺を見かけ、わざわざ励ましに来てくれたのだろう。
「ありがとうな、カルサ」
もう聞こえないだろうが、俺はお礼を言った。
しかしそんな簡単に自信がつくほど人間は簡単なものではない。
その夜も俺はベッドで悶絶しながら寝たのである。
リクは抱え込んでしまうタイプなので、カルサの気遣いにとても助けられました。
環境の激変に戸惑いつつ、世のため人のため?がんばる主人公です。
次話もどうかよろしくお願いいたします。




