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番外編(ヒューバートの記録)

殿下の許可書もあり、城の殿下の宮には難なく入れた。

殿下がまだ、カイル団長の邸から帰ってない為、殿下の宮の医務室になっている部屋は誰もいない。


殿下のカルテと処方箋を調べると、病気の診断は間違いない。

問題は、処方箋だ。

薬量が違う。

証拠を集め、このまま陛下の元に持って行くことにすると、誰かがやって来た。


顔色を変え、飛び込んで来たのは、オルセンと白衣のオッサンだった。

そして、後ろからは殿下の宮の警備隊がわらわらと来た。

恐らく、この白衣のオッサンが、リーマス公爵が加えた医師なのだろう。


「ヒュー、ここをどこだと思っている!」


オルセンが昔の名前で俺に言った。

やはり、オルセンも俺に気付き殿下より早く帰ってきたのだろう。


「オルセン、俺はもうヒューじゃない。カイル団長が名付けてくれたヒューバートだ。」

「…お前は運がいい。あの施設から綺麗に抜け出せたのだから。」

「オルセンは運がないな。しかも見る目もない。リーマス公爵はこれで失脚するぞ。」

「それはない。殿下の医務室に侵入した不届き者を俺が捕らえる!」


そう言えば、俺を捕らえる名目が立つ。

そして、オルセンと一線を交える。

確かにオルセンはいい腕だ。

でも、死ぬ為に俺はここに来たんじゃない。

俺の双剣とオルセンの剣が交える音が響く。

その時、大声で俺達を止める声がした。


「止めろ!二人とも剣を引け!!」


グレイさんだった。


そして、一瞬オルセンは俺から目を逸らしてしまった。

その隙を見逃すことはなく、オルセンを抑え、床に叩きつけた。

叩きつけたオルセンの顔の横に双剣の内一本をドガッと突き立てた。


「グレイさん証拠です。処方箋と薬を調べて下さい。薬は殿下から預かったものがあります。」


そして、オルセンも白衣のオッサンも捕縛され連れて行かれた。


グレイさんは、帰るなりミランダ王女に陛下を呼びに行かせ、すぐに陛下の知るところとなった。


リーマス公爵も陛下の前に引き出され、全てが明らかになった。


リーマス公爵は、アルベルト殿下の暗殺は企んではないものの、病気の改善をしないように薬理学の医師を送り込んだ。

リーマス公爵は筆頭公爵一人でもあり、娘を嫁がせ筆頭公爵の中でも上に立とうとしたらしい。

そして、アルベルト殿下の病気を理由に実権を握ろうと企んでいた。

だが、アルベルト殿下はリーマス公爵の娘を断っていた。

誰とも、結婚をしないと決めていたらしい。

従者にオルセンをつけたのは、貴族をつけると自分の企みもバレるし、俺のように調べるものを秘密裏に始末する為だろう。


だが、俺を始末することは出来なかった。


陛下は、今回のことをおおやけにはしないと決めた。

王宮内で起きたことを出せば、国が不審を持つと考えたからだ。

リーマス公爵は、理由をつけて公爵の地位を剥奪され、そして失脚した。


おおやけにはしないことでも、陛下に報告書を出すことになり、今回のことを簡単に書いた。




「ヒューバート、今回のことは助かった。アルベルト殿下も少し病状が改善されそうだ。」

「グレイさんも結婚が近いでしょ。揉め事はさっさと片付けた方がいいですよ。」

「ヒューバートのおかげだ。オルセンのことを知らなければ、リーマス公爵のことはわからなかった。昔からの筆頭公爵の一人だったからな。」

「それは良かった。後で報酬を下さいね。」

「報酬は陛下からも出るが、俺からも酒を飲ましてやる。」

「なら、もう少し王都にいますよ。カイル団長はきっとルーナさんとイチャイチャしてますから。」

「ヒューバートもルーナ様を気に入っているのか?」

「団長にはルーナさんがピッタリですよ。」

「カイルがあのように溺愛するのは初めてだからな。」


これで仕事は終わり、騎士団に戻れる。

正直、カイル団長の騎士団は居心地がいいから気に入っている。


とりあえず、今夜はグレイさんに良い酒でも飲まして貰おうと決めた。



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