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朝の見送りは落ち着いていますか

ルーナを後ろから抱き締めたまま、二人でベッドに座って話していた。


「カイル様、アンバーさん達の話を聞きましたか?」

「ああ、聞いた。」


ルーナも、どうやらリーマスに愛妾になると勘違いされていたことを娘のアンバー達から聞いたらしい。


「カイル様、私をアルベルト様に出しませんよね?」

「当たり前だ。何故俺がルーナを殿下に献上せねばならんのだ。勘違いも甚だしい!」


ルーナを拐い、傷つけ、その理由まで的外れの勘違いで、リーマスは一体何を考えていたのだ。


「ルーナ、まさか不安になっているのか?」

「…襲われたのが本当に怖くてもしかしたらもう会えないかもとか思っていたんです。でもまさか私が襲われた理由があんな事実ではないことだなんて…わけがわからなくなりました。」


ルーナは俺の胸にもたれるようにしてきた。


「カイル様、すぐに助けて下さってありがとうございます。あんなに早くきてくださるなんて…」

「いきさつはどうあれ、ルーナを危険な目に合わせてしまった。許せ。」

「カイル様のせいではありません。…でも今は側にいて下さい。お仕事で忙しいのはわかっていますが…今だけは…」


可愛いルーナを抱き締めたまま二人で眠りについた。




翌朝、朝食は食堂でとることにした。

ルーナは護衛の為の騎士達に、可愛いく、おはようございます、と挨拶をしていた。


「ルーナ、午後からになるが護送の為、王都へ行かねばならん。護衛は置いて行くから心配はするな。」


ルーナはやはり、不安そうな顔をした。

昨日襲われたばかりなのに一人にするのはやはり心配になる。


「…護衛をつけるから一緒に王都に行くか?」

「お仕事の邪魔はできません。それにもし、アルベルト様に会ったらまた誤解されるかもしれません。」


確かに、城に行けば会うかもしれん。

王都に行けば、ミランダ王女と会うだろうし。


「仕事がすめばすぐに帰って来る。邸で待っててくれ。また、土産も買って帰る。欲しいものを言いなさい。」


ルーナは一瞬悩んだようだか、やはり欲しいものはないと言う。


「ルーナ、我が儘を言っていいんだぞ。何か物もねだってもいいんだが…」

「でも、何が欲しいかわからないのです。」

「では沢山買って帰ろう。それに、欲しいものがあれば買いに行かず、邸に呼びなさい。」


しばらくは、服や宝石以外も邸に呼ぶようにオーレンに手配させておこう。

ルーナは雑貨なども好きなようだから、雑貨屋も手配させよう。


そう思い、仕事に行く前に、全てオーレンに伝えた。


「では、行って来るぞ。何かあればすぐに呼びなさい。」

「はい…。あの、あのですね、」


ルーナに、いつもしているように頬に口付けをしていると、頬を赤くし、言いにくそうに、俺の服を掴んでいた。


「どうした?」


少しかがみ、ルーナの顔に近付くと、ルーナが耳元で、小さな声で言った。


「す、少しだけでいいので…その…ギュッとして下さい…」


やはり、こんな時にルーナをおいて行くのは間違いではないのか、と思ってしまう。

だが、ルーナは不安からこんなことを言い出したのかもしれんが、耳元でこんな可愛いことを言ってくれるなんて…。


「きゃあ!」


思わず、力任せに勢いよく抱き締めてしまった。


「カ、カイル様、お、落ち着いて下さい!」

「俺は落ち着いている!」

「す、少しでいいんです!」


ルーナを一人にさせるわけにはいかん!

必ずすぐに帰ってくるぞ!


「ルーナ!」

「は、はい!」

「寂しい思いはさせん!急いで帰ってくるから待ってなさい!」

「わ、わかりました。お気をつけ下さい。」


そう言いながら、ルーナも頬に口付けをしてくれた。


そして、俺は部下の騎士達やオーレンを見た。


「ルーナから決して目を離すな。俺が帰るまで邸から出すんじゃないぞ。欲しいものがあれば、邸に呼べ。何があってもルーナを守るんだ。」


「「「はっ!!」」」


名残惜しいが、行かねばならん。

ルーナが寂しくないように、行く前に何か贈ってやりたい。


そう思いながら、ルーナを離し騎士団へ行った。


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